第51話 「國褒め」のすすめ
この日、居城のシュヴェリーン城(偽)に、見知らぬ漢が尋ねてきた。
普段なら、面会などせずに追い返す。
俺の顔見知りと主張しているので、会うだけ会ってみるか、と思い直した。
応接間に入ると、白髪の長髪、見た目は20歳台、一言で言えば男前、美丈夫と云っても良い。
昔の中華を思わせる絹の礼装、白地の絹に『五爪の竜』の刺繍が施されている。
「白竜王か??」
俺は独り言とも、問い掛けとも言えない感じで、呟いた。
『五爪の竜』は、竜王の証、勝手につけていいモノではない。
「正解だ。よく解ったな」
「五爪の竜で何となく。
しかし、竜王ともなると、あの巨体で人化も出来るのかぁ」
「それは出来ぬ。竜核の一つを人化させたにすぎぬ。本体は、白竜山で眠っておるよ」
俺たちの理解しやすい言葉に直すと、目の前の御仁は、白竜王の化身、白竜王のアバターと云う事か。
「それで、今日はどういった、御用件で?」
「最近、人族の食事に興味があっての、軍資金をくれ。
しばらく居候させてもらえると、助かる」
(ガク、何かと思えば、そんな事)
「バトラー、白竜王を食客扱いで、お部屋を用意して」
セドリックの後任の執事、バトラーに指示を出す。
宰相の紹介で、うちに来た。
長年他家で執事をやっていたが、息子に職を譲った際に引き抜いてきたのだ。
老齢の執事らしい執事だ。イケオジで頼りになる。
「処で、白竜王。何とお呼びすれば良いですか?」
「神の名をみだりに唱えてはならない。
我も亜神ゆえ真名は明かせぬ。好きに呼べ」
「・・・では『ハク』と呼ばせて頂きます」
「それから、我に敬語は不要じゃ」
「では、そうするハク、よろしく頼む」
「フム、それでいい」
俺は、とりあえず大銀貨(1万円)と銀貨(千円)を中心に10万円分、ハクに渡した。
ハクは、これから屋台巡りをするそうだ。
そして出掛けに、ハクは、とんでもない事を口にする。
「この地の土地神の力が、徐々に弱まっておるが、神官たちは、何をしておるのだ?」
1番大事なことを、さらっと言って去って行った。
領都、東西の支城府にある神殿、全てにこの地の土地神について問い合わせた。
結果はわからないだ。
アルメニア州が、魔境と化した時、社も資料も全て失われた。
今となっては、何処にどの様な神様が祀られているか、まったく分らないそうだ。
その上、昔を知る住人は、ほとんどいない。
仕方が無いので、王都の大聖堂を訪ねた。
ここなら国内の資料が集まっていると思ったから。
「アルメニア州の土地神様のお力が、弱まっているというのは本当か」
思わず怒鳴る大司教猊下。
「亜神たる白竜王が言った事なので、間違いないと存じます。
当方には、何処で、どの様な神が祀られていたかを、知る手掛かりがありません。ご協力頂ければ幸いです」
「無論じゃ、しかし、迂闊じゃた、土地神様の事を失念するとは。
直に調べさせる、ただ時間が欲しい、大量の資料山から調べなくてはならないからな」
「朗報をお待ちしております」
そう言って、大司教の執務室を後にした。
「ねえ、これって、そんなに大事なの?」リーフリットが疑問を口にする。
「土地神様は、日本で云う氏神様のことだ。
その土地の守り神、地域の守護神。
そして今のアルメニア州は、立派な神殿を建てて、社長と取締役は揃っているけど、手足となって働いてくれる社員が、全員体調不良で、一人もいない状態なんだ」
「言い方、でも大事なのは、わかったわ」
それから2週間、俺たちは王都の大聖堂にいる。
拡げられたアルメニア州の地図には、土地神様の所在地と名前が、びっちり記載されていた。
土地神の名前は、通称で真名ではない。
「結構ありますねぇ」
想定より数が多くて、少々ビビる。
「そうか?普通だぞ、これくらい」他人事のように大司教猊下。
「そうだ、アルメニアの街や村は、更地から造りました。
建物や道路、畑の関係で、この場所に社が建てられない時は、どうしたらいいですか。」
「社は、竜穴の上に建てるのが、基本じゃ。
近くに小さくとも竜穴があるのなら、止む無く移動するのは構わない」
「それから、これは提案なのですが、『国誉め』をはやらしたいと思うのですが、許可して頂けるでしょうか?」
「その国誉めとは、なんだね?」
「これは、私の故郷の昔の神事です。
昔、官吏が地方に任官する際、土地神様を参拝して、この土地の風景のすばらしさや特産品や産業など、この土地が如何に素晴らしいかを和歌にしたため奉納する。
こちらに合わせれば、詩にして、奉納する。
それで、この土地に住む許可と加護を神様から得る。
これが本来の『国誉め』です」
「これを神官たちにやらせろと云う事か?」
「違います。やらせたいのは、領民です」
「どういう事かね?」
「これは、1番簡単な開運法なのです。
条件は、自分の住んでいる場所が好きなことです。
都会の方が良いとか、ここは何の無くて退屈過ぎるとか、云う人には効果はありません。
あくまで自分の住んでいる町や村が、好きな人限定の開運法です」
「ほう、それで」
「『私は、○○が大好きです』とか『○○に生まれて良かったです』とか
『〇△様、いつもありがとうございます』とか
口に出さなくとも、心の中で唱えている者には、
その土地の神様が、守護者となって不運から遠ざけ、幸運を手繰り寄せると言われています」
これは、与太話ではなく、6年連続累計納税者日本一になった、実業家のネット動画の講演での話だ。普段『天国言葉』を話しなさいと云っていた人が、突然『国誉め』、何だろうと思い、聞いたのでよく覚えている。
「なかなか面白い、発想だな」
「でも、神力の底上げには、持ってこいだと、思うのですが」
「反対する理由もないな。面白そうだから、やってみろ。
国誉めかぁ、儂も少しはやらせようかの」
「ふう、これで、最後っと」
東部の新しくできた開拓村に、土地神様の社を造る。
社と云っても、日本風ではない、どちらかというと村の教会だ。
西洋なら聖母マリアやキリストの安置される場所に、土地神様を安置する。
「わぁ~立派なお社」
見れば7~8歳くらいの女の子が、ホヘという顔で見上げている。
「これは、『ワーショイ神』様のお社だ。
ワーショイ神様が、この土地を守ってくれるぞ。
だからいつもワーショイ神様に、ありがとうを言おうな」
「うん、言う」
俺は、膝を降り、女の子の目の高さに合わせる。
「ここは好きかい?」
「うん、大好き!!!」
「そしたら、ワーショイ神様にたくさんありがとうを言おうな。
そうすれば、ワーショイ神様が、お前を守ってくれるぞ。
そして、ありがとうの数だけ、幸運をくれるから」
「うん、たくさん、ありがとうする」
「良い子だ」
少女と別れ帰路に就く。
「あなたに詐欺師の才能があるなんて、知らなかったわ。
それとも、ロリコン趣味かしら」
「勘弁してくれ、リーフ」
まったく、リコンとロリコンでは、一文字違うだけで、大きく違う。
リコン歴なら、人生いろいろあるさと、慰めて貰えるが、
ロリコン歴なら、笑えない。人間やめたらで終わりである。
それから、『国誉め』には、後日談がある。
王都の大聖堂、大司教猊下の法話で『国誉め』の事を話した。
そしたら、アルメニアの神殿でも、『国誉め』の話があり、ちょっとした『国誉め』ブーム。
その中で、願いの叶う人叶わない人を見ていると、いつも不平不満、陰口に悪口などを言っている人は、叶っていないようだ。
願いをかなえる人は、日頃から感謝を口にしている人だろう。
よく、欲望は、悪のように宗教家は言うが、
欲望は神様が与えてくれた正当なモノだ。
日頃の感謝を土台にして、願望を願えばいい。
欠乏感や妬みを土台にしての願望は逆効果だ
願いを叶えるコツは、感謝の上に欲をかくだ。
神様だって、いつも『ありがとう』を言ってくれる人を、応援したくなるのは、道理だと思う。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
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あなたの人生に幸あれと、願いを込めて。




