表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/78

第37話 天使の艦で海賊討伐 ②

 俺たちが、新造艦の試験航海を楽しんでいると、突然、アナウンスが入った。


「御屋形様、至急、ブリッチにお戻りください。

 正体不明の艦に民間船が追われています」


 マジかと思ったが、すぐブリッチに急行して状況を聞く。

 ブリッチに入ると、拡大された映像が目に飛び込んだ。


 追われている民間船が3本マストのシップで、海賊船と思われる船は、ブリッグと2隻のスループ。

 スループが左右からシップを挟み撃ちにしている。


 ブリッグは2本マストで、全て横帆のタイプ、後方のマストは横帆と縦帆の半々が正解なのだが、分類上、全て横帆になるらしい。全長は25~50メートルの物が多い。戦闘用の物は10~20の大砲を備えている。軍艦だけでなく、商船としても人気が高い。

 同じ大きさなら、マストの数が少ない方が、乗組員は少なくて済む。

 人件費の面からも、シップよりブリッグの方がコストパフォーマンスが高いのだ。

 

 戦闘用スループは1本マストでカブセイルとジフを持つ小型砲艦、見た目は、ほぼヨット。カフセイルはスクリナーと同じ形の縦帆を使用している、ジフは逆風対策用の三角帆、フリゲート艦より小型で10~20の小型の大砲を積んでいる。護衛艦以外にも海上警備で使われたりする。


「とにかく現場に急行してくれ。リーフは念話で指示するから、連絡要員として待機してくれ。助けには俺が行く」


 甲板に出ると、飛翔魔法で現場に急行した。


 現場に着くと、上空でストレージから油の樽を取り出し、左のスループに投げつける。


 樽が割れ油がまき散らされたら、火球魔法で放火する。


 次にブリックに狙いを定め、同じことを繰り返す。


 右のスループは逃げに転じていたが、そこは逃がさず放火。



 3隻の海賊船が燃えたのを確認して、追われていたシップの甲板に降り立った。


「私は、アキュフェース・フォン・ワント・ツー・アルメニア。

 陛下より侯爵の地位を賜っている。 艦長と話がしたい、目通りを希望する」


 俺は大声を張り上げる。


 俺の言葉に、初老の艦長が歩み寄った。


「この度の御助力感謝します、アルメニア侯爵。

 高貴な方を連れての航海でしたが、一時はどうなる事かと思いましたが、お陰様で事なきを得る事が出来ました。ヒエラビーラの民を代表して、重ねて御礼申し上げます」


「とにかく無事で安堵しました。今、高貴な方とおしゃられたが・・」


「ヒエラビーラ公国の公女リディア殿下で在らせられる」


「という事は、これ1隻のはずありませんよね?」


「護衛艦は3隻ありましたが、襲撃の際、皆、盾となり・・その後は・分かり兼ねます」


 俺はリーフリットに念話で連絡を入れ、権天使ドミニオンの到着を待つ。


 連絡してから10分で、この海域に到着した。


 飛翔魔法を保ったまま、海に逃げ出した海賊たちを、転移魔法で権天使ドミニオンの甲板に転移させ、フランツ達衛兵が、海賊たちを縛り上げてゆく。


 一通りの作業が終わったら、ナイトハルトとミツルギに連絡して、迎えの護衛を手配する。

 その間の護衛を権天使ドミニオンに任せ、俺は取り残された護衛艦の救助に向かう。


 10キロほど離れた場所で、まだ護衛艦たちは抵抗を続けていた。


 俺は、すぐ助太刀を開始した。

 状況は、典型的な海賊戦法、乗り込まれての白兵戦、少数なのによく持ち堪えている。


 俺は周りの海賊船を、火球魔法で燃やして回ると、俺も白兵戦に参加する。


 船の甲板は狭いので、大きな武器は邪魔になる、そこでショートソードを選び、斬るより突くを優先する。


 しかし、自分のスタイルに合わない戦闘は、突くより斬るスタイルの人にとっては、ストレスが溜まり、つい足と手がでる。


 両手剣の聖剣を持ってから、随分鳴りを潜めたが、俺の本来の戦闘スタイルは、片手剣と格闘の合わせ技だ。 斬って、投げて、殴って蹴る、関節技もお手の物だ。


 昔、ナイトハルトに、お前の剣は足癖が悪い、と云われたのを思い出した。


 俺は、戦いながら、まだ息のある味方に、回復魔法を飛ばしている。


 味方の支援をしながら、敵を突き殺し、投げ飛ばす、殴り殺し、蹴り殺す、死屍累々の山だ。


 1つの船が迎撃に成功したら、他の船の助太刀に向かう。

 全ての戦闘が終了するまで、1時間と掛からなかった。


「助太刀感謝します、アルメニア侯爵閣下」


「何、礼には及ばない。それよりも、リディア殿下は御無事だ。

 今は、俺の船が護衛している。安心してくれていい。

 取り敢えず、王都グランシールに向かわせたが、不都合はおありか」


「不都合など何も、それより姫様を助けて頂いた事、何とお礼をして良いか」


 護衛艦の艦長は、そう言って、言葉を詰まらせた。


「息のある者は、粗方回復させたはずだが、他に怪我人は居られるか?」


「恐らく大丈夫でしょう。修理の方もグランシールに着いてからでも、大丈夫だと思います」


「それなら、10キロ先に姫君の船がある。私の船が護衛しているので、安心されるが良い。余り無理をせず、王都を目指してくれ」


 それだけ言うと、飛翔魔法で権天使ドミニオンの元へ帰還した。




 グランシールの手前3キロほどの処で、王都の海軍、シップ3隻が、ようやくお出ましだ。


 俺は、捕らえた海賊を引き渡し、護衛の任を海軍に引き渡すと、姫様の護衛艦3隻を迎えに行くためサッサと反転した。


 護衛艦の艦長は、ああ言ってたが、実際は現場から一歩も動けてない可能性がある為、様子を見に急行した。


 折角助けて、現場に置いてけぼりは、流石に目覚めに悪い。


 結論から言うと、俺の心配は杞憂で終わった。


 見た目はボロボロだったが、問題なく航行している。


 権天使ドミニオンが先導する形で、王都の軍港まで、無事、誘導した。




 戻ってみると、案の定、事情聴取が始まった。


 事の顛末を、時系列で海賊討伐から護衛艦の救助まで、包み隠さず話して解放された。


 やっと帰れると思ったら、今度は、陛下に捕まった。


 応接間に通されると、そこには、国王陛下、ミューゼル宰相、カイエンブルグ公、そして誰だ? 初めて見る顔が待っていた。


「陛下、アルメニア侯アキュフェース、御下命によりまかり越しました」


「ご苦労だった。楽にして良い。そう言えば其方、ウィルバルドは初めてだったか」


「はい、お初にお目にかかります。ウィルバルド卿。

 アキュフェース・フォン・ワント・ツー・アルメニア、陛下より侯爵の地位を賜っています」


「ウィルバルド・フォン・シューバッハだ。海軍の宮廷伯を拝命している。

 身に余る処遇に震えておるよ」


 シューバッハ宮廷伯は、豪快に笑う。


「宮廷伯」=大臣の事である。

 

(作者の独り言)

 神聖ローマ帝国出身の称号で、大臣の意味を持つが、大臣の称号で間違いないかと云われるとチョット疑問。

 ですが、ここでは大臣の称号として押し通すつもり。

 中国由来の尚書より、いいかなと思うので。独り言終わり。


 つまりこの人、海軍大臣、海軍卿、海軍宮廷伯閣下。


「繰り返しになって済まんと思うが、事の顛末を聞かせてくれないか?」


 ミューゼル宰相の言葉に、ついさっき話した内容を、同じ様に話した。


 話し終わると、全員渋い顔をしている。



 ここで問題に成っているのは


①ヒエラビーラ公国の公女リディア殿下が、海賊の襲撃に遭ったこと。

 リディア殿下は、この国の王太子殿下と婚約関係にある。

 政治的意図があるのか、無いのか、今の段階で判断できない点。


②西のグランハウゼン近海の出来事と思っていたら、海賊被害が王都近海まで波及した事。


③海賊の規模も本拠地も把握できない事。


④①の出来事が政治的なものなら、私掠船団の可能性も、視野に入れて置かなければならない。

 私掠船ならバックにいるのは、何処の国?? という話になる。



「公女殿下襲撃の際、幾らか海賊を捕えています。尋問の過程で色々見えてくると思うのですが」


 俺の言葉に、シューバッハ宮廷伯は、取り合えず、部下たちの尋問待ちかと答えた。


「アキュフェース卿、改めて協力をして欲しい。今回の件、卿の力は有用だ」


 カイエンブルグ公爵の依頼に、否はありません、と答えた。


 そして、思い出したようにアキュフェースに、追加の依頼をする。


「貴公のあの白い船は好いな。このゴタゴタが住んだら、1隻、私にも造ってくれ。

 あの船なら、シップも良いが、バークも映えそうではないか」


 この言葉に国王陛下が、待ったを掛ける。


「アキュフェース、ヨーゼフに造る前に、先に造る者がおるだろう。

 予を差し置いて、ヨーゼフに先に造るなどと、心得違いをするでない」


 また王様の我儘が始まった気がした。


「アルメニア侯アキュフェース、勅令を持って命じる。

 この騒ぎが収まった後、国王専用艦として相応しい戦艦を建造せよ」


 初めから、否は無いが・・


「謹んでお受けします。大陸一の戦艦を造ってみせましょう」


 王様の我儘で、海賊騒ぎの嫌な雰囲気が吹き飛んだ気がした。


 

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

ブックマークの登録と

☆☆☆☆☆に、面白かったら★5つ、詰まらなかったら★1つ

頂けると、今後の励みになります。

この物語が、あなたのストレスを緩和する、清涼飲料となる事を願って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ