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第39話 天使の艦で海賊討伐 ④

 ゼニカッペ伯爵は、王都に次ぐ大都市グランハウゼン、その高級ホテルのスィートルームで怒り狂っていた。

 カイエンブルグ公に、援軍を出すという話を断られた為だ。


「クッソー、このままでは、身の破滅では無いか」


「旦那様お気を確かに。お静まりください」


 執事が慌ててなだめる。


「証拠さえ消してしまえれば・・・後は如何どうとでもなる」


「それならば暗殺や諜報を生業とする者を、雇ってみれば、如何いかがでしょうか?」


 執事の言葉に、その手しか無いかと思い直す。


 元々、ハイネスベルグ子爵を追い詰める為の一手だった。

 ゼニカッペ伯爵領は、港に適した場所が無い。

 皆、遠浅で、大型の船の寄港には適していなかった。

 貿易港が欲しくとも敵わぬ思いだった。


 隣の領国のハイネスベルグ子爵が、金に困っていることを聞きつけ、一計を案じた。

 とても返せない額の資金援助を行い、高利で追い詰める。

 とどめを刺す意味で、海賊を雇い、通商路シーレーンの破壊を行った。

 金だけ渡して依頼すれば良いモノを、欲が出て、私掠免許を発行した。

 最初のうちは、双方儲かっていた。

 しかし、海賊たちが暴走した。

 他の同業者を掻き集め、伯爵のコントロールを離れ、好き勝手に暴れだした。

 こうなると、命取りは、私掠免許という事に成る。

 カイエンブルグ公に協力を申し出たのも、自らの手で証拠を隠滅して、裏切った海賊どもの息の根を止める為だ。


「レスターを呼んで、万事始末させよ」ゼニカッペ伯爵は、こう命じた。


「仰せのままに、承りました」執事の礼をして、そう応じた。





 海龍の牙の面々と、権天使ドミニオンの停泊している軍港を訪れていた。


「これが新造した戦艦かい? とても戦う船には見えないね」


 サマンサが、呆れた様に言う。


 白い船体に、所々金の装飾が施されている、

 戦艦と云うより、豪華客船の佇まいだ。


「まあ見た目はな。少し趣味に走ったから。それより実際、操船してみるかい?」



 俺たちは、船内にあるブリッチに入り、軽くAIシステムによる運行システムを解説した。


「この船が凄いのは理解した。この船に俺たちは必要か?」


 疑問を投げかけたのは、副長のフェリペ。


「必要だ。通常の航海だけなら、確かに必要ない。

 しかし、戦闘や不測の事態、例えば嵐とか座礁しそうな処での航海とか。

 そんなもの機械じゃ、まだまだ判断できない。

 マニュアル通りの運用が、やっとだよ」


 半分納得してくれたフェリペ。


「これは、俺たちで操船出来るのか?」


 フェリペの問いに、出来ると返す。


「艦長席のパネルに、マニュアルと書いたボタンみたいな枠があるだろう。

 ガーネット、それにタッチしてくれ」


 ガーネットは、言われた通りタッチパネルを押す。


「これで、AI制御は外れたから、ここからは普通の船と変わらない。

 これを、生かすも殺すも、お前さんたちの腕次第だな」


「言ってくれるね。倍の報酬出すから居てくださいと、言わせたくなったわ」


 航海長のサマンサが、闘志を燃やす。


「しかし、何で、トップスル・スクーナー??戦艦なら普通、シップでしょう」


 ガーネットの言葉に、ニヤリと笑って答えた。


「逆風のなか、真っ向勝負で切り上がって、道を切り開く漢のロマン♪♪

 女子供には理解できない領域だったかね」


「大丈夫♪俺たちも理解できて無いから♪♪」


 衛兵のジャンがフォローを入れる。

 そのジャンに、ヘッドロックを掛けて、げんこつで頭をグリグリする。


「大将、痛い、痛いで~す」ジャンは、涙目で中止を訴える。


 俺は、ヘッドロックを解除して、ジャンに一言。


「女に鼻の下を伸ばして、主を裏切った罰だ」


「あんまりですよぉ~、可愛い女のに味方するのは、普通じゃないですか」


「ジャン、ひとつ良い事を教えてやる。

 このにちょっかい掛けたら、『海龍の牙』のみなさんは、敵に回るぞ」


「たく、もう、それでは仕事に戻ります」


 おうと言って、ジャンを見送った。


「随分仲が良いですね、一兵士ですよね。」ガーネットは驚いたように言う。


「普通だと思うが、今度はお前たちの番だ。プロの操船の妙を見せてくれ」


「言われずとも、唸らせて見せますわ」


 ガーネットはそう言うと、指示を飛ばす。


 海龍の牙による操船が、披露された。



 波しぶきを上げて、晴天の青い空、青い海、これ以上ないロケーションで権天使ドミニオンは航行する。


「思っていたよりも、良い船じゃないか。

 でかい分、ノロマかと思ったが、戦列艦としては申し分のない速度だ。

 おまけに操作性も素直で扱いやすい。スクーナーだと、舐めていたのを謝るよ」


「辛口の航海長殿に認めて頂いて、恐悦至極だ。

 では、もう一つ取って置きを見せよう。

 クルーに帆を全て畳む様に指示してくれ」


「分かったけど、何をするつもりだい」


「それをこれから見せるのさ、ブリッチに行こう」


 ブリッチに着くと、早速、艦長のガーネットに指示を出す。


「ガーネット、パネルの上の方に動力、オン、オフのボタンがあるだろう。

 それをオンにしてくれ」


 ガーネットは、言われた通りにオンにする。


 次に、操舵士に指示を出す。


「お前の横にあるレバーを『前進・微速』に合わせてくれ」


 操舵士が言われた通り、レバーを合わせると、船はゆっくりと前に進む。


「今度は『前進・低速』に合わせてくれ」


 俺の指示に、操舵士が従うと、船はゆっくりと加速した。


「後はお前さんの好きに操舵してくれ」


 操舵士は嬉しそうに、操舵を楽しむ。


「なあ侯爵さま、本当に私たちって、要るのかい?」


 サマンサの問いかけに、俺は、必要だと、答える。


「このタービンエンジンは、連続稼働で3時間しか持たない。

 魔石に必要な魔力を貯めるのに、約3日。とても使えるレベルじゃないんだ」


「それは海の神に感謝するさ、こんな物実用化されたら、私たちは飯の喰いぱぐれさ。こいつは海兵殺しの船だよ」


「そうはならないと思うがな。

 そろそろ、エンジンを止めて、帆船の航行に戻してくれ」


 操舵士は残念そうに、レバーを停止の位置に戻した。


 動力もオフにして、帆船モードに戻った。




 砲撃手として連れて来られた衛兵たちは、暇を持て余していた。


 誰言う事も無く、操船の邪魔にならないスペースで、模擬戦を始めていた。


 狭い戦場では、斬るより突く、下手に剣を振り回しては、隣の仲間を傷つける事に成り兼ねない。大型の武器も同様の理由で却下だ。


 しかし、みんな、慣れない片手刀カトラスに四苦八苦している。


「これなら、レイピアの方が良くないか?」


 トーマスの言葉に、衛兵隊長のフランツが挑発する。


「武器を選んでいる様じゃ、まだまだ未熟だね」


 あっさりと挑発に乗るトーマス。


「能書きばかりの隊長に、ほえ面書かせてやる」


「人間、出来ない事を口にするもんじゃないぜ」フランツが煽る。


 気合十分で、トーマスはフランツに襲い掛かる。


 フランツも負けじと応戦して、二人の戦いは一進一退。


 結果は、フランツが勝って隊長の面目を保った。


 その様子をマストの上から見ていた、掌帆手しょうはんしゅは、マジかぁ~と呟いた。


 慣れない武器と云いながら、実力は自分たちの上である事を、嫌でも認識したのだ。


 そんなことも有りつつ、海龍の牙の操船で、この日の試験航海は終了した。




「まったく、どこまで傾奇いてるんだ、あの船は」


「結構、気に入ってるくせに」


 サマンサの言葉に、ガーネットがクスクス笑って応じる。


「団長はいつも通り、情報収集ですか?」


「いつも通りのウエイトレス、あそこが一番、情報が入るもの」


「じゃあ、副長には、そう伝えておきます」


「何で兄さんが副長で、私が団長、普通、逆でしょう」


「あなたを団長に推したのは、副長ですよ。

 それは、副長に聞いてください」


 サマンサの言葉に、納得できない!!とガーネットは吠えた。


 それから、3日後、海賊討伐の本番が始まった。

 

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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この物語が、あなたのストレスを緩和する、清涼飲料となる事を願って。

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