表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/78

第52話 漢はダブルトップで決める。

「あら法務伯閣下、宮廷伯とあろうお方が、この様な胡散臭い場所に足を踏み入れて、大丈夫なのですか?」


「胡散臭いか・・お前が言うとは、な」宮廷伯は苦笑する。


「で、今日はどの様な御用で?」

 魔族のシャリーは、気にも留めず、言葉を投げる。


「最近、この国では仕事もやりづらいかと、思ってな」


「まあ、確かに」シャリーも歯切れが悪い。


 王宮の要人に針を仕込めば、『王の目』機関のミツルギと近衛のナイトハルトが、目ざとく見つけて処理をする。


 警戒が厳しくなって、なかなか要人には手が出せない。

 では有力貴族はと云うと、使い勝手の良いドズル達は、北の地に押し込められて、自領経営に忙しく、中央の覇権争い処ではない。


 ダメ押しで教団の転職システムである。

 兵士の質もレベルも上がって、やりにくくてしょうがない。


「そこで提案なのだがな、『忘れられた大地』に拠点を移したら、どうだ?」


『忘れられた大地』

 西大陸の北部三国、魔界の門が開いた時、魔王軍に滅ぼされ、最初に犠牲になった場所だ。

 かつての魔王軍の拠点が、あった場所。

 現在、無政府状態で、略奪暴行が当たり前に行われている。

 各国で禁止されている、奴隷売買が行われ、特に、獣人はその犠牲になっている。

 あらゆる悪徳が許され、当たり前のように実行される。

 瘴気が比較的濃く、荒野となった大地は作物も育たない、その上、高位の魔物が跋扈する。

 現在残された地獄の様な場所だ。


「確かに、あそこならはぐれた同朋とも、合流できるかもしれない」

 魔族のマチルダは、この話に乗る気だ。


「素朴な疑問なんだが、何故どこの国も領有権を主張しないんだ?」

 普段、無口なゴステアが問う。


「費用対効果の問題だ。多くの軍を派遣して、多くの犠牲を払って、手に入れたモノは、野盗と瘴気にまみれた大地だけだ。、作物もまともに育たぬ地を得ても、大赤字なだけだ」法務伯が疑問に答える。


「私らにとっては、願ったりの場所だけど。あんたの狙いは何だい? 閣下」


「我らの狙いか・・良いだろう。

 ・・我らの宿願は、正統な神たる、あの方を、魔界よりお連れし、あるべき場所、あるべき座、あるべき神になって頂く、その為だけに、友愛評議会はある」


「何かと思えば、闇司祭かい」


「無礼な、正統なる神の使徒である」


「悪かったよ。馬鹿にした訳じゃない、

 しかし、これで利害は一緒さ、何かあったら連絡をくれ。

 目的の為、向こうである程度の勢力を造っておくさ」


 シャーリーたち魔族は、王都から姿を消した。





 アキュフェースは、ふと気が付いた。

 せっかく造った船「権天使ドミニオン」を、海軍の旗艦として渡したら、自分の遊び用の船が無いと。


 そしてあろうことか、海軍から、権天使ドミニオンを『スクーナー』(全て縦帆)から『シップ』(全て横帆)に改装してくれ、と言ってきている。


 あいつら、スクーナーの良さが解ってない。

 季節風を利用した航海や順風では、シップに軍配が上がるが

 逆風や運動性能を含めた取り回しの良さなら、やっぱりスクーナーだ。


 車に例えるなら、乗り心地の良い、ライトウエイトスポーツか?

 普段は素直なのに、限界まで攻めると、いきなりピーキーのじゃじゃ馬。

 これをどう抑えるかが、腕の・・・あ~これ、違う、関係の無い話だ。

 そう思った瞬間、リーフリットとアイシャの顔が浮かんだ。


 確かに、リーフリットもアイシャも乗り心地が良い。

 少し小柄で、従順、限界まで攻めた時の・・・

 もう、頭の中はエロ一色、どう峠を攻めるのかと同じ思考で、

 どう二人をギリギリ攻めるか、

 悶々と、もんもんと、

 そんな事ばかり考えていて、この日は仕事にならなかった。


 夜は走り屋気分で、二人をギリギリを攻める楽しみを満喫して、心も体もスッキリした次の日、権天使ドミニオンのシップへの改装を始めた。

 3本マストのシップとスクーナーでは、メインマストの位置が違う。

 3本マストのシップの場合、先頭のマストは2番目に高く、2番目のマストがメインマストで1番高く、後方の3番目のマストが最も低くなる。

 マストを移し替える作業が、一番大変だった。

 これが終われば、あとは簡単、サクサク作業をして、海軍に引き渡した。



 問題は自分用の船だ。

 自分用だし、遊び用だし、1本マストのヨットで十分と思っていた。

 そしたら、奥さんズ、海軍、家宰のセドリックに反対された。

 転覆されたら、困るという事だ。

 俺が造ろうとしていたのは、『スループ』というものだ。

 ヨットと帆の形が微妙に違うが、見た目ヨットで、10門から20門の小型の大砲を装備できる。

 主に護衛艦や海上保安艦として、使われているものだ。

 勿論、遊び用なので、武装はしないが。


 周囲の猛反対にあって、30メートル級2本マストの『スクーナー』で納得させた。

 しかし、30メートル級と云ったら、この時代の中型戦艦クラス。

 それを遊び用にして良いの?


 大砲を最低20門付けてくれと言われたが、これは、流石に却下した。


 遊びの船に、武装は無粋だし、俺自身、戦えるから。

 俺を如何どうにかできるのは、魔王討伐のかつての仲間か、白竜王のハクくらいだ。

 LV250 OVERは、伊達ではない。


 とはいえ、丸腰なのだから、逃げ足重視で。

 そうなると、ウォータージェットしか思い浮かばない。


 ウォータージェットまたの名を、ハイドロジェット。

 船底から汲み上げた水を、高圧ポンプで、後方ノズルから勢いよく噴出する事で推進力を得る。

 推進効率は、スクリューに劣るが、高速での航行に適している。

 レジャー用の水上バイクから海上保安庁の高速巡視艇まで、幅広く使われている。


 問題は、何処までもつか?これは、実際、造って、要、検証。


 そして、船内は、快適装備、テンコ盛り。

 キッチン、お風呂、洗浄付き便座トイレ、冷凍冷蔵庫、魔導オーブンにクーラーとヒーター。

 広いベットに快適なリビング。


 ただ一つ無念なのは、電子レンジが、ないことだ。

 無理して料理しなくとも、冷凍食品があれば、レンチン最強!!、だと思う。

 出先まで来て、料理って、思うのは、恵まれた環境で育った日本人の発想か。

 結局、どちらも無いので、諦めるしかない。


 モニターに映し出された海図に、目的地を指示すれば、自動で潮の流れ、風の向きを読んで、最適の帆の角度、舵輪の位置を自動調節して操舵を最適化して、目的地まで自動で運んでくれる。

 簡易巡航システムを、毎度ながら、取り付けた。


 今回の帆装は、前回『トップスル・スクーナー』だったので、今回は小さな横帆2つで。

 正式名称『ツートップスル・スクーナー』又は『ジャッカス・ブリック』

 ここは敢えて、ダブルトップと呼びたい。

 ワントップより攻撃的だし

 ツートップよりダブルトップの方が、格好いいと思ったから。


 先頭の横帆には、家紋の『アルメニア藤』を。

 2本目のメインマストの横帆には、エストニア王国の国旗を、それぞれ描く。


 そうなると、縦帆が白なのも味気ない。

 縦帆のデザインは、アイシャに任せる事にした。


「アイシャ、競技用ヨットみたいな、派手なデザインにして欲しい」


 俺のムチャぶりに、少し考えて。


「2~3日、待って」と言って、自室に引っ込んだ。


 次の日、数枚のスケッチを持って、リビングにアイシャはきた。

 持ってきたスケッチに目を通すと、どれも良い。


 結局、アメリカ西海岸のヨットでありそうなデザインに決めた。


 早速、クリエイトスキルで縦帆にデザインを転写して、船に取り付けた。

 白い船体に金の縁取り、如何いかにも道楽貴族の船という感じだ。





 ドックを出て、軍港に進水する。

 リーフリットとアイシャを呼んだ。綺麗どころ二人を従えての処女航海だ。


「御屋形様、護衛は?」


 ガーネットの問いに、要らない要らないと返すと、船にさっさと乗り込んだ。

 ガーネットたちを無視して、巡航システムを起動させる。

 船は錨を上げ、ゆっくりと港を出港した。


「サンタマリア号の出港準備して」ガーネットが指示を飛ばす。


「少し過保護すぎやしないかい」サマンサが苦笑する。


「いくら何でも、護衛艦1隻も付けないなんて、あり得ないでしょう」


「わたしゃー、あのメンバーを如何にかできる者を見てみたいね」


「見失う前に行くわよ」ガーネットは、命を下す。




 ガーネットたちは、タービンエンジンを使い追いついた。


 アキュフェースはたちは、巡航システムの具合を確かめる様に、のんびりクルージング中だ。


「しっかし、派手な船だな」サマンサは、呆れた様に言う。


「でも、これはこれでアリよね」と、ガーネット。


「なあ、前に廻って観てみないか」


「航行の邪魔にならない?」


「大丈夫だって、シップとスクーナーじゃ、風の受け方が違し、コース取りも違う。そもそも、そんなヘマしないって」


 そう言って、クルーに指示を出す。

 航行の邪魔にならない位置取りで、前に出る。


「派手だけど、アリだ」前から見たサマンサの台詞。


「でも、御屋形様って、何気にスクーナー好きよね。

 前は、トップスル、今は、ツートップスル。結構、マニアックよ」


「あれで、普通のスクーナーは、造ってないんだぜ」


「言われてみれば、確かに。マニアックな物しか造っちゃいけない病かしら」


「かもしんね~な」


 二人は護衛対象を肴に、笑い転げていた。


  

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

ブックマークの登録と

☆☆☆☆☆に、面白かったら★5つ頂けると、今後の励みになります。

この作品が、明日も頑張れる一助となりますように

あなたの人生に幸あれと、願いを込めて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ