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第17話 塩田でひと儲け♪♪

「そろそろ、漁村の復興に手を掛けては如何いかがですか?」


 執事のセドリックに、そう提案された。


 正直、漁村は港も無事だし、漁船と仮設住宅を揃えれば、いつでも出来ると思っている。


 その為農村の方が優先順位が高かったのだ。


 特に街道沿いの農村の復興は、急務だ。

 街道沿いの農村は、云わば『撒き餌』だ。


 ここは、王国第1の街道だ。

 人や物だけで無く、噂話という情報も飛び交う。


 街道開通から1年も経たずに、街道から見える範囲が、目に見える形で復興していたと、したら?


 農民が、僅か1年で豊かな実りを享受していたら?


 最初は与太話と流していた人が、別の人間から3度同じ話を聞いたとしたら?

 それを真実と思うだろう。


 そうなれば、家を継げない農家の次男三男、税金の重い地域の住民は?それにアルメニア州封鎖の際に、難民となった者たちもいるはずだ。


 故郷が復興の途にある、そんな噂話を聞いたら、噂を希望に、この地を目指すと踏んでいる。


 そうなれば、村の10や20、復興するのも時間の問題なのだ。


 そんな思いがあったので、漁村の方は後回しになっていた。


「漁村かぁ~、取り敢えず、商業ギルドに行って、村民の募集、漁船と仮設住宅の手配を頼めるか?」


「承りました。早速行って参ります」


 そういって、セドリックは退出した。


「さかなかぁ~、新鮮なお魚、食べたいわね」


 リーフリットは無邪気に言う。


「私は生臭くって苦手かな」アイシャは、魚が苦手らしい。


「しかし、米も醤油も味噌もない状態で、魚は辛いよな」と俺。


 米がない現状、しかも、醤油も味噌もない、かつお節すらないのだ。

 純和食の魚料理を作っても、虚しいだけだ。

 だから、封印している想いでもある。


 リーフリットに作る、日本料理も洋食由来の物ばかりだ。




 領都の南門から道沿いに歩くと、討ち捨てられた漁村がある。

 建物と漁船が、全半壊しているだけで、漁港は無事だ。


「これなら、すぐに漁の再開は見込めるな」


「魚も良いけど、蟹や海老、牡蠣なんかも食べたいかも」


 リーフリットは、期待に胸を弾ませている。


「養殖出来たら良いけどね」


 牡蠣を養殖しました、コケました、では笑えない。

 まだ、需要が未知数なのだ。


 それより、海を見ていて、気になる点は。


「ここって、塩、取れないのかな」


「出来ない事も無いと思いますが」セドリックが答える。


「海水を煮込めば良いじゃないの」


 言うと思った。


「それだと量は取れないし、何より薪代が莫迦にならない」


「じゃあ、天日干し」


「確かにやってる処はある。

 でもここじゃ無理、雨に降られたら、一発で終わる」


『天日塩田』の条件は、海沿いの砂漠である事が絶対に、必要。


「現実的には『揚浜式塩田』、条件が合えば『入浜式塩田』何だろうけど・・」


「それは何ですか?」とセドリックが聞いてくる。


「昔ながらの方法」


 俺は簡単に解説を始める。


『揚浜式塩田』


 まず、盛土の上に海水が染み込まない様に、厚さ10cmくらいの粘土なので防水対策をする。

 その上に粒子の細かい砂を敷き詰める。

 塩砂の上に海水を一定以上撒き、頻繁にかき混ぜながら、天日と風で十分に乾かす。

 塩砂を掻き集めて、海水で洗う事で出来る『鹹水かんすい』を、製塩釜で煮詰めて結晶化する。

 勿論、砂はろ過して、取り除くけど。



「まあ、古典的な方法だけどね」


「でも、簡単に出来そうね」とリーフリット。


「とんでもない重労働だけどね。

 砂浜で歩くのは、土の上を歩くより、体力を2倍3倍消費する。

 桶を持って、波打ち際から塩田まで何往復すれば良い?」


 実際、バレーボールの強豪校で、新入部員にビーチバレーをやらせる処もあるらしい。

 砂浜の上では、体力は削られて、体は思う様に動かない。

 体育館で、当たり前に出来たことが、ここでは出来ない。

 その状態で、体幹と基礎体力を徹底的に鍛えるらしい。


 その話を聞いた時、実に理に適うと思っていたが、これが労働となると別の問題。



「そういわれると、そうだけど」


 リーフリットは、言葉を詰まらせる。


「しかし、我が領の貴重な財源になる事は確かです」


 セドリックは乗る気だ。


 赤穂浪士の討ち入りで有名な、赤穂藩5万石だって、財政再建を『赤穂塩』で果たしてた。

 財政再建を果たした藩主は2代目で、内匠頭は3代目になる。

 そう云えば吉良の領地も、良質な塩がとれる処だったような・・気がする。

 案外、松の廊下も塩の利権絡みだったりして・・??


 この国は領土の半分は海に面している。

 そんな処へ、塩を売っても二束三文だ。

 

 しかし、海のない領地や内陸の国では、塩は高値で取引される。

 塩を売るなら、内陸の国々がメインターゲットだ。



「ねえ、ここの満潮干潮の落差って、どの位?」


 いきなりの俺の質問に困惑する二人。


「満潮干潮の落差が大きければ、満潮時に塩田に海水を引き込めるだろう」


「それは良い案に思えますが、正直、分かりません。 調査なさいますか?」


「いや良いよ、『入り浜式』の条件が厳しいのは解っているから」 


『入り浜式塩田』のプロセスは揚浜式塩田とほぼ一緒。


 違うのは、潮の満ち欠けを利用して、人への負担を少なくしている事。


 瀬戸内側の中国地方、四国、和歌山が『十州塩』として、入り浜式塩田で、良質な塩を生産したので、有名。


 入り浜式塩田は、満潮干潮の潮の満ち欠けが、大きくないと成立しない。 


「あとは、流下式ぐらいか」


「それは、何なの?」俺の呟きに、リーフリットが反応する。


「これは昭和46年まで、行われた方法で、口では説明しづらいから・・」


 そう言って、地面に絵を描きながら説明した。


『流下式塩田』

 

 塩砂の代わりに『枝条架しじょうか』を使う。


 コンクリートとビニールで防水され、緩やかな斜面を付けた『鹹水槽かんすいそう』に、ポンプを利用して、1ヘクタール当たり60~150キロリットルの海水を汲み上げ、日光に当てながら塩分濃度を高める。


 1回では濃度は高くないので、それを2~3回繰り返す。


 枝条架しじょうかとは、竹やビニールを幾重にもまとめ、ほうきのような枝状のような形をしている。


 鹹水槽かんすいそうの上に、三段式の物干し台を設置して、物干し竿に枝条架しじょうかを次々と架けてゆく。


 枝条架しじょうかの上から海水を掛け、付着した海水を、天日や風に当てて、水分を蒸発させて、下の鹹水槽かんすいそうに貯める。


 再度汲み上げ、枝条架しじょうかに散布する。


 この作業を繰り返して、一定の濃度になったら、鹹水かんすいを煮詰めて製塩する。


「~~以上が流下式塩田法だ」


 一応、俺の説明は終わる、聞きなれない単語とイメージしづらい光景。

 上手く伝わったか、疑問だ。


「解った様なわからないような、変な感じ」リーフリットの素直な感想。


 やっぱり、Na。


「話を聞いた限り、これが一番よさそうですね」セドリックは賛同の意を伝える。


「しかし、これには、大きな問題がある。

 防水用のビニールと枝条架しじょうかで使う『竹』がない」


「代替品を思い付かないの?」


「思い付かないから、困っている」


 リーフリットの問いに答える。


枝条架しじょうかの代わりに『昆布』は?」


「昆布で鹹水かんすいを造る方法は、弥生時代から平安時代まで行われていた方法だ」


「冗談のつもりだったのに・・それで、出来そうなの?」


「解らない。試してないしね」


 煮詰まっている様子を見て。


「そろそろ屋敷に戻りませんか?」とセドリックは提案した。


「風も強くなってきてるし、帰るか」


 俺たちは、転移で屋敷に戻った。



 屋敷に戻った俺たちは、夕食を済ませると、早速昼の件を話し合った。


 俺とセドリック、リーフリットに何故かアイシャまで加わった。


「現実的には、流下式塩田を押します。枝条架しじょうかの代用品を探せば、何とかなります」


 セドリックが熱く語る。


「ポンプなら、手押しポンプで良ければすぐに造れる。

 ホースも消防団の使うような布製なら、イケルだろう。しかしなぁ~」


「何よ、煮え切らないわね」とリーフリット。


「その代用品が問題なの」


「いっその事、天日干しは? 雨なら屋根付ければいいじゃん!」


 アイシャの無責任な発言。


「あのなぁ、天日干しに屋根って・・・アッ!!イケルかも」


 俺は閃いた。


「天日採塩法(天日塩田)を、温室で行うのはどうだろう」


 勿論、大規模な温室に暴風対策に高潮・津波対策とやることが多いが、イケそうな気がした。

 ポンプで海水を引き込む以上、浜辺に拘る必要はない。

 暴風対策・津波対策をして、安全な場所で作業が出来る。

 勿論、温室には『硬化魔法』を掛ければ、小石程度の飛来物なら、どうとでもなる。


「温室を使った天日採塩法でいく。

 それから、セドリック、流下式塩田法も試したいから、

 引き続き、枝条架しじょうかの代用品探し、頼んで良いか?」


 セドリックは、溜息を付いて


「承りました、物が物ですので、お時間を頂けますか?」


「OK、判ったよ、じゃあ、よろしく頼む」


 我が領にとって、大きな資金源となる事業が始まった。

 

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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この物語があなたのストレスを緩和する、清涼飲料と成ることを願って。

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