表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/78

第42話 海賊退治のその後

 新しい代官を迎え、新体制がスタートする。


 アルメニア家宰相として、家宰、セドリック・フォン・シュナーゼ。

 東部支城、代官に、ヘルマン・フォン・アシュタイン。

 西部支城、代官は、ヨアヒム。フォン・ザルツィ。


 中部の護りに、騎士団長のフランツ、部隊長にアルバート、副隊長ローザ

 東部に部隊長ジャン、副隊長アンナ

 西部を部隊長トーマス、副隊長ジャンヌ


 これに、領官、騎士、衛兵が3分割されて配属される。


 うちの唯一の海軍、海龍の牙の面々は、半年の期限付きで、グランハウゼンに預かって貰っている。

 まだ、軍港が無い為だ。権天使ドミニオンも預かって貰っている。


 陛下と殿下の依頼を、サッサと済ませて、港を造って、家の船と海兵を回収しないと。

 海龍の牙の面々が、怒り出す前に。




「ようこそ、煉獄の扉へ。お二人を歓迎します」


 いつもの燕尾服ではなく、貴族服でのセドリックと代官二人との顔合わせの席で、黒い笑みを浮かべたセドリックの第一声だ。


 この挨拶に、流石の二人も面食らう。


「忙しいとは聞いていたが、それほどかね?」東の代官のヘルマンが尋ねる。


「見てお分かりの通り、アルメニアは、急ピッチで復興発展しています。

 そのため、万年人手不足が、続いています。

 その度に、新しく人を雇ってくださいますが、御屋形様が、何かやらかす度に、鬼のように仕事が増えてゆきます。

 雇っても、雇っても、仕事は減らず、寧ろ増えています。

 この痛みを分かち合える仲間が出来て、心から嬉しく思っています」


 セドリックの心の叫びに、二人の代官は、顔を見合わせ絶句した。


 初めて見るセドリックの姿に、ヤバイ追い込み過ぎたと、反省した。


「もう大丈夫だセドリック。今は優秀な補佐もいるし、一極集中にはならないから」


「そう云う御屋形様が、一番、信用できないんですが。今度は何をやらかす気ですか?」


「陛下たちに頼まれた船を造ったら、家の船と海軍を回収しないといけないから、港は造る予定だけど」


「「「・・・・」」」


「うちの御屋形様はこういう方です。お二方とも、もうお分かりかと思いますが」


 セドリック、斯くのたまう。


「セドリック、休め!!一週間、休みをやる。疲れを癒して来い!!!」


 余りの成り行きに、そう命じていた。


「それから、セドリック、お前の勘違いを一つ正しておく。

 俺が現場に出ていられたのも、お前がいたからだ。

 お前に任せておけば、安心できるので、つい負担を掛け過ぎた。

 少しは反省している」


「・・少しですか」


「とにかく安め、休んでる間は、ヨアヒムとヘルマンと俺で、分担してやっとくから」


「では、お言葉に甘えさせて頂きます」


 そう言ってセドリックは、退室した。


「二人とも済まない、任地へ赴き前に手伝ってくれ」


 執務室に行くと、未決済の書類の山が三人を出迎えた。


「これは・・セドリック卿でなくとも、ブチギレますな」とヘルマン。


「少し凶悪な量ですが、御屋形様、ご自身で決済は?」


 ヨアヒムの質問に、小さくなってNOと答えた。


 3人は、1週間、やってもやっても減らず、逆に追加される書類と格闘した。


 これでは堪らんと、セドリックに補佐官2名、財務部から引き抜いた。


 只でさえ忙しい財務部は悲鳴を上げたが、人員を補充するからと言って、何とか宥めた。


 1週間経って、セドリックが戻って来た時には、皆、歓喜で出迎えた。


 セドリックの手を取って、帰還を喜ぶと、ヨアヒムとヘルマンは、そそくさと任地へ赴いた。




 

 セドリックが戻ったのを良い事に、王都グランシールに転移して、国王陛下に謁見を求めた。


 どのような船が希望か、最終確認の為である。


「他の何処にもない、唯一無二の船が良い」


「それは、大きくても構いませんか?」


「構わぬ」


「国賓や諸侯の方々を、乗せるご予定はありますか?」


「機会があれば、有っても良い」


「武装の方は、如何なさいますか?」


「旗艦である以上、ハッタリでも多いに越したことはないな。

 なるべく、船足を犠牲にしない方向で頼む」


「承りました。最善を尽くさせて頂きます」



 


 次はグランハウゼンに転移して、カイエンブルグ公を訪ねた。


「旗艦であるから、それに相応しいもので頼む」


「帆装は如何しますか?」


「シップでも、パークでも、良いな。貴公に任す」




 

 二人の確認を取り、早速、作業に取り掛かる。

 王都のドックを間借りして、早速、作業開始だ。


 国王が使う事を考慮すると、迎賓館の役割も持たせた方が良い、と思い至る。


 戦争に使うばかりじゃ能が無い。

 国威を見せて、武力行使を思い止めるのも大事な外交だ。


 国際会議場や国賓のおもてなし、国内の諸侯に王の威光を示すのにも利用できると良い。


 思い付いたのは、豪華客船とド級戦艦のコラボレーションだ。


 50メートル級では、お話に成らない。

 

 110メートルならば、豪華客船の機能、迎賓館の機能に問題なし。

 確か、5本マスト・シップの大型帆船であり、豪華客船の『ロイヤル・クリッパー』も、このサイズのはずだ。

 しかし、120門艦にする予定だったので、大砲の設置場所に困るのだ。

 大砲の設置場所と豪華で快適な客室棟と場所が被るのだ。


 そこで、さらに大きくする事を考える。

 そういえば、スター・クリッパー社で、160メートル級の大型帆船『フライング・クリッパー』が、あったはず。

 これを、豪華客船の雰囲気を保ちつつ、戦列艦として十分な武装を施す。


 艦の中央部に3層砲甲板にして、上砲列に12ポンド砲、中放列に24ポンド砲、下層列に36ポンド砲を備える。


 大砲の設置場所の両脇を、国賓や随員の客室にすれば、問題ない。


 この船自体が、戦闘行為を行うのは、考えなくて良いと思う。


 護衛艦が必ず居るはずだし。


 方針が決まったので、早速、製作に取り掛かる。


 竜骨を含めた骨組みが、木材では間に合わないので、ここは、鋼鉄を使う。


 本当はミスリルにしたかったが、お値段が天文学的なものに成りそうなので、泣く泣く断念する。

 迷ったのは、外装、木材で行くか、鋼鉄を使うか?

 オール金属では、重量がありすぎて、船足に影響する。

 現代日本のタービンエンジンが使えない以上、魔力駆動のタービンエンジンを強化する事にする。

 ふと思い立って、文殊に軽量化の魔法があるのか、尋ねた。


 結果はある、との事なので、外装を鋼鉄製にした。


 外装の裏面に軽量化の魔法陣を描き、魔力変換器に繋ぐ。


 5本のマストも全て、金属製だ。


 巨大なタービンエンジン2基、取り付け、魔力を貯める魔石の量も半端ない事になった。


 内装の工事は、船大工と貴族の邸宅を造る専門の大工に、協力して施工して貰った。


 後の細かい設備は、内装工事終了後に、俺が仕上げる事となった。




 

 王様の内装工事の間に、カイエンブルグ公の依頼に手を付ける。


 こっちは比較的に楽だ。今までやって来たものと、変わらないから。


 簡単に云えば、日本丸Ⅱまたは、海王丸Ⅱに118門の武装を施しただけだ。


 全長110.09メートル 幅13.80メートル 吃水6.57メートル

 4本マストのパーク帆船、メインマスト高43.5メートル

 ディーゼルダービンが無いので、魔力駆動のタービンエンジンを2基。


 武装は、上砲列12ポンド34門、中砲列24ポンド34問、下砲列36門32門

 その他、8ポンド18門、36ポンドカルネード砲6門


 外装も鉄板した。本当に武装した日本丸Ⅱに成ってしまった。


 2隻とも職人の内装工事待ちである。



 


 そんな時、珍しくミューゼル宰相が、ドックへ護衛を連れて訪れていた。


「噂になっているので、見に来てみれば、財務伯が頭を抱えるな」


 俺は苦笑しつつ。


「エストニアの国威を見せるのに、これくらいは必要です」と答えた。


「これだけ巨大な鉄の船なら、言いたくなるのも分かるが・・」


「これは、戦艦としての役割の他に、宮殿としての役割もあります」


「詳しく聞かせてくれ」


 ミューゼル宰相の言葉に、俺はこの船が、戦艦だけでなく、迎賓館の役割がある事を、そして国際会議場としても利用できると告げた。

 国威を見せつけ、戦争を回避するのも立派な外交だと、持論を展開した。


「船を迎賓館として活用するなど、考えもしなかったな」


 ミューゼル宰相は、感心したように言った。


 後日談として、50億以上掛かった船の建造費を回収する為、国事行事にしか使用しないのは勿体ないので、空いた日は、豪華客船として営業したらどうかと、財務伯に提案した。


 国王の了承を得て、営業してみれば、これが大ヒット。

 史上最大級のパーク帆船であり、最大級の戦艦であり、初めての豪華客船なのだ。

 1番安い3等客室、3段ベット、3人部屋で200万のお値段だ。

 王族専用の『オーナーズ・スィート』は、使用禁止。

 国賓を招く『ロイヤル・スィート』で、億の値がついたとか。

 普通の『スィートルーム』で、何千万から億近い物まで。

 1等客室~3等客室まで、それに準じた価格になる。


 これで、予約1年待ちなのだから、有る処には、有ると痛感した。

 観光の概念の無い時代の『初』だから、と云えばそれまでだが。

 勿論、王国海軍から、護衛艦として、フリゲート艦が2隻、護衛の付くそうだ。




 

 2隻の内装工事を待つ間、領地に戻って、港湾の整備を始めた。


 まずは、防波堤を造る処から。

 下記に書くのは、現代日本のやり方で、俺の遣るのは、スキルと魔法の合わせ技なので、参考程度に読んでください。


 防波堤の造り方

①陸地で、防波堤の本体、ケーソンを造る。

 ケーソンって、何? 簡単に云えば、防波堤や岸壁を造る際に使われる、コンクリートの箱の事。秋田港の時を、例にすると、幅24.4メートル、長さ30.5メートル、高さ23メートルの巨大なコンクリートの箱。

 内部はいくつかに区切られた空洞の部屋になっていて、海に浮かび、沖まで運ぶことができます。


②石材運搬船で運んだ石を、海底に投げ入れ、潜水士が、その石を平らにならして、防波堤の土台、つまり基礎を造る。


③引き船でゆっくりとケーソンを運ぶ(1~2ノット)

 空洞に水を入れ、土台から50cmの高さまで沈める。

 据え付け位置を確認して、土台の上に据え付ける。


④ケーソンに砂を詰める。これで、重量を増やして波に耐えられるようにする。

 その上で、コンクリートで蓋をする。(蓋コンクリート)


⑤被覆石と根固めブロックでケーソンの足元を固める。


⑥波消しブロック(テトラポット)を据え付ける。


⑦ケーソンの上に、コンクリートを打ちます。(上部コンクリート)


 この作業を、延々と繰り返して、海の中なのに、L字型だったり、真直ぐ伸びてたりする、防波堤が出来上がる。



 俺は中部のこの地形を見た時、何となく神戸の地形に似てると思った。


 飽くまで、沿岸の形だけ。


 神戸港には、歴史のロマンがある。言わずと知れた平清盛の福原遷都だ。


 当時の無理解で失敗に終わるが、時代が2~300年違ったら、もっと別の評価をされていたと思う。

 結局、清盛は正しかった。物々交換だった当時、宋で使われなくなった現金(宋銭)を、大量に買い込み、貨幣経済の普及に努めたり、日宋貿易で利益を得たり、今の日本とどこが違うと云いたくなる。

 福原は神戸として発展して、和田泊は、神戸港として世界に誇れる貿易港になった。


 うちの港も、神戸港に負けない物にしよう。

 東大陸・中央大陸との東方交易を視野に入れた、一大貿易港だ。


 まず、防波堤造りだ。安全な港に防波堤は、欠かせない。


 ケーソンを自作してサクサク防波堤を築く。目標は、神戸港と同じ規模。


 何度もセメントと砂を爆買いに往復して、1ヶ月掛かりで、やっと大枠が完成した。


 取り敢えず、海龍の牙の面々を回収しなくてはいけないので、軍船クラスの泊まれる波止場や岸壁を造り、彼らを呼び戻しにかかる。





「お待ちしておりました。御屋形様」フェリペが代表して挨拶をする。


「みんな遅くなって、済まなかった。

 取り敢えず、お前たちの受け入れ準備は出来たので、迎えに来た」


「それは良いんですが、少し困った事態が持ち上がっていまして」


 困り顔のサマンサの言葉に、どうした?と尋ねた。


「私たちが騎士になったのが、傭兵の間に広まって、あわよくば騎士に成れるんじゃないか、と云う連中が、連日、売り込みに来て、その対応に苦慮していまして」


 サマンサが、溜息交じりに言う。


「それで、腕の方はどの程度だ?」


「色々です。腕の良い傭兵団もあれば、??と云いたくなるにまで様々です」


 フェリペの言葉に、少し考えて、こう結論した。


「では、大々的に募集を掛けるか。勿論、試験付きだけど。

 1週間後、ここで、試験を実施する。

 試験用の船は、これから造るから。ふふふふ」


 俺の様子を見ていた、サマンサが


「嫌な予感がするのは、気のせいかね」


 目頭を押さえながら、こう呟いた。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

ブックマークの登録と

☆☆☆☆☆に、面白かったら★5つ、詰まらなかったら★1つ

頂けると、今後の励みになります。

この物語が、あなたのストレスを緩和する、清涼飲料となる事を願って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  マスト船がまだ良心的?戦になったら船員達は戦闘員として使いようがある、もしもここで戦艦大和級や長門級だったら見た瞬間相手は戦う気力を失うでしょうね、それ以前に数十キロ前から砲弾が飛んできて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ