第55話 大魔神降臨
領都グランバニアの中央広場。
ダークエルフたちは、せっせと掃き掃除をしてる。
もうすぐ夕焼けという時間帯だ。
「いつも済まねえ、ダークエルフの旦那方」
中央広場で串焼き屋をやっている親仁が、礼を言う。
「気にするには、及ばん。
ここは聖樹様の神殿の様な場所。神殿を綺麗に保つのは、当たり前の事じゃ」
ムハービット村の村長は、礼には及ばんと、態度で示した。
ムハービット氏族は、東部、中部、西部と分れて住み。
東ムハービット村、ムハービット村、西ムハービット村となり、
それぞれ村長を選出して、里長もムハービット村の村長となった。
「旦那方、ほんの気持ちです、食べてください」
串焼き屋の親仁から、串焼きが手渡される。
「では、遠慮なくいただこう」
ダークエルフたちは、折畳み椅子を広げて、飲み会を始める。
これはダークエルフたちが来てから、毎日見られる光景だ。
「今日も聖樹様は、凛々しく美しい~。
こんな日が再び来ようとは・・・人生とは解らぬもんじゃ」
「「そうじゃ、そうじゃ」」
「しっかし。東と西の村長が、うちの方が美しいと抜かしていきおった。
寝言は寝て言え。嘆かわしい。あいつら、頭が膿んでおるよ。
どう考えても、うちの聖樹様が、1番、美しい」
「「異議なしじゃ」」
傍で観ていると、親バカのうちの子自慢だ。
「しかし、欲とは再現が無くて、いかん。
つい、この聖樹様を神樹様へと願ってしまう」
神樹様とは、世界樹のことだ。
エルフの里でも、数多くの精霊樹があるが、世界樹までいくのは、
その内の1本だけだ。
「儂らの代で、見れるかの~」長老の一人が寂しそうに言う。
「信じるしかあるまい、それに次の代なら大金星だ」と村長。
「今がこれほど幸せでも、つい次を願ってしまう。
欲とは、限りが無くていかん」と言って、長老は一口呑む。
これが、長命種のダークエルフの会話である。
人間だったら何世代?と、聞きたくなるほど、気が遠くなる時間感覚だ。
ふと、精霊樹の警護をしている衛兵に、目が留まる。
「そこの兵隊さんたち、お前さんたちもこっちへ来て呑まんか?」
「お気持ちだけ、頂きます。
酔っ払った隙に、御神木に何かあってはいけませんから」
そんな会話をしている最中でも、入れ代わり立ち代わり人が来て、祈って帰る。
「皆、熱心じゃのう、少し人族を見直したぞ」と村長。
「実際、御神木に救われた人は、多いと思いますよ。
仕事で嫌な事があったり、色々辛い事を抱えている時、
ここで祈ると、スッキリして
『まだ、やれる。』と思えるようになるんです」と衛兵。
「わかるわ~」串焼き屋の親仁まで、会話に参加する。
「実は私も前の商売で、行き詰まり、もうダメだって時に、御神木に祈ったら、スッキリして、家や家財道具を売り払ってでも、借金を減らして、一からやり直そうと、思えるようになったんです。
そしたら、物事が良い方向に転がりだして、家も売らずに済んで、こうして、串焼き屋として、再出発出来てるわけです。
こう云うのを『神の奇跡』と云うでしょうかね。
神官連中が『神宿る木』とか、領主様が『御神木』って言うのも、判る気がします」
ダークエルフたちは、何故か自慢げで『ドヤ顔』で聞いている。
「実際、神殿で祈るより、御利益ありますから」と付け加える。
「だから、私たちは酔っ払う訳には、いかないんです。
人族にとっても、御神木は大切なものですから」
衛兵は胸を張って答える。
「あっ、やっぱりいた」
アキュフェースは、手を振りながら歩いてくる。
「差し入れです。飲み過ぎ無い様に、注意してください」
赤ワイン3本、手渡す。
「ジョナサン、エイワード、お疲れ。
交代まであと少しだから、気を抜かないでな」
そう言って、アキュフェースは、去って行った。
次の日、居城の執務室に、鬼の形相をした大聖女様がいた。
俺には、何故リーングランデがこんな顔をしているのか、心当たりが無い。
訳の分からない俺は、取り合えず、彼女を宥めに掛かる。
「どうしたの、リーン? やけに不機嫌だけど」
カチン!!
「そう・・・わからない、か。
私が何に怒っているか、・・そう・分からないか
ふふふ・・・あなたには、・・何一つ・・・分からないでしょうね」
バン、大聖女様、机を叩く。
正直、まったく、心当たりが無い。
「リーンが、ここまで怒る理由がわからない。
俺のせいなら、謝るから、理由を聞かせてよ」
バン、机を叩く、大聖女様。
「私、困っているって、言ったよね」
「???・・何が???」
バン、机を叩く大聖女様。
「みんなビビッて、庭師も誰も世話してくれないって、言ったよね」
「あ、あ~、もしかして精霊樹のこと?」
「そうよ、・・あの後、リーフリットも来ないし
・・・挙句の果てに、ダークエルフを囲って、精霊樹の世話させてる。
なら・・なら・・困ってる友達を助ける気概が、あなたには、ないわけ!!!」
大聖女様、机を叩く。
「それは国を跨ぐし、俺の一存では」
バン。
「言い訳禁止」理不尽な大聖女様。
「取り敢えず、正式な書類にして、キチンと手続き取ってくれ。
そうしてくれないと、一貴族の俺は、動けない」
「この人でなし!」
リーングランデ大聖女様は、怒って帰って行った。
それから、10日後、テニオン神国の総本山から、正式な依頼として、ダークエルフ派遣の話が来た。
俺は、ムハービット村の3村長を呼んで、事情を話した。
「聖樹様のお世話自体、異論はないが・・テニオン神国とは、また遠い」
「これは、依頼の形はとっていますが、事実上の教団からの命令です。
私たちに、NOは、ないんです。
送り迎えは、私たちの転移魔法でしますから、ご心配なく」
「何とも理不尽な話じゃ」東の村長の言い分はわかる。
「取り敢えず、現地へ行きましょうか」
村長3人とリーフリットを伴って、アクアポリスの大聖堂まで転移した。
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