第19話 ハンバーグ先生、異世界でも無双
新しく商会を興して、滑り出し順調。
職人街、商店街の誘致も順調、東区、西区に1町分のスペースを、フリーマーケットの場として『東の市』『西の市』として設け、毎週、週末2日間の開催ときまった。
一部の商店主から、ブーイングが出たが概ね好感触だ。
商店街の店主は、週末は東西の市で稼ごうと意気込む。
参加者たちは、少しでもいい場所が欲しくて、場所取りで揉めた。
東西の市の取り纏めを、商業ギルドに委託してた。
結果、場所決めは『クジ引き』となった。
「これだけお店も集まるのなら、お米、醤油、味噌も何処かに売ってないかしら」
リーフリットが夢を語る。
「それは無理だと思いますわ」
痛恨の一撃で、夢を打ち砕くマリアンヌ。
「そもそもそれは、東方交易品で滅多に出回りませんわ」
「でも、金さえ有れば、買えるわけか」と俺。
「それより、作れないの?」とリーフリット。
「味噌と醤油なら、どちらも、1つだけ材料が足りない」
「それは?」とリーフリット。
「種麴。味噌に関しては、麦麹で良いんだが、麹の作り方、解るか?」
「・・・お手上げじゃない」とリーフリット嘆く。
「マリアンヌ嬢、ハロルドさんの処で買う事はできるか?」
「時間が掛かっても良いのなら」
「OK、早速、ハロルドさんの処に注文してくる」
転移しようとしたら、マリアンヌ嬢にいきなり腕を掴まれた。
「私を差し置いて、それはないんじゃありませんか?」
「出来るの、輸入?」
「出来る出来ないの問題ではありませんわ。
利益を他の商会に渡すほど、善人には出来ていませんわ。
それで、どの位ご入り用ですの」
「お米は、最低でも1俵は欲しいかな。醬油、味噌も最低1樽は欲しい」
「お米1俵は多くない?」と、リーフリット。
「多くないよ。少ないくらいだ。
お米1俵60キロだ。大人一人分、1年分しか無い。
二人で、半年分だ」
「でも悪くならない?」と、リーフリット。
普通ならコクゾウムシが沸いて、大惨事だ。
「ストレージに仕舞う。問題ない。
出来れば、種もみも頼めるか? 出来れば領で栽培したい」
マリアンヌは溜息をついて
「承りましたわ、お時間は少々頂きますが」
「仔細任せた、よろしく頼む」
「アルメニア商会の名に懸けて、輸入してご覧に居れますわ」
うるち米なんて贅沢は言わない、長米でも可だ。
でもやっぱり、うるち米の方がいいな♪♪
日本人の米に対する執念は凄い。
パブルの頃の米の2大ブランド「こしひかり」と「ササニシキ」
2大ブランドの一角も、今ではササニシキは、標準米の扱いだそうだ。
米の銘柄も増えて、最近見ないなと思っていたら、これかぁ~
そう云えば、ワンコインで食べられる大衆食堂で、
偉く高い米を仕入れているのに、驚いて聞いたら、
おかずの誤魔化しはできても、米の誤魔化しは出来ないそうだ。
米の質を落とすと、1発でお客が去るそうだ。
日本人の米に対する執念、怖ぁぁッ。
これだけ、米に執念燃やしてるのに、
米の消費量が減ったので、減反政策って、謎だよね。
そんな話をしていたせいか、リーフリットがいきなり
「ハンバーグが食べたい」と言ってきた。
考えてみれば、領主邸に移ってから、料理、そのものをしていない。
「じゃあ、タマにはやるか」
ストレージから、挽肉を挽く機械をだす。
手動式だが、外刃と内刃を標準と荒挽用で迷ったので
「リーフ、肉は荒挽きと細挽き、どちらが良いの?」
「荒挽きがいいわ。」リーフリット、即答。
「肉は、合挽と牛オンリーとどちらが良い」
「どちらでも良いけど・・牛挽きでお願い」
いつの間にか、料理長、メイドのみなさん、アイシャまで参加していた。
俺は玉葱のみじん切りを頼む。
アイシャの手つきを見ていると、危なっかしい、玉葱のスジに沿って切ろうとしていたので、俺は、STOPをかけた。
「玉葱のみじん切りをする場合、最初は玉葱のスジに直角に切った方が楽だ」
よくTVの料理番組で、縦横に包丁を入れて切るシーンがあるが、少ない量なら良いが、量を切るのなら、この方法の方が楽。
切り終えた玉葱の向きを変えて切れば、みじん切りはできる。
この状態では粗みじんなので、包丁で好みの細かさまで、叩き切りにすれば良い。
叩き切りは、包丁の刃先を支点にして、テコの要領で柄を上下させる。
最初は平行に叩いて、次は垂直に叩くのを、繰り返す感じで。
玉葱を炒めてもらって、透き通ったら火を止めて、粗熱を取る。
家庭料理なので、玉葱をきつね色なんて言わない。
つなぎのパン粉を少量のミルクに浸す。
全ての具材をボールに入れて、塩、胡椒、卵。
ナツメグもあったら良かったが無いのでパス。
粘りが出るまでこねたら、手に油を塗ったら、適当な大きさにして、両手でキャッチボール。
充分空気を抜いたら、形を整えて焼くだけだ。
中火で両面焼いて、焼き色が付いたら、弱火で蓋をして15~20分ぐらい。
串を入れて肉汁が透き通っていたら、完成。
定番の残った油とケチャプ、ソースでと思ったが、ケチャプもソースも無い。
それならと、スライスしたニンニクを残った油に入れて、醤油を足して、火を止める直前にレモン汁を1/6分絞れば・・そもそも醤油が無かった。
如何した物かと思っていると、デミグラスソース、発見。
ナイス!!!料理長。
何とか、デミグラスハンバーグは、完成した。
誰でも1度は作った事のある料理を、偉そうに語れるのは、異世界物の特権かもしれない。
「懐かしい~♪柔らかいのに歯応えがあって、ジューシー♪♪」
アイシャ絶賛。
「合挽なら細挽きにしたんだけど、そっちの方がもっと、柔らかく出来るかな」
「これでも、充分柔らかいですわ」マーサメイド長も気に入ったようだ。
「これよ、これ!!ずっと食べたかったわぁ~♪♪」
リーフリットは、テンション高めのオーバーリアクションで喜ぶ。
超ご機嫌のリーフリットから、リクエスト、ひとつ。
「今度はチーズを入れてね♪」
リーフリットのリクエスト、頂きました。
「醤油が手に入ったら、大根おろしと大葉で食べたい」と俺。
「これを宿屋に教えて、アルメニアの名物料理にしたらどうですか?」
セドリック褒めすぎ。
「でも、これ十分、商売になりますわ」
マリアンヌ様は、斯く宣える。
やはり、ハンバーグ先生は、異世界でも十分通用する様だ。
残ったタネで、メンチカツを揚げてみた。
やはり、旨い。
それよりも、この世界にフライ料理が無い様で、大変驚かれた。
結局、異世界料理の講習会を開く事になった。
米、味噌、醤油のない状況では、できるのは、洋食由来の物に限られるが。
正直、良いのかな? って気持ちはある。プロじゃ無いからね。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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この物語があなたのストレスを緩和する、清涼飲料と成ることを願って。




