第6話 道の駅(仮)を造ってみよう
主人公のフォンをフォン・ワント・ツーに変更します。
ドイツ貴族場合、日本語表記で書くなら、
名前+フォン+家名+ツー+領地の地名+爵位
地名と家名が一緒の場合、フォン・ワント・ツーとするのが、正式のようです。
久しぶりにナイトハルトの顔を見に、王城を訪ねたのが間違いだった。
顔見知りの官吏に会ったので、挨拶したら問答無用で応接間に連行された。
「いい加減に、家紋と家名を決めてください」
「まだ、決めてなかったの!?」
リーフリットが「嘘でしょう、あり得ない」って、顔で俺を見ていた。
「普通、男爵、貰った時点で決めるよね」と、リーフ。
「あの時は、すぐ依頼が来て、それどころじゃ、なかっただろう。
じゃあ、リーフは決めたのかよ」
「決めてないわよ。
氏族名はあるけど、家名とは違う気がするし。
それに依頼が済めば、すぐ結婚するの判ってたし、すぐ使えなくなる家名って、いる?」
「少し相談しても良いですか?」と尋ねる。
「わかりました。後ほど伺います。逃げないでくださいね」
そう云って官吏は退出した。
ここから、色々家名上げるだびにリーフのツッコミが入る。
ローエングラム→銀河でも征服するつもり?
キルヒアイス→自分で死亡フラグ立てて、どうするの?
オーベルシュタイン→陰謀家みたいで嫌
ミッターマイヤー→一応候補
ロイエンタール→音は悪くないけど、女好きの香りがする。
「・・・・」
シェーンコップ→女の敵ぽい、もっと嫌、却下。
ヤン→何処の提督?
こんな調子で一向に決まらない。
「じゃあ、諸葛」
「OH!大軍師、諸葛亮孔明」
「ハイそれ、明らかな間違い。」
「???」
「諸葛亮、諸葛孔明ならまだしも。
姓名と字を一緒にするのは、明らかな間違いです。
当時は、呪術師の呪いを恐れて、名前を隠して。
リーフ好みで言えば、呪いを受けない様に、真名を隠して、字で呼び合っていたんだ。
三国志好きはよく勘違いしているけど、そもそも字はミドルネームではない。
でなければ、歴史書なんかで姓を○○、名を××、字を▲▲という様に、わざわざ分けて書く必要ないだろう?」
そういう事情は日本も一緒。
奈良時代は、通称で呼び合うのが普通だった。
武家社会では、名前を呼ぶ行為は『相手を呪う行為』とされた。
うっかり頼朝様とか信長様とか呼べば、その場で斬り殺されても文句が言えない時代だった。
「真名・・この響き、何故かテンションが上がる」
何か、リーフリットの琴線に触れたらしい。
「それは良うございましたな。じゃあ、続けるよ。
字は通称であって、ミドルネームでは無いから」
「うん、それで」
「字は自分で名乗ったり、他人がつけて定着したモノと、状況によって様々だ。
そういう出自のものだから、よく他人と被る。
だから表記する時は、苗字+字となる。
字は、今で云う、ハンドルネーム、オンラインゲームのキャラクターネーム、ペンネーム、ラジオネーム、二つ名、芸名も、これに当たるかな。
本名とハンドルネームを一緒にして呼ばれて、俺は知ってるぜみたいなドヤ顔されたら、どうよ」
「・・・・・」
「正しい正しくないと云う以前に、ただの失礼でしょう。
三国志ファンに、これを指摘するとまず反発される、残念なことにね。
昔、赤壁の戦いを題材した、映画の番宣のナレーションで『諸葛亮孔明』って言ってたから、全国ネットのTV局でも『このレベルかぁ』と思ったよ。
因みに名前を呼んで良いのは、両親だけね」
蛇足かなと思うけど、一応
「それと官職があったら、そちらが優先ね。
将軍とか爵位持ちの貴族とか。
日本でも高橋部長とか植村社長とか役職で呼ぶのが普通でしょう。
それと同じ感覚で良いから」
「うん、分かった。それで結局家名はどうするの?」
「家名って地名でも良いのかな?」
「聞いてこようか?」
「そうだなぁ~頼もうかな」
これで家名が決定した。
家紋は、3つの房が少しずつ重なって、立体的に見えるように
デザインされた『3房の藤の花』
後に『アルメニア藤』と云われる家紋だ。
家名を聞いたナイトハルトは
「喧嘩売ってるねぇ~♪」と、楽しそうに笑った。
リーフリットは、心配そうだ。
「カシム君、追い出す気満々の家名にして大丈夫?後ろにいるのは、ドズルだよ」
「それこそ今更だろう」
この日、勇者アキュフェースの家名と家紋が公表された。
家名と領地の地名が同じ場合、フォン・ワント・ツーが正式な呼称。
「アキュフェース・フォン・ワント・ツー・アルメニア伯爵」
大貴族の横やりでアルメニア領の2/3を奪われた、男の家名が決まった。
今が社交シーズンということもあって、多くの貴族が王都に集まっている。
それを利用して、1つの提案を国王に草上した。
東海道を領地とする諸侯、全てに王城の会議室に集まってもらった。
司会・進行は、発案者である俺だ。
「本日は、お忙しい中、この様に集まって頂きましてありがとうございます。
この会議が、街道の明日を担う意味でも、有意義なものになると自負しております」
東海道活性化計画
まず問題点から
1:町と町の距離が離れすぎている。
そのため野盗や魔物の襲撃に遭いやすい。
事故、自然災害、急な病気、トラブルに対応が難しい。
町との距離が離れ過ぎている為、助けを呼ぶ事が出来ない。
2:関所を通るたび、経費、関税が発生するので、王都に着く頃には
商品の価格は3倍以上に膨れ上がる。
改善案として
1:一定区間に、衛兵の常駐する拠点を造る。
この拠点を、便宜上「道の駅」と呼称する。
拠点の内容は、衛兵の詰め所、数台の荷馬車がキャンプ出来るスペース、
簡易宿泊所、酒場も兼ねた食堂、出来れば大衆浴場。
柵で囲い魔物の侵入を防ぐ。
2:理想は関税の撤廃、現実的には関税の引き下げを検討する。
「これが、私からの提案になります」
発想の元は、サービスエリアとオートキャンプ場を合わせたものだ。
この世界、町と町との距離が異常に離れている。
馬車で一日がかりというのは、ザラだ。
その為、野盗や魔物の危険が常に付きまとう。
これでは、気軽に旅行というのは、夢のまた夢だ。
「面白い案だと思うが、道の駅だったか、間隔はどうするのだ」
この国第2の都市、
港湾都市グランハウゼンの領主カイエンベルグ王弟殿下だ。
公爵の地位にある。
姿かたちは違うのに、なんとなく、
呪われた島の物語に出てきた、砂漠の王を連想させる御仁だ。
「実は、それが悩み処なのです。
徒歩に合わせるなら、12キロ間隔。
荷馬車に合わせると、約19キロ間隔でしょうか」
「その数字の根拠は、何かね?」と、カイエンベルグ公。
「徒歩で3時間、ゆっくり走った荷馬車3時間の距離になります」
人が徒歩で歩く距離は、1時間、1里(3.9キロ、江戸時代の人基準)
荷馬車は、時速6.4キロから11.2キロ
間隔の根拠は、東海道53次の宿場町同士の間隔が、1里半という処もあるが、大体3~4里の間で収まっているから。
「ならば馬車6時間では、どうかね?」
「人件費も含めた経費節約には、もっとも合理的であると思います。
しかし、これには少し問題があります」
「ほう、それは?」
「カイエンベルグ公のおっしゃる通りにすると、道の駅の間隔は38キロ前後になります。
拠点の数が抑えられて、掛かる費用は少なくて済みます。
例えば、中間点で野盗に襲われた場合、どちらに逃げるにしても19キロの距離があります。
衛兵が駆けつけるにしても、とても間に合うとは思えません。
これが、12キロなら、中間点で襲われても、6キロ。
助かる確率が、かなり上がります。
まあ、衛兵が定期的に巡回するのが、大前提ですが」
「そうなると、痛し痒しだな」とカイエンベルグ公。
「私個人としては、12キロ間隔が妥当だと考えます。
それと細かく区切ったのには、理由があります。
旅人に、安心・安全を売りたいからです。
それにどうしても、この中で、流行るもの、廃れるものが出てきます。
流行る場所だけを、大規模に再開発して『宿場町』にすればいいのです。
そうすれば、税収のアップにも繋がります」
「ならば、最初から宿場町にすればいいではないか」
この時、今まで黙っていたカシムが、初めて口を開いた。
「宿場町に限らず町の建設には莫大な費用が掛かります。
成功すれば良し、失敗すれば目も当てられません。
最初は、小さな投資で様子を見た方が無難ですよ」
カシムは、俺に言われたことが気に入らなかったようだ。
結局、この案は各自持ち帰り、1週間後また集まることで合意した。
「さっきの案をどう思った?」
会議が終わり王都の屋敷に帰る馬車の中で、カイエンベルグ公は突然口を開いた。
「大変、興味深く、面白い内容だと」
側近のルッツは即答する。
「イケルと思うか?」
「恐らく。それに街道中の諸侯を巻き込んだことも、評価に値します。
今まで旅人の安全と利便性を、ここまで配慮した施策はありませんでした。
安全面を担保しただけでも効果は大きいかと。
他の諸侯も乗り遅れれば、自領の衰退が待っています。
反対はしないだろうと思います。
問題があるとしたら、距離の問題でしょうか。
小領の領主にとって、自領に拠点を置けるかどうかは、死活問題です」
カイエンベルグ公は顎を撫でながら
「そうなると、残りは警備の問題と我が領の問題だけか」
「私個人は杞憂だろうと思いますが
アルメニアが封鎖された為、東西の流通は、我がグランハウゼンの海運が、一手に担ってきました。
今まで独占してきた王都~グランハウゼン間の海洋流通。
アルメニア封鎖前に、戻るだけですから。
減ると云っても2割程度でしょう。
減った分は、街道の収益で補うでしょうから。
影響は、それほど大きくない、と愚考致します」
ルッツの答えにカイエンベルグ公は、満足したように言った。
「では、この話、乗るとしようか」
最後まで読んで頂きありがとうございました。
やっとここまで来た、領地復興の第1歩です。
しかし、「道の駅」という名称を、そのまま使うのは問題がありそう。
何か良いネーミングがないか、思案中です。
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