表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/78

第24話 春は、お花見

 3月も終わりに近づき、去年植えた桜の苗木も若木となり、少ないながらも、桜の花がチラホラと見え始めていた。


 日本の満開の桜と比べれば、比較にもならないが、俺は、河原で小さな桜をバックに、バーベキューを楽しむ事にした。


「今日は無礼講だ、みんな楽しんでやってくれ。

 俺たちの領の1日も早い復興を祈って、乾杯!!」


「「「「「「「「「「「「乾杯!!!」」」」」」」」」」」」


 館のセドリックやメイドたちだけでは無く、非番の領官や非番の衛兵たちも呼んでの、お花見BBQだ。


「隊長、仕事なのに、俺たちだけ呑んでるのは気が引けますね」


 トーマスが律儀にそう言うと、ジャンが笑って返す。


「良いんだよ、普段俺たち頑張ってるし、たまには隊長にも苦労して貰わないと」


 二人は、ニヤッと笑って、エール酒を飲み干す。



「う~ん、エールがまだぬるい」


 俺はぬるいエール酒に、テンションが下がる。

 

 常温発酵のエール酒は、フルーティーな味わいが特徴。

 本来エール酒は、常温で呑むものだ。

 低温発酵のビールは、冷やしてこその『のど越しとキレ』

 別物だと思って良い。


 それでも冷えたエール酒を望むのは、日本人のサガか。

 河で樽ごと冷やしているのに、まるで冷えていない。

 魔法で冷やせないかな? 俺は早速実行する。


「旨い!!」俺は一気に飲み干した。


「どうしたの? そんなに美味しくないわよ」とリーフリット。


「魔法で少し冷やしてみろよ」


 リーフリット半信半疑でやってみる。


「うん、美味しいわ」


「「お方様、私たちにも、お願いします」」


 マリーとベネッサが自分たちのジョッキを差し出す。


「いいわよ」


 リーフリットは、快く応じる。


「「美味しいわぁ」」


 マリーとベネッサも、美味しそうにエールを飲み干した。


 俺たちが和気あいあいと、冷えたエール酒を呑んでいると、ジョッキ片手のアイシャが、俺の隣に来るなり腕を絡めてきた。


「唐変木のぉ、ゆうしゃぁさぁまに、かんぱいぃ~」


 見ればかなり酔っている。


「ねえ、ボクって、そんなに魅力ないのぉ」


 これが二人きりなら、優しく肩を抱いて

 『そんな事ないさ、君は、綺麗だよ』と言っている。


 アイシャは、ド・ストライクの好みだ。


 しかし、ここには、奥さんがいる。

 俺を起点に、アイシャの反対側に居る奥さんの怒気が、そろそろ危険水域だ。


「そんな事はないさ、アイシャは充分魅力的だ。

 しかし、俺には世界一大事な女性ひとがいてね。

 アイシャの気持ちには、答えられないんだ、残念ながらね」


 リーフリットの怒気が下がるのを確認、セーフ!!!


 アイシャは、俺の腕を振り払うと


「リア充爆発しろ!!!」と、言って去った。


「「えぇっ!!!」」


 俺とリーフは顔を見合わせ、慌ててアイシャの後を追う。


「アイシャ待て!!お前、日本人なのか?」


 俺は、日本語で話し掛けた。


「だったら何だって、言うのよ」アイシャは、日本語で返して来た。


 振り向いた顔は、涙でグチャグチャだ。


「前世が日本人だったら、可笑しいの?」


「いや、少しも可笑しくない。前世の記憶があると、この世界は馴染めないかい?」


 そう言うと俺は、後ろからリーフリットが、追って来ているのも忘れて、アイシャを抱き寄せた。

 右手で、アイシャの後頭部を撫でながら、なだめている。


 俺の胸に顔を埋めて、


「お嫁さんにして」


「それは、無理。恐らく許可が降りない」


「お妾さんなの?」


「まあ、そうなるかな、悪いと思うけど」


「しょうがない、かぁ。でも、言質は取ったからね。

 という事で、よろしくね!リーフリット」


 その一言で、俺は、とんでもない事を、してしまった事に気付いた。

 奥さんの目の前で、公衆の面前で愛人を囲う宣言をしたのだ。

 これが、『孔明の罠』か。


 冷たい冷や汗が、体中から流れるのを感じる。


「アキュフェース」


「イエス、マム」


 リーフリットの言葉に、条件反射で反応した。

 言われもしないのに、河原の小石の上で正座している。

 正直、痛いです。しかし、今は、嵐が去るのが、最優先課題です。


 リーフリットのお説教が始まった。



 それを、遠目で眺めていたロバートとジャンは


「相変わらず、苦労してるな、うちの大将は」とジャン。


「自業自得だと思いますがね」とロバート。


「でも俺、こうなる気がしてたわ」とジャン。


 自分たちの主の情けない姿を、酒の肴にして、他愛のない事を言い合った。



 マリーとベネッサは、別の方向で盛り上がっていた。


「これが、全員、殿方だったら、どういう展開に成ったんでしょう」


 マリーの言葉に、ベネッサの創作意欲が刺激された。


「将来を誓い合った二人に、隣国の王子の略奪愛」


 ベネッサの言葉に


「まだ、インパクトが足りないような」マリーが指摘する。


「なら、どちらが良かったか、二人に攻められる展開は?」


「それ、良いですわ」


「あっ、こういう展開はどう、王子に弱みを握られて、主人公が、王子の攻めに恋人の事を想いながら堕ちていく、なんて展開は?」


「「萌えますわぁ~」」


 腐女子たちの業は、深い。



 みんなの肴になっている、アキュフェースを救ったのは、領民たちだった。


「御領主様、俺たちも混ぜてもらって良いですかい?」


 俺はすぐに立ち上がり、何事も無かった様な顔をして。


「構わない、酒も、肴もまだあるので、遠慮せずにやってくれ」


「ご心配なく、酒も肴も、用意してありますぜ。宜しかったら、みなさんもどうぞ」


 こうして、お花見の第2回戦が始まった。


「命拾いしたわね、FUN」


 そう言って、リーフリットは、メイドたち方に戻って行った。

 この後半戦は、リーフリットの御機嫌取りに、全力を傾けようと誓う。

 情けないと、笑わば笑え、俺にとっては、死活問題だ。



「奥様、ワインにございます」


 俺は、リーフリットにワインを差し出す。


 下にぃ~♪下に♪♪、下にぃ~♪下に♪♪


 今は、小さなプライドに固執している場合では無い。


「何よ、気持ちが悪い」


 そう言って、ワインを受け取る。口元の笑みを確認。


 ヨシ、もう少しだ。


 そんな時、一人の領民が近づいて来て、


「領主様、この時期ならば、ここで宴会しても大丈夫なんですか」


「桜の咲く、今の時期ならば、構わない。火の始末をキチンとすることが、条件だが」


 思い出したように、付け加える。


「公園の桜の下でも、花見を許可しよう、但し火気厳禁だ。

 串焼きなどの屋台を出したい者は、届け出てもらえば、OKする。

 但し、火の始末だけは、キチンと行う事が条件になるが、

 後は、ゴミの持ち帰り、これは徹底する」


 これが元になって、桜の咲く時期に限って、花見の宴会が定番化した。


 流石に、朱雀大路の桜は、不許可だが。


 公園や河原は、この時期だけ、屋号付きの提灯で飾られ、夜桜を楽しむ事もできる。

 この時期、新人君の花見の場所取りは、春の風物詩となった。


 それから、寝室のベットは、ダブルサイズからキングサイズに変更された。

 夜の営みは、抜け駆けなしの3人一緒と、決まった。

 俺にとっては、嬉しい悲鳴だ。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

ブックマークの登録と

☆☆☆☆☆に、面白かったら★5つ、詰まらなかったら★1つ

頂けると、今後の励みになります。

この物語があなたのストレスを緩和する、清涼飲料と成ることを願って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ