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第23話 白亜の城 レプリカだって フルボカー

 街道の開通から1年が経過した。東海道もかつての賑わいを取り戻しつつある。


 村の誘致も順調で、目標の20を大きく上回って、現在73の村が点在する。

江戸時代の基準になるが、1万石で約15~16の村を統治していた。


 文殊の見立てでは、この領は17万石だという、それだとあと200は足りない訳だが、道半ばということだろう。

 この中から、村から町に発展するものが現れるだろう、実に楽しみだ。


 街道上の領都と3つの駅は評判も良く、利用者も増えて順調だ。

何より安心して、旅が出来るのが大きいらしい。


 他の領地では、駅の拡張工事も行われているらしい。

 うちもそろそろ駅の拡張を考えようと思う。


 どの駅が宿場町に発展するか、楽しみだ。





「そろそろ、良いと思うけどな」


 俺の呟きに、セドリックが反応した。


「何がですか」


「あっ~ごめん、そろそろお城を建てても、ひんしゅくは買わないと思ってね」


 溜息を付いて、セドリックが答える。


「また、莫大な費用が掛かりますよ」


「そうでもないだろう。材料は既に爆買いしてあるし、外観は俺のスキルで造るから、内装工事の費用だけだろう」


 また溜息のセドリック、言っても無駄だと悟ったようだ。


「それで、いつやるんですか?」


「それは、マリアンヌ嬢と打ち合わせをしてからかな。職人の手配もあるし」


 ルンルン気分の俺は、マリアンヌ嬢を呼び出すように、セドリックに指示した。




 

 待ちに待ったゼ、1週間。

 今日は、俺の城の築城の日だ。


 みんなには、一旦、外に出てもらい、領主邸をストレージに仕舞った。


『スキル創造』 俺が魔力を込めると、ストレージから必要な材料が出て、俺のイメージした形に変化してゆく。


 西洋のお城で、大好きな3つの内の1つ、チェコで最も美しいと称せられた。

『フルボカー城』の再現である。


 そのまま、持ってきたのでは、敷地の面積が、足りない。

 五稜郭は、五芒星の形をしているので、中央の使える敷地が多くない。

 こちらの建てたいのは、それなりの規模の西洋の城だ。


 函館の五稜郭は、全体で東京ドーム5つ分らしいが。

 函館と比べたら、うちの五稜郭は、3/5スケールだ。


 俺の中では、お城とお堀はセットだ。


 日本一美しいと思うお堀と、チェコで一番美しいと讃えられるお城の融合は、漢のロマンだ。


 文殊の解析能力を使い、部屋数を削り、高さ、幅も、奥行きも、この敷地に合う様に、削りまくって最適化される。


 とにかく見た目だけは、縮小版のフルボカー城の完成だ。

 勿論、時計台込みだ。


 小さくなっても、フルボカーは、フルボカーだ。

 重厚で、洗練された、シンプルな美は、少しも衰えない。


「随分と、趣味に走ったお城ですわね」


 呆気にとらわれた、これがマリアンヌ嬢の第一声。・・他に言い方あるだろうに。


「おとぎの国のお城みたい~♪」


 リーフリットの言葉に、俺、心の中でガッツポーズ。


「趣味の良いのは認めますが、こうなると内装が問題ですね」


 流石セドリック、その通り。


「絢爛豪華な方向でもイケルと思うのですが、やり過ぎると下品になりそうで怖いですね」


「豪華なのは、陳情を聞く謁見の間、王侯貴族を泊める客室、イベントで使うホールと、貴族クラスの来客用応接間ぐらいで、いいじゃないかな。

 俺は豪華よりシックの方が、どちらかと言うと好きだな」


「それと大浴場。これは、外せないわ」


「それなら露天風呂も付けたい」


 リーフリットの意見に、俺も賛同する。 風呂は日本人の心だ。


「取り合えず、建築家も交えて要相談ですね」とマリアンヌ嬢。


 俺は邪魔にならない場所に、今まで使っていた屋敷を取り出した。

 内装完成まで、ここで仮暮らしだ。




 

 1日にして、趣味の良い白亜の城ができたと云うニュースは、街道を巡り王都まで届いていた。


 その報を聞いた国王は、完成したら見てみたいものだと言い、大笑いしたと、伝えられる。


 その報を聞いて面白くない者もいる。

 カシム・フォン・アウゼンシュタトである。


 アキュフェースは、順調に領地の復興を果たしている。

 商会を立ち上げ、塩、活版印刷、一時は砂糖でも、莫大な利益を得ている。


 それに引き換え、自分の領地は遅々として、復興が進んでない。


 パウロは、無能ではないはずだ。


 しかし、村の誘致もなかなか上手くいかず、破壊された瓦礫の撤去も進んでいない。


 元々、財産放棄をした際、手切れ金、白金貨100枚(1億円)の金を渡され、黙っていれば、法衣の子爵辺りには成れる予定だった。


 故郷が魔物から解放されたと聞き、欲が出た。

 勇者にアルメニア州が渡るのが、不満な貴族が多数いた。

 それを後ろ盾に、横紙破りを演じ、アルメニア中部と東部を勝ち取った。

 しかし、後ろ盾の貴族たちの資金援助は、約束した割には、渋い。


 聞こえてくる話は、西アルメニアの驚異的な復興の早さのニュースばかりだ。

 街道の幅は拡げられ、綺麗に舗装されているとか、街道から見える限りの村が復興して、実り豊かな恩恵に浴しているとか、綺麗に区画整理された白亜の領都とか。


 まるで自分の事を、無能と嘲笑うように。


「随分とご機嫌斜めようですが、どうかしましたか?」


 シャーリーが声をかける。


「うるさい!放っといてくれ、今、考え事の最中だ」


「どーせ勇者の事なんでしょうけど。

 そんなに気になるのなら、領地へ赴いて陣頭指揮でも取ったらいかが」


 シャーリーは、魔族らしからぬ正論を述べた。


「領民と共に汗を流すなど、誇り高い貴族のするべき事ではない」


「貴族様だって、領地の視察くらいは、するでしょうに」


 シャーリーは、やれやれお手上げね、といったポーズをした。


「今の問題は資金難にある、これを打破するには・・・あっ、あった!!!」


 カシムは閃いた、関税を上げるのだ、西部の者どもだけ。

 身元は手形で確認すれば良い。

 3倍くらい上げても、ばちは当たるまい。


 関税を上げた処で、たいした収益には成らないが、西部の経済にダメージを加える事ができる。


 向こうも報復で上げてくるだろうが、他領からの行商人が、開拓村を廻るだけで、定住の商人はまだ少ない。


 今なら、最小限のダメージで、向こうの経済を混乱させられる。

 名案だとばかりに、早速、パウロに指示書を送る。

 逆に手痛い反撃を喰らうとも知らずに。





 それから2週間後、西アルメニアの商人を狙い撃ちにした、3倍の関税引き上げが行われた。

 商業ギルドマスターの陳情で、今回の事が明るみに出た。


「やってくれたな、カシム」俺、怒り心頭。


「完全に私たちを狙い撃ちですわ」マリアンヌ嬢もお怒りだ。


「打つ手は無いの?」と、リーフリット。


「今、思い付くのは2つだな」と俺。


「何でも良いから、言っちゃえば」無責任にアイシャ。


「1つ目は、俺が転移魔法で、カシム領の隣のシュライト子爵の関所まで送り届ける。


 もう1つは、王都までの運送を、他領の運送業者を雇って、代行運送してもらう」


「現実的には、2つ目何でしょうが、運送費用を考えると、関税より高くつきませんか?」


 マリアンヌ嬢の御指摘、ごもっとも。


「あ~ぁ、転移門みたいな物があればなぁ~」


 無い物ねだりの俺。


(告:素材があれば造り出せます)


「出来るの!!」


(できます)


 俺は言われるままに、1対の転移門を完成させた。

 転移門をストレージに仕舞うと、シュライト子爵のもとへ、挨拶に出掛けた。






「どうして、こうなるのだぁ~」


 カシムはパウロからの手紙を握り潰して怒鳴る。


 パウロからの報告では、自領に人が誰も通らなくなった、と書かれていた。

 パウロの推察では、勇者の転移魔法で、シュライト子爵領とアルメニア伯爵領を行き来しているのではないか。


 アルメニア伯に詫び状と関税の引き下げをお願い致します。

 開拓村に行商人すら来なくなって、色々と困窮しているとも書かれていた。

 カシムは、苦虫を嚙み潰したような表情で、パウロの願いに応えた。





 アウゼンシュタト家の家令パウロは、アルメニア伯爵領の領都、リーフリンクの領主邸の応接室に通されていた。


「この度は、アルメニア伯爵に多大なご迷惑を掛け、誠にお詫びの仕様がありません。

 誠に申し訳ありませんでした。

 これは、主から・・」


 そう言って、謝罪の手紙とお金の入った袋を差し出した。


「謝罪は受け取ろう、しかしこれは受け取れない」


 そう言って、お金の袋は返却した。


「そして、これを」


 俺はストレージから、白金貨100枚(1億円)の入った袋を差し出した。


「少なくて申し訳ないが、受け取ってくれ」


 行き成りの申し出に、戸惑っている様だ。


「カシム本人には、言いたい事が山ほどある。

 しかしそれは、領民には関係のない話だから、復興費用に充ててくれ」


 得心がいったようで、素直に受け取った。


「しかし、カシムの奴、東部を手放す気は無いのかね」


 ぶっちゃけ、10年という期間がある以上、ハッキリ言って東部は邪魔だ。


 国王は、10年で復興できないと踏んで、本来なら中部だけで良かったものを、わざわざ東部まで付けて、爵位は騎士爵のまま、最初から取り上げる気満々だ。

 カシムの生き残る道は、東部を手放して中部のみに集中する事だ。

 資金も人手も無い状態で、生き残りを目指すなら、これしかない。


「お心遣いには感謝しますが、恐らく手放す事は無いでしょう」


「なかなか難儀だな」


「仕方ありませんね」


「パウロと云ったか、なかなか優秀そうだ。うちに来ないか?」


「名誉な申し出ではありますが、私は先代様よりご恩を受けております。

 ご恩をお返しするまでは、二君に仕える気はございません」


「それはまた、難儀な話だな」


「左様ですな、あれが噂の白亜の城ですか、一見無骨に見えて何とも言えない美しさがある。

 この国で最も美しい名城かもしれませんな」


 そう言って立ち上がると、俺たちは別れの握手をした。 

  

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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この物語があなたのストレスを緩和する、清涼飲料と成ることを願って。

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