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第56話 お城の立ち退き

 俺たちは、転移魔法で教団の総本山、聖都アクアポリスに転移した。

 大聖女の執務室では、俺たちが入ると、リーングランデが立ち上がって出迎えた。


「みなさま、お待ち申し上げておりましたわ。

 わたくしどもの為、遠路はるばるお越しいただき、ありがとうございます」


 深々と頭を下げる大聖女様。


「最初に、強引な手段を取ったのを、ここにお詫びしますわ。

 こうでもしないと、薄情な友が動いてくれませんので」


 俺の方を、チラッと見る。

 大聖女様、村長の手を取り、涙ながらに訴える。


「祈りの木は、もう、わたくしどもにとっても、無くてはならないものですの。

 あまりの神々しさに、下手に手を入れて、枯らしてしまうのが、怖いと。

 庭師でさえ、世話を嫌がります。

 アキュフェースが、ダークエルフの皆様を保護したと聞き、

 藁にも縋る想いでお招きしました。

 どうか、私どもの祈りの木に、お力添えを頂けないでしょうか」


 おいリーン、ネコを何枚被ったら、そうなる?

 しかし、祈りの木か。

 俺は御神木、領内の神官は神宿る木、エルフたちは聖樹様。

 誰も精霊樹と呼ばず、好き勝手に呼んでいるのが、可笑しい。


「話は分かった。

 わし等としても、聖樹様のお世話に異論はない。

 取り敢えず、聖樹様に会わせてくれるか」


 ムハービット村の村長は、顔を真っ赤くして、答えた。




 俺たちは精霊樹が植えられている、中庭に案内された。


「狭いな」


「これでは聖樹様がおかわいそうだ」


 ダークエルフたちは口々に言う。


 そうか?俺には、普通の広さに感じる、狭さも圧迫感も感じない。


「今はまだ良いが、健やかに育てたいのなら、この広さの4面分の広さがいる。

 今は若木で動かせないが、2~3年経って、成木になったら、移植も視野に入れて欲しい。

 竜穴があって、広い土地に心当たりは?」


 リーングランデは、その言葉を聞いて唸り始めた。

 聖都の竜穴は、ほとんど神殿が建てられ、埋まっているのだ。

 もう1つの選択肢は、歴史ある大聖堂の1部を取り壊して、土地を確保するかだ。


「その件は、わたくしの一存では、決められないわ。

 総代主教様や枢機卿たちと相談しないと。

 それから、みなさまの派遣の件は、どうなりました」


「3つの村が、週替わりで順番に担当する、で良いだろう」


「妥当かの、今日はもう、中途半端じゃ、来週からかの」


 俺は少し気になって、西の村長に聞いてみる。


「もしかして、西の御神木って、かなり狭い場所にある?」


「狭いも何も、城は邪魔じゃ。立ち退いてほしいの」


 俺は、前代未聞の城の立ち退き要求に、ショックを受けた。





 アルメニア州西の支城府リーフリンク。

 俺にとって、最初の領地、最初の領都。

 しかも、1/4スケールで平城京を再現した(あくまで洋風)、思い入れのある場所だ。


 西ムハービット村の村長から、精霊樹の成長の妨げになるから、隣のお城は立ち退いて欲しいと、要請があった。


 領民にとっても、もう精霊樹は信仰の対象だ。

 もし、住民投票をすれば、間違いなく『城の立ち退き』が可決される。


 問題は、城を何処に移設させるかだ。


 リーフリンクは最初の領都だけあって、アルメニア州で最も人口が多い。

 従って、城を移設させるスペースがない。


 困り果てた俺は、西の支城府の城代で代官のヨアヒム・フォン・ザルツィに相談を持ち掛ける。


「また難儀な話ですな。普通なら突っぱねれば良い話ですが、

 領官や使用人の中にも、御神木の信奉者は多い。

 城の移設の方が、丸く収まるでしょうね」


「問題は移設場所だ」


「この街で、城を置けるほどの土地は・・ありませんね」


 漢2人が顔突き合わせて、うんうん唸る。


「街が無理なら、街の北側を拡張してはどうですか?

 幸い、北側には、村がありませんから、拡張するのに支障はないはずです」


「それしかないかぁ~」


 俺は、街の拡張を決断する。そうなると、平城京の面影も消える。

 さらば、異世界の平城京。




 俺は資材を爆買いして、早速、北の拡張工事を始める。

 外京区はそのままにして、本体側だけだ。


 作業を始める時になって、気が付いた。

 無理に水堀や城壁を壊さずに、北側に湖の中にたたずむお城にすれば、良くない?

 湖に佇む白亜の城、湖の宝石、うん、いける。


 そうすれば、平城京の形も壊れない。


 思い立ったが吉日。

 すぐに湖造りを開始した、ヨアヒムには悪いが、今回も趣味全開で行かせてもらう。


 城を置く場所は掘らずに、周りを掘り進める。

 湖造りで掘った土砂は、城の移設予定地に集め、小山にする。

 魔法とスキルで、ガンガン掘って、土砂を小山に集める。

 小山はできるだけ高く、ただでさえ湖の真ん中では、地面は濡れて、水はけも悪い。

 大雨の増水まで考えると、できるだけ高くと考えてしまう。


 目指すのは、湖にたたずむ孤高の山城。

 夜、満月がバックにあったら、映えそうだ。


 山の頂上は平坦に均す、敷地の広さは中部の居城と大して変わらない。

全体に硬化魔法をかけて、フルボカー城(小)からリーフリンクまでの石の橋をかける。

 湖の西南側から水路を造り、河川に繋げる。

 排水は大事だ、水は淀んで腐ると異臭の原因になる。

 小さくても流れを造る事で、水の腐敗を防止する。

 排水をしっかり造ったのも、その為だ。


 まず、フルボカー城に居る、領官やメイドには、城から退去してもらう。

 城をストレージに収納して、移設予定地に行き、ストレージから出す。


 最初はやる予定になかったが、せっかくの絶景の城が見えないのは、勿体ない。

 最後の最後に居城のあった北側の城壁を、撤去した。

 本当は北側の全部の壁を撤去したかったが、流石に防衛、防犯面がある。

 居城跡の壁だけなら、お堀も有れば、湖もある。

 何とかなるでしょう。この時の俺は、そう思っていました。

 取り敢えず、これで、湖のお城が、良く見える。


 現在、河川から水を引き入れている最中なので、湖が満水まで暫くかかる。

 湖と云っても人口湖だし、美観的に支城府より大きくしていない。


 旧五稜郭(城跡)から、桜の木を、新しい支城に植え直せば、完成だ。


 湖の山城というより、『湖の小島に佇む白亜の城』の方が、しっくりくる。


 春には島中の桜が満開になる。


 今から、春が楽しみだ。





 結局、ヨアヒムから、防衛上の観点から人口湖の周りに城壁を巡らすように言われた。


 そんなことしたら、湖の景色が台無しだ。

 平城京の形も崩れる。

 しかし、防衛上、防犯上と言われれば、反対するのが難しい。


 せめてもの抵抗で、外京区の北側を、湖の城壁に会わせて拡張した。

 上空から俯瞰すれば、何とか平城京に見えるレベルに落とし込めた。


 それから、元々あった北側の街の城壁は撤去して、街の何処からでも、湖とお城が見えるようにした。


 しかし、湖に浮かぶお城の背景が、城壁なのは頂けない。

 木を植えれば、少しはマシになるかな、と思っていたら閃いた。


 城壁に沿って、桜かもみじを植えよう。

 湖を囲む様に、一斉に咲く桜、湖を囲む様に、秋を彩るもみじ。

 どちらも良い、正直、悩み処だ。


 結局、桜を選択した。

 滅多に雪も降らない温暖なこの州では、あまり実感が無いが、

 他の地域では、秋といえば冬支度で、とても忙しい。

 紅葉を愛でる心の余裕があるか?

 そもそも紅葉を愛でる文化があるのか、とても疑問だ。


 春になったら、二人を伴って、お花見に来ようと思う。

 湖でボートを浮かべるのも、良し。

 桜の木の下で、お弁当をたべるのも、良しだ。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

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この作品が、明日も頑張れる一助となりますように

あなたの人生に幸あれと、願いを込めて。

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