第30話 貴族派への嫌がらせ ②
『アルメニア伯爵の販売拒否宣言』は、国中にアッという間に広がった。
貴族派のやり方に恩知らずだと、憤る者、面白がる者、仕方ないじゃないと云う者、それでも貴族に成れただけ良いんじゃ無いと云う者、反応はマチマチだ。
この話は、外国まで広がり、魔王襲来で被害を受け、勇者たちに救われた国々は、勇者の待遇が冷遇された物だと知り、エストニア王国に、抗議の使者や手紙が相次いだ。
当の本人は、塩田用手押しポンプと手押しポンプを、南街道の海沿いの貴族に、売り込むのに余念がない。
王党派の重鎮、サウスエルッツェン侯爵の処でも、話題は、貴族派には売らない宣言だ。
「貴公もよくやるな」とサウスエルッツェン侯爵。
「でも、やっと、溜飲が下がりました」
「あ奴らは、気に入らないから、陰ながら応援するがな」
「閣下の御言葉、百万の味方を得た思いです。
しかし、あの馬鹿ども、私が販売拒否しても、1ミラも損をしていないって気付いてないのでしょうか?」
「確かにな、あ奴らの周りが儲けてるだけで、あ奴らは、現状維持のまま。
確かに損はしていない。
便利にも、豊かにもなってもいないがな」
「そこは、3年待てば、誰か模造品を造るでしょうから、それからでも、遅くはないでしょうね」
商業神に商標登録してあるので、3年間は誰もコピーできない。
「そこまで、あ奴らが待てるかどうか、見物じゃな」
「全くです」
二人は、儲けのレースに乗り遅れた馬鹿を肴に笑いあった。
王都、ドズル公爵の王都屋敷。
苦々しい顔でドズルは、報告を聞いていた。
「何故、我らが外国の奴らに糾弾されなくては成らぬ。
これでは完全に、内政干渉ではないか」
ドズルは、喚き散らしている。
「お静まりください、旦那様。外国勢力が何を言おうと、
我らに実害が及ぶものではございません。
それよりも問題は、塩の件にごさいます。
アルメニア伯の機械のお陰で、王党派の者どもは、塩の増産に成功しております。
しかも、少ない人員で。
同じ規模の増産を図れば、人件費は倍以上に膨らみます。
これでは、かの者どもと比べても、利は薄く。
このまま放置すれば、我等、貴族派のみ一人負けという事態になり兼ねません。
そちらの方が余程、問題であると愚考致します」
執事の言葉に冷静さを取り戻したドズルは、思案顔で尋ねる。
「では、女でも使うか?」
「かの、アルメニア伯は、ガチガチのエルフ趣味のド変態です。
愛人までエルフという厚顔さ、人族の女に堕ちる可能性は、低いと存じます」
「では、脅してみるか?」
「コズルト男爵が、逃げ帰って来たばかりではございませんか」
「いっそのこと、兵を起こして滅ぼせれば、楽なのだが」
「それは、恐らく悪手と存じます。
お忘れでは有りますまい、かの御仁が魔王を討伐して、スタンビートで魔境と化したアルメニア州を解放したことを。
恐らく武に於いて一軍に匹敵すると推察します」
「では、どうしたらよい」
「噂を流しては、どうでしょうか?
アルメニア伯爵に謀反の疑いあり」
「上手く行くと思うか?」疑わし気にドズルが問う。
「アルメニア伯爵は、先の裁定に不満の御様子、ここを上手く突けば、真実味は増します。
失敗した処で、こちらの腹は傷みません」
「小僧に煮え湯を飲ます、絶好の機会であるか」
ドズルは、満足そうに大笑いをした。
それから数日後、王都の下町を中心に、奇妙な噂話が広まった。
『アルメニア伯爵に、謀反の疑いあり』
販売拒否宣言の後に、この様な話が出た。
タイミング的に、この話題は不自然さを感じさせた。
作為的な臭いが、プンプンするのだ。
殆んどの者が、本気にせず、只の笑い話として扱った。
そんな事をしても、アルメニア伯爵に利がないのは子供でも分かる。
それよりも、噂が流れて僅か数日で『西アルメニア領に対する不売買宣言』
連判状に名を連ねた貴族達が、謀反人には、物を売れない、買わないと言い出したのが原因でなされた宣言だ。
余りにも見え透いて、稚拙なやり方に、噂を流したのが誰なのか、ハッキリと示していたのだ。
「やるんだったら、もっと上手く遣ればいいのに・・・」
これが報告を受けた、アキュフェースの第一声。
「全くです。王都の下町でも笑い話に成っているようです」
執事のセドリックも呆れている。
「ドズルって、馬鹿なの?」リーフリットも呆れ顔だ。
「これを逆手に取ったら、面白そう♪♪」アイシャらしいコメント。
「そうですね。何か良い案はありますか?」セドリックまで同調する。
「この世界に、死に装束って有るかな?」
俺の問いに、セドリックは、聞いたことがないと答えた。
「着物と袴を、白装束で仕立てれば良いの?」
これを聞いてきたのは、意外にもアイシャ。
「出来るの?」俺の問いに。
「お任せ♪♪ 処で足袋はどうするの? 流石に草履は作れないけどね。
これでも、コスプレの衣装自作していたし」
「仕方ないから靴で行くよ。
それから、セドリック、マリアンヌ嬢に、黒塗りの革鎧300着、発注しておいて」
「はぁ~、僅か300の兵で、謀反を起こすなんて、言わないでくださいよ」
「それから、リーフとアイシャ、2人分の喪服の衣装も。
アニメやゲームみたいに、ぶっ飛んだ衣装で良い、勿論、ミニスカートも許可だ」
「私たちに何をさせたいの?」リーフリットは尋ねる。
「それは、これから説明するから」
アキュフェースの悪巧みを説明してゆく。
それから、1ヶ月半が経過して、この日の王宮は、慌ただしさに包まれていた。
『アルメニア伯爵、兵300を従えて王都へと進軍中』
このニュースが王宮中を駆け巡った。
「これは、いったい如何した事か、判断に迷いますな」
ミューゼル宰相は、困惑した表情をしている。
謀反と云うには、少なすぎ、護衛と云うには、多過ぎる。
街道警備隊が問い質した処『王家にお尋ねしたき儀、これあり』
だそうで、それなら、兵士はそんなにいらない。
全く、真意が掴めないのだ。
街道警備隊が街道封鎖すれば、転移魔法で数キロ移動して、何事も無かった様に進軍を開始する。
戦闘の意思はなく、只進軍しているだけ。
王党派、中立派の治める町に逗留する時は、湯水のごとく金を使い町を潤してゆく。
その行動は、軍隊を率いた観光旅行?
その行動に、何の意味があるのか、関係者の各位は頭を抱えていた。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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