第4話 裁定の結果とささやかな結婚式
貴族院が提出した署名入りの連判状の貴族の顔ぶれは、
大多数は貴族派。
それより問題は、中立派、王党派の議員がまとまった数がいたことだ。
結局、王の裁定は「エナル川以西」の西部が俺。
カシムは「エナル川以東」の東部と中部。
アルメリア州全土を石高に直せば、64万石。
俺が17万石、カシムの分が47万石。
しかし、旧カシム領は推定30万石前後。
ドズルとしては、カシムに本来の分だけ渡して、残りをドズルの息の掛かった者に分け与えるのが、当初の目論見であったはずだ。
残りの分だけでも、伯爵家なら1つ、子爵家なら3~5家入り、男爵家に至っては6~17家は入る。
もし、俺の領地まで計算に入っているなら、その倍だ。
流石の国王もそのような暴挙、許すはずもない。
カシムの後見人はドズル公爵。
王国からの資金援助、人的援助は、双方ともしない。
カシムに対する資金援助は『ドズル、お前がやれ!!』ということだ。
10年の間に、最盛期の半分まで復興できなければ、
領地は没収され王家直轄地になる。これも双方とも同じ条件。
俺は伯爵のまま、カシムは騎士爵のまま、侯爵は見送り。
本来なら、爵位と領地の釣り合いが取れない。
カシムに関しては『領地経営で結果を出せ』という事らしい。
一見カシムたちが得したように見えるが、事実は逆だ。
甘い汁を吸おうとしたドズルが、資金を出すとは思えない。
資金の無い状態で、旧領より広い領土を、10年で復興させるのは至難の業だ。
国王は『最初から取り上げるつもりでいる』と見た方が良い。
カシムの生き残る道は、旧領以外すべて返して旧領のみに全力を注ぐべきだ。
時間の限られた状態で東部はお荷物でしかない。
しかしこれで、ドズルの息の掛かった人員を送り込みたくとも、ドズルが送り込めるのは爵位無しの代官どまりだ。
当主のカシムが騎士爵なのに、それ以上の爵位持ちを送り込むなど、出来るわけ無いのだ。
ドズルたちのアテが外れて、結構なことだ。
俺も王宮からの資金援助は無くなったが
アルメニア魔物討伐の報酬、白金貨5000枚(50億円)と魔物の素材の売却益とまだ売ってない素材も有る。
資金的には十分といえた。
リーングランデとカリオンの帰国が近づいているため
みんな揃っているうちに、
ささやかでも結婚式を挙げようという事になった。
お世話になった親しい人だけ呼んだ、身内だけのものだ。
リーングランデが司祭役を、買って出てくれた。
この世界には指輪の交換の風習が無かったので
指輪を用意して、結婚式の定番のあのセリフを、司祭ではなく
おれたちが交互にいう事になった。
「健やかなるときも~病めるときも~富めるときも~貧しきときも~
( ~~中略~~ )
貴方を愛し続けることを誓います。
その証として、この指輪を贈ります」
そう宣誓して、指輪をリーフリットの左の薬指にはめた。
今度はリーフリットの番。
リーフリットは、ハニカミながらも無難にやり遂げた。
誓いのキスのあと、司祭役のリーングランデが高らかに宣言する。
「天上におわす8柱の神々よ。ご照覧あれ。
今、新たな夫婦が誕生しました。
どうか神々のご加護と祝福を給らんことを」
式の最後にブーケトス。結婚式は無事、終了した。
「指輪の交換初めて見たけど、結構くるものがあるわね。
広めても良いかもしれないわね」
リーングランデが、そう評した。
披露宴は、王都でも少しお高め店、
ミシュランなら星1ツか2ツ、を貸し切りにして行われた。
日本の披露宴のような形式ではなく、立食パーティのスタイルで行われた。
カリオンとリーングランデの帰国の日も近づいている。
本来なら魔王討伐が終わった時点で、帰国のはずが
俺の我儘で、ここまで付き合って貰ったのだ。
もう感謝しかない。
「カリオンも、もうすぐ帰国かぁ~、寂しくなるな」
カリオンが、意外!という顔をした。
「私はあなたに、嫌われていると思ってました」
「別に嫌ってはいないさ。苦手なだけだよ」
「本人目の前にしてよく言いますね」
「そんなもんだろう。
全員が敵なることも、全員が味方になることも、あり得ない。
例えば10人、人がいて
気の合うのが2人、普通に付き合えるのが6人、苦手な者2人。
こうなって無ければ、自分の生活態度を見つめ直した方が良い」
「確かに、こればかりは、その人の良い悪いではありませんからね」
単に相性の問題だけだ。
「そういえば、おまえ帝国に戻ったら就職先は?」
「皇太子殿下の側近にと打診がありました」
待遇の良い処に向かい入れられると思っていたが、これは予想の範囲外。
「おめでとう!!!お前なら帝国を良い方向に導ける」
「祝福は素直に受け取っておきます。でも褒めても何も出ませんよ」
そう言って、カリオンはワインを一口を呑んだ。
「困った事があったら念話しろ、何処にだって駆けつける」
「頼りにしてます勇者様。でも、そうならない様に手を尽くしますよ」
「素直じゃないな、遠慮なく頼れば良いだろう」
「そうですね。でも、それが私ですから」
考えてみればカリオンと、
こうして膝を割って話をするのは、初めてかもしれない。
「どんなに優秀でも一人は一人さ、一人で抱え込むなよ」
苦笑して、カリオンはワインを一口。
「肝に銘じますよ」軽く笑って
「あなたこそ、領民0からの領地経営。遠い帝都の空から見守らせて貰います」
「ありがとう」
そう答えて、ワインを呑む。
男同士で呑む酒も良いもんだ。
もっと早くカリオンとも、こんな酒を呑めれば好かったのにな。
「ねぇ、呑んでるぅ~♪♪」
酔っぱらったリーングランデが乱入する。
ぶち壊しだよ、リーングランデ。
酔っぱらったリーングランデに後ろから抱き着かれた。
とても結構なモノをお持ちのリーングランデの感触が、背中越しに伝わる。
「ワタシィ、あんな堅苦しい国へ帰るの、いや~」
前を見るとカリオンの姿がない、逃げたかぁ。
「分ったから、落ち着こう。リーン」
俺は、リーングランデを引き剝がそうとする。
「アキュフェースが邪険にするぅ~」
更にメロンサイズの結構なモノを、背中に押し付けてくる。
巨乳派では無く、美乳派の俺でもメロンサイズは良い。
ではなく、面倒になる前に引き剝がすに限る。
「コラ!!何やってるのぉ~!!」
厄介ごと☆キターーーーーー☆☆☆
「見てないで助けてくれ、リーフ」
俺は、飽くまでも被害者側だ。
リーフリットも、引き剝がしを手伝ってくれた。
「なに必死になっているのよぉ~獲りゃしないわよ。・・・こんなヘタレ」
言うに事欠いて、酷くありません?
「なんで、国へ帰るのが嫌なのさ?」
拘束を解かれた俺は尋ねる。
「自由が無いからに、決まっているでしょう」
「あなたの立場なら、ある程度は仕方ないと思うけど」
リーフリットは、正論を言う。
実権は無くとも、大聖女の地位は、
テニオン神国のトップ、総代大主教の地位と並ぶ。
魔王討伐を成し遂げ、世界を救った英雄、救世主の一角というおまけ付きだ。
「国へ帰ったら、巡回司祭に志願しようかしら」
「巡回司祭」、常駐する司祭の居ない僻地の礼拝堂を、定期的に廻り、
村人たちに神々の教えを説き、薬師の役割をし
子供たちに読み書きを教える、寺子屋のようなこともする。
魔物や山賊などの危険を伴うので
武道、護身術を修めた武装司祭が担当する。
「通ったらいいな(まあ、無理だと思うけど)」
「そうね」とだけ、リーングランデは答えた。
「なに、ハーレムしてるんだよ♪」
上機嫌のナイトハルトが肩を組み、
強引に男たちの待つ阿鼻叫喚の世界に連れていかれた。
吞んでも吞んでも、代わる代わるグラスに酒が注がれる。
これが日本の披露宴なら足元にバケツを置いて、
失礼のないように一口だけ吞んで、残りはバケツに捨てることが許される。
まともに付き合うと、急性アルコール中毒になるからだ。
下手な男気出して式の途中で、新郎に倒れられたら困るからだ。
そういえば、鹿児島の披露宴は、どんぶりに並々芋焼酎が注がれて、
それを一気飲みして各テーブルを廻るらしい。
いくら九州男児が酒に強くとも、コレはない。
話半分で聞いていたが、今置かれている状況はそれに近い。
俺が意識を手放すのに、そう時間は掛からなかった。
当然、初夜はオアズケとなった。
リーフリットが喰えるのなら『お残しなんて、絶対にしない!!!』
自信があっただけに、残念だ。
それから一週間過ぎて、リーングランデとカリオンは帰国の途に就いた。
それからすぐに、王都から派遣された官吏立会いの下、領境に関所が築かれた。
派遣された官吏も帰り、だだっ広い領地に2人キリだ。
「これから、どうするの?」
「まずは、道路整備かな。街道の復興は最重要課題だから。
そんなことより、さぁ」
リーフリットの腰に腕を回す。
「俺たち夫婦になったんだよな」
そう言いながらキスをしようとすると、両手で俺の唇を押さえてきた。
「あんまりがっついてるのは、カッコ悪いわよ」
俺は唇の拘束を解いて、そのまま抱きしめた。
「認めるよ」
そう言って、キスをした。
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