第15話 出涸らし王子の全国漫遊記 ①
ファルムス王国のゲスタック伯爵領、領都ゲスタックの領主邸で、アルフォンス・ゲスタックは、不機嫌の極みにいた。
せっかくのダークエルフを取り逃がして、ご機嫌斜めだ。
西大陸では、奴隷の売買を禁止している国は多い。
ファルムスとて、その1国だ。
しかし、抜け道ならいくらでもあるのだ。
自分に亜人趣味はないが、好事家は多くいる。
まさにダークエルフは、生きた金塊だったのだ。
「この役立たずども、どのツラ下げて帰ってきたか」
「シスアの森に入ったとの情報もございます。
追わせた者たちも、未だ帰還してはおりません。
もう魔物の餌になったものと、推察致します」
「それは、余りにも、余りにも惜しいぞ」
「ダークエルフは、惜しゅうございました。
しかし今回は、近隣の町や村から、綺麗処を多数攫って参りました。
決して伯爵の損には、ならぬかと」
「口では無く、結果で示すが良い」
「ご心配には及びません。手筈はいつも通りに、無事取引が終わりましたら、代金はいつも通り『黄金色のお茶菓子』にで」
「まあ良いわ、相変わらず、そちは喰えぬな」
「恐れ入ります。まだまだ伯爵様には及びません」
「「わぁははは」」
悪徳奴隷商人と伯爵の心暖まる会話は続いた。
「で、君は『アイシャ』って、言うのかい」
シスアの森でレベリングを終えたアキュフェースは、ファルムス王に挨拶を済ませ、西アルメニアの領都リーフリンクに帰還した。
今は、助けたダークエルフに、事情を聞いている処だった。
メイドのマリーから、紅茶を出されひと息つく。
本当はコーヒー党なのだが、この世界に無い物を言っても始まらない。
「何で、中央大陸にしか居ない、あなたがここに居るのかしら」
隣に座るリーフリットが尋ねる。
「余りにも里が退屈だったので、飛び出して来たの」
その言葉に、心当たりのある隣の女。
「でもここ、良い処だね。ボクなんか凄く落ち着く」
アイシャは、笑顔で答える。
それは、精霊樹の若木のせいだろう、まだ若木の為、認識阻害と不用意に近づかない様に、人避けの結界を張って保護してある。
「それで、何で奴隷商なんかに追われていたんだ?」
俺は話を元に戻す。
「お世話になった村が襲われたの」
「領主は、何もしなかったのかい」
「しないと思う。
だって『泣き叫んでも無駄だ。俺たちの後ろには伯爵様がいる』って」
「それはまた、微妙なラインですね。嘘とも本当とも言える」
セドリックが唸る。
「それは他にも捕まっている、という事か?」
俺が尋ねる。
「うん、私は隙を見て、逃げ出して来たけど」
「ファルムス王に連絡だけでもしておくか」
「えぇっ、助けてくれないの?」
「他国の貴族が、勝手に首を突っ込む訳にもいかないだろう」
俺は立ち上がると
「陛下に、ファルムス王国行きの許可を貰ってくる」
「宮仕えも大変ね」
何故かリーフリットの言葉が、皮肉に聞こえる。
俺は、王都に転移した。
結果だけ言えば、ファルムス王国行きの許可はあっさり下りた。
ついでに言えば、ファルス王国への協力と例の『金の成る針』の調査だ。
『王の目』機関から、サーラさんが出向してきた。
サーラさんの任務って、『金の成る針』の調査が主な任務。
奴隷売買に関しては、可能な限り。
それと絶対、俺たちのお目付け役兼ねてるよね。
という訳で、俺たちはファルムス王宮の応接間にいる。
「何時ぞやは、お世話になりました。陛下」
「気にすることは無い。それで、今日の用向きは?」
ファルス王も笑顔で応じる。
いま迄の経緯を、順番に説明した。
「~~以上に成ります。
我が主君から奴隷売買の調査への協力と『金の成る針』の調査を依頼されています。
調査協力と御許可を頂きたく、参内致しました」
ここで主君エストニア国王の親書を手渡す。
「よもや我国で奴隷売買とは・・それから『金の成る針』と『世界友愛評議会』だったか、ふざけた話だ」
ファルムス王も流石に唸る。
「お話の村の場所からゲスタック伯爵が怪しいのですが、何分証拠がございません」
宰相が応じる。
「王さま、私が囮になるから、奴らを一網打尽に捕まえて」
アイシャが健気に申し出る。
「それだと奴隷商人だけで、ゲスタック伯爵までは、手は伸びないと思うけど」
俺は、余計な口を挟む。
「私もこの様な輩、許してはおけません」
この国の第2王子アレンまで、賛同の意を表す。
この言葉を聞いた瞬間、
頭の中にドラ〇エのオープニング・ファンファーレが響いた。
この王子、〇トの血でも引いてるの?
(アレン王子の鑑定)
レベル20、年齢16歳、称号は第2王子と騎士爵か。
「アルメニア伯、あまり乗る気で無い様だが、我が国へ力を貸してくれないだろうか?」
「元々、我が主君の勅、勿論否はございません。
しかしアレン様、これは令旨と捉えてよろしいでしょうか?」
俺はワザと意地の悪い言い方をした。
『令旨』とは、王子や皇太后・皇后などの三后が発する、
『勅令』の事を言う。
その重さは、国王の発する『勅令』と少しも変わらない。
発せられた以上『否』は無い。
そして、発した側も政治的に、矢面に立つ事を意味する。
例えば、「君側の奸を討て」と令旨を発した時などだ。
つまり、薄い同情では無く、あなたも矢面に立ちますか?と問うたのだ。
本来、他国の貴族の俺が、他国の王族の勅令を受ける義務なんてないけどね。
「令旨と来たか、悪くない。令旨で良い」
「しかと受け賜りました。では、王子、覚悟の程をお見せください。
王子を1週間ほどお借りします。
このままでは足手纏いなので、鍛え直して御覧に入れます。
それから、サーラさん、メイドとして、ゲスタック伯爵邸に潜入して貰えますか?」
これから、ゲスタック伯爵の奴隷売買の証拠集めと、王子のレベリングが始まった。
これだけ大ぴらに、幾つもの村や町を襲っているのだ。
外国に売り飛ばすと考えるより、
国内の何処かで、闇オークションが行われる方が自然な気がした。
俺の考えの裏付け、場所と日時、証拠品の押収など。
そして決戦の場には、全てを見届けたアレン王子が、居た方が良いと思ったから。
Xデーに向けて、俺たちは行動を開始した。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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この物語が、あなたのストレスを緩和する、清涼飲料と成ることを願って。




