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第48話 試練の塔へようこそ アイシャさん ②

 この2ヶ月、アイシャを筆頭にアルメニア騎士団の面々は、気合が入っていた。

 自分こそが試練の塔クリアの第1号に成る。

 そんな思いで、厳しい訓練を課している。

 特に基本職を全てカンストした古株どもの気合は異常だ。


「パラディンに成って、正義の刃で、団長の腐れ頭をカチ割りたい」


「それなら、マスターモンクだろ。必殺の発勁はっけいで、内臓破壊してやるぜ」


「やっぱり最強は賢者だろう。無詠唱で魔法をぶっ放して、焼き殺す」


「お前ら分かって無いなぁ~。漢なら、バトルマスター一択だろう。

 敵だろうと、魔法だろうと、この剣で斬り裂いてやるよ」


 騎士団長のフランツまで、会話に参加する。


 こんな脳筋全開の会話が、何処かしこで聞こえる。


 神殿で転職可能になると、文殊の下位互換転職システムが機能を停止した。

 これからは、神殿を活用しろと云うことだろう。


 うちの基本方針は、神殿基準の基本職を全てカンストした者のみ、上級職の挑戦権を与える。

 こうした理由は、上級職のスキル上げは、基本職の倍以上かかる。

 それなら、先に基本職を全てカンストした方が良い。

 中級程度でも、全員が回復魔法を使え、全員が攻撃魔法が使える。

 この方が軍の底上げには丁度いい。


 ちなみに、海軍は、基本職を全てカンストするのに奮闘中だ。


 今回テニオン神国に連れて行くには、騎士団の初期メンバーと神殿基準の基本職を全てカンストしている者だけだ。




「アイシャ、準備は良いかい?」


「バッチリ、試練の塔攻略者第1号は、ボクが貰うわ」自信満々に答える。


 テニオン神国、試練の塔の前だ。

 式典も終わり、いよいよ試練の塔の攻略が開始される。


 試練の塔の1Fに入ると、そこにはSFで見かけるコールドスリープ用みたいなベットが、20台ほど並べられていた。


 ここの管理責任者の司祭が説明を始める。


「まず、挑戦者のみなさまには、このベットに横たわって頂きます。

 すると、魂だけが神々が用意したステージに送られて、神の試練を受ける事に成ります。

 神の試練は、全部で10。

 神の試練を越えると、上級職の道が開かれます」


 この説明を聞いて、一番最初に浮かんだのは、『フルダイブMMO、◇ード・〇ート・〇△ライン』だ。


「質問、良いでしょうか?」俺は手を上げる。


「何でしょうか?」と管理責任者。


「神のステージに閉じ込められて、戻ってこれないという可能性はありますか?」


「それは無いと存じます。そもそもこの塔は、技能神様が管理されています。

 神の監視をくぐり抜けて、第三者の介入は、不可能であると断言できます。

 それから、モンスターに敗れても、魂が肉体に戻るだけで、死ぬことはありません。

 モンスターに敗れた時点で、1年間、再挑戦はできませんが」


「LV40以下では、命の保証が出来ないというのは?」


「そうでも言わないと、クリアレベルに満たない者が、殺到するからです。

 LV40以下では、最初の1面もクリアできないと断言します。

 正直、塔を攻略するならLV50は欲しいと云うのが本音です」


 古株は問題ないが、新規の連中は厳しいか。


「質問は、以上です。ありがとうございました」俺は礼を述べる。


「それから、隣の待合室と中央広場に人数分のモニターを設置させて頂きました。

 挑戦者、一人一人の活躍も、観戦頂けるようになっております」


 中央広場は出店や屋台が賑わってそうだ。


「上級職挑戦の手数料は、お一人様、金貨1枚(約10万円)です」


 俺は、人数分のお金を支払い、待合室に戻った。


 アイシャも含めた先発隊20名の挑戦が始まった。




 俺は、待合室でアイシャの映っているモニターを観ている。

 授業参観の親の気分だ。


 1面は草原ステージのようだ。

 遠くにワイバーンぽいのが観え、大型のバッファローもどき、オーガの姿も見える。


「確かにLV40無いと、厳しそうだ」俺は独り言を言う。


 アイシャは、余計な戦闘は避ける方針のようだ。

 なるべく戦闘は避け、階層主をサッサと屠るつもりのようだ。

 画面右上に、アイシャのステータスが表示されている。

 LV115、アイシャの名前とHPとMPが表示されている。


「この2ヶ月で、レベルを2上げてきたかぁ~」

 

 普通に凄いなと感心した。

 LV100越えで、レベルを2つ上げるのは、相当大変だ。

 そもそも人間のレベルの限界は、LV99だと云われている。

 事実、フランツもLV99からレベルが上がらない。

 ジャンやトーマス至ってはLV70後半で、やっとLV80が見えてきた処だ。

 騎士団メンバーは、ファルムス王国、危険度Sの魔境・シスアの森で、定期的にレベリングを行っている。

 それでもレベル100は、敷居が高いようだ。

 LV100越えを『限界突破』と呼び、実際、限界突破したのは、俺も含めた魔王討伐組とアイシャだけとなる。


 何気なくフランツのモニターに目をやると、バーサーカーの如く、敵を片っ端から屠っている。

 脳筋と云いたくなるが、限界突破しない苛立ちを、敵に向けているかもしれない。



 そうこうしている内に、アイシャは階層主の元へ、ここの階層主は、トロール・キングだ。

 アイシャにとっては雑魚でしかない、アッサリ屠って次の階へ。


 次の砂漠ステージでも、アイシャ大活躍、階層主をアッサリ屠って次のステージへ。

 海のステージでは、海竜を、氷結ステージでは、フェンネルもどきを、順調に撃破する。

 死霊ステージでリッチを、悪魔ステージではデーモン・ロードを問題なく倒す。


 何気なく他のモニターを観たら、うちでも中堅処の騎士とアイシャやフランツとでは、敵が違う。

 これは、どういうことかと管理責任者に尋ねると、レベルによって難易度が違うらしい。

 中堅処の騎士がやっているのが、ノーマルモード。

 ジャンとトーマスがハードモード。

 アイシャとフランツがヘルモードだそうだ。


「何故、こんな事をするのか」


「神の御心は、分かり兼ねます」


 そうだけど、納得いかない。


 俺が憤慨していると、アイシャは最後のステージへ、階層主はレッド・ドラゴン。


 少し手こずったが、難なく撃破、アイシャは試練の塔を第1号でクリアした。


 アイシャの選んだ上級職は『レンジャー』


 戻ってくると、アイシャは嬉しそうな顔をして、俺に抱き着いてきた。


「凄かったじゃないか、お前の活躍はバッチリ見させて貰ったよ。

 よくやった。とにかく無事で良かった」


 俺は、アイシャを強く抱きしめた。


「向こうもそろそろ佳境みたい」リーフリットの声で、我に返る。


 フランツの相手はレッド・ドラゴン。

 ジャンとトーマスが、それぞれ下位竜レッサードラゴンだ。

 中堅処の騎士は、大蛇おろちを相手にしている。


「ズル~イ、ボクの時と全然違う!!贔屓ひいきだぁ~贔屓だぁ~」

 アイシャは少しご機嫌斜めだ。


 フランツは、結構、ギリギリだったが、レッド・ドラゴンに勝った。

 同時にアナウンスが流れる。


『ヘルモードをクリアした、フランツ様には、特典として、【限界突破】が承認されました。

 レッド・ドラゴンの経験値を加算して、LV102となりました。

 おめでとうございます』


「へぇ~、ヘルモードをクリアすると限界突破かぁ、悪くない」


 アイシャの腰に腕を回しながら、呟いた。


 それから3日間、騎士団メンバーの試練の塔への挑戦が続いた。

 結果は、新規のメンバーの数名が落ちたが、上々の結果といえる。


 フランツは宣言通り、バトルマスター、ジャンとトーマスは意外な事に、賢者を選択した。

 バリバリ前衛のアンナのマスターモンクは納得出来る。

 回復役だったローザが、魔法戦士って、どうなの?

 魔法職のジャンヌがパラディンって、何か違う気がした。


 何はともあれ、思い思いの上級職を手にして、試練の塔の挑戦は大成功に終わった。 



最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

☆☆☆☆☆に、面白かったら★5つ頂けると、今後の励みになります。

この作品が、明日も頑張れる一助となりますように

あなたの人生に幸あれと、願いを込めて。

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