第59話 いざ、海のうなぎロードへ
みずほ皇国のみずほ酒とみりんを求めて、取り合えず、ティファール朝ペルシアの王都ルクナバードを目指す予定だったのに。
マリアンヌ嬢から、内陸の王都にわざわざ出向かなくとも、王都の南部に位置する貿易港シャー・アズールを目指して貰えれば良い、という事に成った。
それから、注意事項として、ビザンティンとペルシアの中間地点にある大きな島国、プトレマイオス王国には、寄らなくて良い、と言われた。
エストニア王国の2倍の国土を持つ島国も、かつては精強を誇ったが、今では最貧国に落ちぶれて、王都も大きな田舎町に過ぎず、得るべき物が無いとのことだった。
俺たちは、愛機アイオーンと共に、みずほ皇国を目指して、冒険を開始した。
「これは、海のシルクロードならぬ、海のうなぎロードだね」
何言ってんの、この人? って顔で観られている。
「シルクロードと聞いて、歴史のロマンを感じないとは、嘆かわしい」
元々、歴史好きの俺は嘆く。
「女子に、その様な事を言っても、理解は得られんよ」
白竜王のハクが言う。
「まさか、ハクまでついて来るなんて、どういう風の吹き回し?」とアイシャ。
「我とて、いつまでも、ただ飯喰らいは、出来ぬからな。
ここらで、少し働いておこうと、思ったわけよ」
「でも、ハクの護衛はありがたいわ。よろしくね!」
リーフリットも歓迎ムードだ。
「それに、まだ見ぬ美食が、我を待っているからな」
思わず本音を言う、ハク。
「それが本音かぁ~。でもまあ、ハク以上の護衛はいないし、よろしく頼むよ」と俺。
「ところで、これからの予定は? どうなっているの?」
珍しくアイシャが質問してきた。
いつも、こういう事を気に掛けるのは、リーフリットだ。
「マリアンヌ嬢には、シャー・アズールに向かう様に言われているけど、
日程次第だけど、手前のレンケか、ハミールになる可能性が高いと思う」
「旅は始まったばかりでしょう。のんびり行きましょう」
アイシャは、元気だ。
俺たちが何をしているかと云えば、みずほ皇国までのルート造りだ。
俺とリーフリットは、1度でもいった処なら、転移魔法で移動できる。
一気にみずほ皇国まで航海しようとすると、1年、1年半掛かってしまう。
俺も領主の端くれ、そんな長い間、領地を留守にはできない。
そこで目的地を細かく決め、まとまった日数休暇を取り、この航海をしている。
目的地に着いたら、転移魔法で領地へ戻り、仕事をかたずけ、また、まとまった休暇を取って、前回のゴールから再スタートして、次の目的地を目指す。
これを何度も繰り返す。たぶん、3年は掛かるだろうが、これが、一番、現実的な方法だ。
天気に恵まれ、雲一つなく、順調な航海だ。
日程的に、シャー・アズールまでは、厳しいと思うが、レンケを抜け、ハミールまでは到達したいと思う。
「レンケの港町まで、あと3日か」
そんな事をつぶやいて、海をボーと見ていると、あまり見たくない物が目に入る。
大型のガレー船が、海賊らしき船に襲われている。
近くにいたリーフリットの腕をつかみ
「ねえリーフ、あれ、何に見える?」
「えっ、大変!! 船が海賊に襲われているわ」
「勿論助けるけど、そうじゃなくて、襲われてる船の方。
何に見える?」
「・・クレオパトラの船?」
「・・だよな」
あの規模の船、古代エジプトを思わせる様式。
乗っているのは、間違いなく王族か高位の貴族だ。
助けると決めたこの瞬間。
寄る予定になかったプトレマイオス王国行きが、決定した。
「アイシャ、帆をたたんで、ウォータージェットの起動準備。
リーフ、ハク、俺に続けぇ~」
俺たちは、飛翔魔法を使い、救援に向かった。
それを見送るアイシャは、ボクも賢者を選択すれば良かったなと、ひとり呟いた。
「拙者、エストニア王国のアルメニア侯アキュフェース。
義を以て、助太刀いたす」
「時代劇みたい」リーフリットのツッコミが入る。
「うるさいよ」そうリーフに返して、ストレージから短槍を手に取る。
斬るのに慣れた俺には、突く主体の武器は使いずらい。
狭い船内で、斬る武器は振り回せない、味方を斬る可能性があるからだ。
レイピアやショートソードより、短槍の方が、割り切れるし、諦めも付く。
正面の敵を突いて、突いた敵の手を取って、賊の方へ投げ入れる。
そこからは、突いて、蹴って、殴っての乱戦模様。
意外と、短槍と立ち技格闘技と相性が良いかもしれない。
とにかく使いやすい。
相手の剣を短槍で受けた時、空いた足で股間を蹴り上げ、
別パターンでは、相手の足を踏んずけて、逆の足でハイキック。
昔の戦闘スタイルを思い出し、興奮する。
両手持ちの聖剣を手にしてから、封印していた。
片手剣と格闘技の合わせ技が、本来のスタイル。
片手剣も良いけど、短槍も良いな。
敵と云うには、弱すぎる相手。戦闘は、文殊頼りのほぼオートマチック。
意識は、次の短槍の製作の構想に向かう。
今使っているのは、王都の武器屋で買った物だ。
思ったより使い勝手が良かったので、今度は、自分が納得できる物を、買うのではなく、造ろうと思い立った。
材質はミスリル製で、形は蜻蛉切の様な木の葉型にすれば、突くだけでなく、斬る事も出来る。
いっその事、方天戟の短槍版も良いかも。
それとも、槍の穂先に斧を彫りこんで、なんちゃってハルバード。
デザイン次第では、案外、オシャレかも。
そんなとりとめのない事を考えて、意識を戻すと、戦闘は終わっていた。
「お助け頂きまして、誠にありがとうございます。
プトレマイオス王国、第1王女、ネフェルティティと申します」
とびっきりの美女だ。王女様が美女とは限らないけど、綺麗な方が絵になるな。
そんなしょうもない事を考えていたが、そんな思考はここで終わる。
綺麗な方ですね、おしまい。
面倒ごとはゴメンだし、いくら美人でも、如何こうしたいとは思わない。
だから、綺麗な方ですね、おしまいなのだ。
そういえば、古代エジプトの王妃に、そんな名前があったことを思い出す。
「礼には及びません。
人として当然の事をしたまでです。
御無事で何より、先を急ぎますので、これにて失礼させていただきます」
俺は、丁寧に礼をして、立ち去ろうとする。
「何かお礼を‥」ティティ王女が引き留めに掛かる。
俺は振り返って、お気遣い無用です、と言って立ち去ろうとした。
ガレー船の階段を上ってくる、一人の女性と目合った。
キターーーーーー黒髪エルフだぁ~
見た目の年齢は20歳前後。
黒髪ロングストレートの正統派美少女でも、正統派美女でも、どちらでもシックリくる。
スラっとしたボディは、ペタでも無ければ、ボンキュッボンでもない。
丁度その中間、バランス型だ。そして何となく知的な感じだ。
車に例えるなら、R35G〇ーRか、N〇Xといった処か。
毎日乗っているライトウエイトスポーツ2台も、勿論愛しているが、
一度は乗りたい最高級スポーツカー。
共感してくれる人は多いと思う、たぶん。
長い時間では無いが、ぼーとしていたのかもしれない。
「どうしました?」黒髪のエルフが聞いてくる。
「ラファ、お客さんを捕まえて!
ここで帰したら、我が王家の名折れよ」王女様、命を下す。
「では、お客様、失礼します」
ラファさんは、俺を拘束する、俺はドキドキして、なすがままだ。
リーフリットとアイシャの視線が痛いぜ。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
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