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第20話 活版印刷、エロと腐海

 王都の裏路地、貧民街の一角に闇組織のアジトがある。


 闇組織と言われても、ピンとこないと思う、マフィアのアジトと言い換えれば判るだろうか?


 この王都で中堅処のマフィアのアジトが、僅か4人の男女に急襲を受けていた。

 床には、戦闘不能の構成員たちが、そこら中に転がっている。

 急襲した男女4人は、唯一意識のあるマフィアのボスを、取り囲んでいた。

 取り囲まれたボスは、怯えていても、精一杯の虚勢を張って、


「貴様ら、ここが何処だか判っているんだろうな。

 貴様ら、今日、この日の事を、きっと後悔させてやるからな」


 闇組織のボス、お決まりのセリフを言い放つ。

 シャーリーの足が、闇組織のボスの顔を踏んずける。


「なぁ~に、勘違いしているのぉ~。

 私たち、色々と面白い目に遭ったからぁ~」


 シャーリー、靴を左右に振る。


「これは、ただのお礼参りよ」


 更に踏みつける。


「わぁ判った!!命だけは助けてくれ!!!」


 足を振り払い、土下座をして許しを請う。

 土下座した背中を、靴で踏みつけこう続ける。


「どう、落とし前を付けてくれるのかしら?」


 シャーリーは、面白そうに詰問する。


「傘下に、傘下に入る!!だから、命だけは・・」


 シャーリー、更に踏みつけ。


「それだけぇ~」


「わ、判った、悪かったから、俺の知っている事、全て話す!!」


「FUN 最初からそうしてれば良いのよ」


 シャーリーは足を外す。


「で、これの事なんだけど」


 シャーリーは、小型のパラボラアンテナの付いた銃と、金色の針を見せる。


「じゃあ、色々と、聞かせて貰うわよ」


 分かった事は、2つだけ。

 これを造っている組織が、名さえも判らない正体不明の組織である事。

 月に1度、売人らしき男が、接触してくる事だけだ。


「じゃあ、その売人とやらに、渡りをつけて貰えないかしら」


「わ、分かりました。仰せの通りに致します」


 闇組織のボスは、土下座のまま了承した。


「オッと♪忘れていたわ」


 そう言うとシャーリーは、手にした銃を闇組織のボスの首筋に当て、引き金を引いた。


「これで、もう、裏切れないからね♪♪」


 土下座のままの闇組織のボスは、頭を床に擦り付け


「仰せのままに、従います」と述べた。


 それから2週間ほど後に、売人との接触の報を聞きつけ、その場に駆け付け、その場で売人を拘束した。


 王都郊外にある、打ち捨てられた神殿に案内された。


 闇夜から月明りが照らし出され、神殿内で待っていた、3人の男たちを照らし出す。


 シャーリーには、その中の一人に見覚えがあった。


「へぇ~、驚いた、あんたが黒幕だったとは」


 シャーリーは、あり得ない人物にこう告げる。


「黒幕とは、光栄だ。招かれざるお客人。偉大なる『あのお方』を差し置いて、黒幕などと」


「そう言うなよ。私たちは、話し合いに来ただけさぁ、〇▲×★殿」


 そうシャーリーは、切り出した。







 第2回勇者式BOOTCAMPも無事終わり、アキュフェースは領都リーフリンクに帰還した。


 今回の参加者は、衛兵40名+アイシャ、全員、大きな怪我も無く、2つのスキルマスターとレベル40越えは、充分な成果といえる。


 期間中、妙にアイシャがベタベタと懐いてきて『俺って、エルフにモテる』のかもと、勘違いしそうな勢いだった。


 リーフリットの顔が、頭に浮かんで来なかったら『危なかった』と、自分でも思う。



 引率期間中にある事を閃いて、帰ったら早速造ってみようと、思っていたものを造ってみる。


「何を造っているの?」


 リーフリットが尋ねてきた。珍しくマリアンヌ嬢と一緒だ。


「何って、活版印刷の試作機」


「それじゃあ、本をだせるのぉ~♪♪」


 リーフリットの喰いつき良い。


「それは? どうなって、いますの?」


 マリアンヌ嬢も興味津々だ。


 この世界の本は、基本、写本か木工印刷だ。


 木工印刷の場合、1枚の板に、1ページの全文を彫るので、1文字でも間違えると、最初からやり直しだ。


 だから、中世の本は、とても高価なのだ。


 俺の試作した活版印刷機は、1445年にヨハネス・グーデンベルグが造った物と、大して変わらない。


 1文字1文字を判子にしただけの、シンプルな物だ。

 縦横5ミリ、柄の長さ3センチほどの大きさの判子に、1文字。

 それを、この世界の言語で使われている32文字を、多数造る。


 それだけだと意味が無いので、木の枠を用意して、文字を上にして置いてゆく。

 1行1行にサポートの薄い板を置き、判子が倒れないようにする。


 文章が終わり、空白になった部分は、縦横の規格は一緒でも柄の長さが短い物で埋める。


 1ページ分の文章が書けたら、インクを浸したローラーでインクを付け、紙を置いて軽く擦るだけの、単純な木工印刷だ。


 何回でも使えて、誤字にも、新しい文章にも対応できる、この時代なら革新的な物だ。


 刷り上がった物を見て、マリアンヌ嬢の目の色が変わった。


「これは、神殿に行って、商業神に登録しましょう」


 マリアンヌ嬢、鼻息が荒い。


「売り込むのなら、植字を鉛に変えてくれ。その方が耐久力が増す」


 マリアンヌ嬢の話によれば、商業神に登録されれば、今後3年間、同じものの作成は出来なくなるらしい。


 言われるまま西口の神殿に行き、意表登録を済ませた。


 この後のマリアンヌ嬢の行動力は、素晴らしい、の一言に尽きる。


 王宮に出向き、活版印刷の有用性を説き、契約を取り付けた。


 今度は、テニオン神国の聖宮を訪れ、経典の布教に効果があると説き、販売契約を取り付ける。


 まさに、三面六臂さんめんろっぴの大活躍だ。


 その頃、俺たちは、というと、夫婦喧嘩の真っ最中だった。


 切っ掛けは、くだらないこと、しかし、極めて重大な問題だ。


 喧嘩になったのは、リーフリットの一言に始まる。


 俺が活版印刷を造った事で、リーフリットは、浮かれていた。


「男同士の友情、忠臣、腹心、下剋上、両刀で攻め一筋もいいわね・・萌えるわぁ~」


 俺は、不穏なキーワードに、ギョとして、尋ねた。


「もしかしてリーフ・・・おまえ、腐った女子の方?」


 間違いであって欲しい、そんな想いを、リーフの一言で無惨に打ち砕かれた。


「私、前世で同人誌で執筆していたの。同人誌即売会・・懐かしいわぁ」


 まさかの腐海、まさかのカミングアウトだった。


 俺も人の事は言えない。


 元々エロ文学を、志を同じくする仲間たちと堪能する為に、あったら便利と云う発想で、活版印刷の再現をしたのだ。


 男女の絡みは正常であっても、男同士は気持ちが悪いだけだ。


「リーフ、男の良さを骨の髄まで味合わせて、その腐った思考、跡形も無く打ち砕いてみせる」


 決意を持って、リーフの手を取ろうとしたが振り払われた。


「いやよ、これはこれ、それはそれ、私にとっては、生きる糧、私にとっては別腹だわ」


「そんなこと言ってるから、頭が腐るんだ」


「添い遂げられない切なさ、男同士の切ない友情、これは芸術だわ」


「何が芸術だ、汚らわしい!!! そんなに言うのなら、俺もレズ物、書いてやる」


「やめてよ!!! しゃら汚いィ!!!」


「可笑しいだろ、それ、何で男同士が良くて、女同士は汚いんだ」


「とにかく、女同士は汚いのぉ!!」


「俺にとっては、男同士の方がしゃら汚いね。

 美人同士が絡む方が、絵になるし、何と云っても芸術だ」


 これが原因で、喧嘩を始めて1週間、まともに口をきいていない。

 当然、寝室も、今は別だ。


 今回ばかりは、俺も折れる気は無い。

 妻を真っ当な道へ戻せるか、どうかの瀬戸際だ。


「いい加減、仲直りしたら、どうですか?」


 セドリック、気を使ってくれてありがとう。

 しかし、今回限りは、折れたらいけない気がするんだ。

 俺たちが喧嘩しているので、メイドたちの様子も余所余所しい。


 気を使わせているなぁ、みんな、ほんと、ごめん。

 こればかりは、どんな結果になっても引いてはいけないんだ。

 最悪の結末まで、覚悟した。

 しかし意外なことに、折れてきたのはリーフリットの方だった。


「私も少し大人気なかった、反省しているわ。

 私自身は、もう二度とBL物を書かないと誓うわ」


「判ってくれて、嬉しいよ。俺もレズ物は、書かないと誓う」


 こうして俺たちは、仲直りを果たした。


 一時はどうなる事かと思ったけど、何とかなって、本当に良かった。


 しかし悪いなリーフ♪♪


 俺が誓ったのは、レズ物を書かないと誓っただけで、男女の絡みを書かないと、一言も言っていない、これから同志を集めて、どんなモノを書こうかと、俺の頭の中は一杯だ。


 俺は基本、凌辱物は嫌いだ。最初、興味本位で読んでも、途中から胸糞悪くなって、最後まで読めたためしがない。


 やはり、ここは和淫物か、幼馴染は鉄板で、姉と弟、兄と妹、世間の目と添い遂げられない切なさ全面押しで、教師と生徒の禁断の愛、これもアリ、冒険の途中で知り合って恋に落ちる、俺とリーフみたいで照れるが、王道の展開アリだ。


 エルフや獣人、獣人と云っても、耳だけ動物の耳だけで、他は人間と変わらない、当然、アリだ。


 亜人差別が無くなる、一助と成れれば良いけど。

 ほんと、夢は広がるなぁ~♪♪


 ただ、この手の風紀の取り締まりは、当然あるので、小規模で、なるべく仲間内で収めた方が良い、取り締まりに、王宮騎士団に出張られては、目も当てられないからだ。





「良いお願いね、ベネッサ。BLの未来は、貴女の双肩に掛かっているわ。

 私は、旦那様との約束で、二度と書けなくなってしまったから。

 勿論、編集長として、アドバイスはするわ」


 リーフリットは、ベネッサの両肩に手を置いて頼む。


「お任せください。お方様、このベネッサ、必ず、ご期待に沿えってみせますわ」


「意見具申よろしいでしょうか」


「どうぞマリー」


「私が昔仕えたお屋敷のお嬢様、その方でしたら、この芸術に理解がオアリと思いますが。

 その方に、作品を贈呈してみたらいががでしょう。 

 きっと、悪い方向には行かないと思いますが」


「良い案ね、感謝するわ。その辺りはマリー貴女に任せるわ」


「あの、お方様、御屋形様とナイトハルト様は、やはり、いけないのでしょうか」


 ベネッサが質問する。


「ダメよ、誰が書いたか、すぐにバレルじゃない」


「良いネタなのに、惜しいですわ」


 マリーは、悔しがる。


 俺はこの時、腐海が徐々に広がっている事に、全く気付いていなかった。

 皮肉な事に、急速な活版印刷の普及と共に、ねずみ算式の広がりをみせるのだ。

      

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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この物語があなたのストレスを緩和する、清涼飲料と成ることを願って。

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