第25話 知ったかぶりに、ご用心
「「Na、ナ、無いわぁ~!! お尻で、お尻で、イクなんてぇ~」」
「「誰か嘘だと言ってェ~」」
1年経っても続く、朝の光景、今はステレオ放送だ。
昨夜は悪戯心に火がついて、アイシャのお尻を頂いた事に、端を発した。
リーフリットがライバル心剝き出しで、お尻を屠ることを要求したのだ。
結果、ふたりともお尻でイキ。
朝になったら、羞恥心とズタズタになったプライドに、悶えているのだ。
妻たちの羞恥に喘ぐ姿を見ながらの、朝の紅茶。
優雅なひと時だ。
「・・・御屋形様・・鬼畜です」
妻たちの様子を見て、メイドのマリーは、冷めた目でいった。
ノックがして、執事のセドリックが、マリアンヌ嬢の来訪を告げる。
「わかった、すぐ行く」
そう告げて、マリアンヌ嬢の待つ応接間へ向かった。
俺と入れ違いで、ベネッサが入室する。
マリー・ベネッサの腐女子コンビが、悶える妻たちに質問を浴びせる。
「「お尻で、イクとは、どんな感じでしょうか?・・・詳しく!!」」
腐女子たちの圧が凄い。
俺はノックして、応接間へ。
「おはようございます。お待たせした商品が、昨日、全て揃いましたわ」
待ちに待った、米、味噌、醤油が揃ったのだ。
「あと、ご注文の種籾と種麹も、手に入りました。
そちらは、近日中に届くと思います。
それから、竹でしたか、笹竹というのもが手に入りました。
大量に用意してあります、代金の方は、後日で構いません」
「無理を言って、すまなかった。 マリアンヌ嬢、感謝する」
これで、懸案だった流下式塩田、味噌と醤油の生産が始められる。
ただ、流下式塩田に、笹竹が正解かどうか、解らない。
孟宗竹では、太すぎる気がしていたので、細めのものを依頼したが。
「わたくしの手に掛かれば、こんな事、造作もありませんわ」
今回は、米、味噌、醤油の分だけだが、代金は、思ったより安かった。
船で、片道72週間も掛かる東大陸からの輸入品だ。
白金貨5枚(500万円)って、安すぎないか?
折角なので、みんなで厨房にお邪魔して、和食の準備に取り掛かった。
まず、味噌汁は、昆布と(頭とハラワタを取り除いた)煮干しの出汁で、具は、ほうれん草。
かつお節は、試行錯誤の真っ最中で、なまり節までは、成功しているが、荒節までは至っていない。
メインは、海老を中心とした、天ぷら。
ご飯は、白米よりも味付けご飯を選択した。
『さくら飯』だ。『具のない味付けご飯』の事を言うのだが、人によって通じる者と、通じない者がいる。
さくら飯は、全国区だと思っていたが、実は地方区なのかもしれない。
さくら飯を蒸らす時、手早く千切りの生姜を加える。
家によっては、最初から千切り生姜を入れる処もあるので、お好みだ。
今日の為に、羽釜も用意してある。
では、レッツ・クッキング~♪♪
一通り料理が、出揃った。
本当は天つゆも欲しかったが、かつお節未完成、かえしの用意も無いので、塩で頂く事にした。
出した料理は、好評だった。
お米の旨さに、共感してもらえた事が、素直に嬉しい。
「サクサク、プリッとして、美味しいわね。」
マリアンヌ嬢の天ぷらへの素直なコメントに、天つゆがあったら、もっと美味しいです、と言ってやりたい自分をグッと押さえる。
「やっぱり、落ち着くわぁ」
リーフリットが味噌汁を飲んでのコメントにも、かつお節が完成していたら、もっと唸らせて見せたのに、と思う。
材料も揃ってなかったこともあって、自己評価70点の料理に、みんなの好意的なコメントに、照れと悔しさが混じって、ついツッコミを入れたくなる自分がいる。
「おこげ、ラッキー♪♪」
「味付けご飯で、一番美味しい処は、アイシャの処に行ってたかぁ~」
俺の言葉に
「普段のおこないの差~♪」
たぶん違うと思うぞ、心の中でツッコミを入れる。
白米を食べ慣れていない人だと、味がしないと言われる気がしたので、急遽味付けご飯にしてみたが、好評そうで何よりだ。
これなら、どんぶり物から白米の良さを、アピールすれば、イケルだろう。
残念なのは、季節が春だという事だ。
味噌を仕込むなら、冬に仕込む、寒仕込みが一番旨いのだが、贅沢は言えない。
優先順位は、田んぼの造営が田植えの時期までに、間に合わす事だろう。
候補地選びから田んぼの造営まで、あまり時間がない。
ホントに急がないと、時期を外しかねない。
食事会終了と同時に、飛翔魔法で、領内の田んぼの候補地選びをしていた。
良さそな場所には、既に村が出来ていたり、領都から遠い場所だったり。
最悪村の一角を間借りしようかと、思っていたら、領都の西門から少しいった処に、良さそうな場所を見つけた。
河に近く水路を引けば、すぐに使えそうだ。
早速、土魔法とクリエイトスキルを駆使して、田んぼと水路を造った。
できた田んぼを見せびらかそうと、みんなを呼びに桔梗宮に戻る。
みんなを連れて転移魔法で戻ると、出来立ての田んぼを自慢した。
「それで、これで、どの位のお米が出来ますの?」
マリアンヌ嬢の質問に、自慢げに答える。
「3反保だから、3俵、1年間3人分♪♪」
「少なすぎですわ」意外な答えのマリアンヌ嬢に、一同頷く。
いやだって、お米を主食にしているのは、日本人の俺と、元日本人の転生者の奥さんと、同じ転生者の2号さんだけだと思っていた。
(否:この世界の技術なら、1反歩から通常なら5俵、豊作なら8俵は、可能と推察します。現代日本なら、9俵です)
この文殊のお節介な一言で、凄い矛盾に気付かされた。
「1石って、米1俵、1反歩の事だよな」
(解:1石=10斗=100升=1000合。
成人男子、1食1合、1日3合、333日分で約1000合、約1年分とされています。
江戸時代の知行換算レートでは、名目レートで、米1俵=1石=金1両と定められていました)
「それで、1石=1反歩って、正しいの?」
(是とも否とも云えます。
古代の律令制では、1年間食べられる米の量を1石、田んぼの広さを1反歩と定め、
1反歩=360歩と定めましたが、太閤検地の時に300歩で固定されています。
農業技術が上がり、収穫量が伸びても、そのままなので、昔の名残と推察します。
因みに、今の1俵=60キロは、明治以降の物です。
それ以前は、各地バラバラ、1俵=30キロという処もありました。
明治以降1俵=4斗とされ、米1斗=15キロ、1俵=60キロは、そこからきています)
納得したような、しないような文殊の解説に、昔の事情と表面だけの知識の差に、要らんショックを受けましたが、気持ちを切り替えて。
「文殊の見立てでは、15俵は取れそうだ」
「それは、15人分?」
「NOだな、尺貫法の基準が、途中で変わっているので、昔の基準に戻すのなら、1斗、15キロなら、1俵、150キロになるのかな? それで、333日分、約1年分だ」
「結局、足りませんわ。私、初めて食べましたけれど、なかなか可能性を感じましたわ。
それに、オーナー殿は、まだまだレシピを隠し持っているご様子。
それに、乗らない手はありませんわ」
「最初は、身内だけで良くないか?
だいたい、種籾が足りるかどうかも、分からないのに、先走りし過ぎて無いか?」
「そうでしたわ」
ガッカリするマリアンヌ嬢。
結局、今回は、5反歩の拡張に留まった。
あの勢いだと、出来た稲、全て種籾にされそうで、怖いな。
「ねえ、文殊、トラクターとか田植え機とかコンバインなんか、造り出せないかな」
(是:材料さえあれば、造り出せます。動力は魔石を使った物になります)
「出来るかぁ~、作業効率が上がる」 最初は、手押し式で充分だ。
そんな他愛もない話をしていると、自分の大失敗に気が付いた。
俺が開拓村に用意した畑、10反歩×4面は、一家族に与えるには多すぎたか?
「文殊、俺の造った畑、少し大盤振る舞いしたかな?」
(麦と米では収穫量が違います。米と同じ量の麦を収穫するには、8倍の農地が必要になります)
「・・・そんなに違うの?」
(是。しかしこれ以上は一家族では無理があります)
「そう言われれば、そうだよな」
元々、荒れ果てた土地に、新規も村を起こすのは、ハードルが高い為、俺が土魔法とクリエイトスキルを使って、畑を用意したに過ぎない。
新規の村でなく、既存の村で、住民が増えるのなら、そこは本人と村人たちで開拓して欲しい。
新規の村に関しては、今まで通りでいくことにした。
俺は早速、ビニールハウスの代わりに温室を造り、種籾を発芽させる準備に入った。
バイオビニールがあれば良かったが、無い者を云っても仕方ないのだ。
田植えの時期までに準備しないと、手遅れになる。
稲作に成功すれば、次は、日本酒の道も見えてくる。
こちらが一段落したら、今度は、味噌と醤油の仕込みだ。
食生活が豊かになるのは、喜ばしい限りだ。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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