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第14話 勇者式BOOTCAMP ②

「全く、冗談じゃないわよ」ジャンヌが愚痴る。


「まあそれでも、強くなったのは、間違いありませんし」ローザが宥める。


 アキュフェースが用意した簡易風呂で汗を流すふたり。


「あんた等まだマシだよ。うちら前衛職は、コレがないとヤッテラレナイ」


 アンナは、領都リーフリンクに来てから、大の風呂好きになった。

 それまで身を清めるのは、水浴びか、お湯で濡らしたタオルで拭くだけだった。

 領都に来てから大衆浴場を知り、すっかり風呂好きになった。

 毎日の事なので、1回、銅貨5枚(500円)は地味に痛いが。


「早く領都に戻って、大きな風呂に入りたいねぇ」


 アンナは本音が口から出た。


 BOOTCAMPから1週間。

 みんなのレベルも10~15上がり

 最初のジョブもマスターになり、2つ目のジョブにチャレンジ中だ。


 魔の森でのキャンプは、魔除けの結界が張られた為、魔物の襲来に怯える事はない。

 用意された天幕も、比較的広く簡易ベットも快適だ。


「でも、女の子のシックスパックは、どうかと思うわ」


 ローザが要らぬ事を言う。


「良いんだよ。私にはコレがある」


 推定D~Eのものを揺らす。持たざる者AとBはブーイングだ。


「いい加減、出てきてくれないかな」


 女の長風呂に待ちくたびれている、男衆代表の心情をアキュフェースは呟く。




 次の日、今日もレベリングは順調だ。

 レベル30を超えた辺りから、レベルアップのスピードは落ちたが、それでも、今日も1レベル上がった。


「順調、順調、この調子なら、1週間も掛らずに帰れるかな?」


 俺は、今日の成果に大満足だ。


(告:ここより北東、300mの距離。追われる者1、追う者3)


「もろに厄介こと、じゃないか!!

 アンナ、ジャン、トーマス、俺について来い!!」


 近くにいた3人を呼び寄せる。

 俺たちは、現場に急行した。


 現場に着くと、追われる褐色の少女と奴隷商らしき3人組。

 奴隷商らしき一人が、少女に追いつき、懐から銃らしき物を取り出し首筋につける、


 銃口には、パラボラアンテナに似た物、が装着されている。

 パスという発射音と共に、崩れ落ちる少女。


 カッと頭に血が上り、追ってきた3人を瞬殺、殺してない無力化しただけだ、

 倒れた少女を観て、俺は目を見張った。


「ダークエルフ・・・」


 銀髪のショートヘア

 肌の色は『小麦色に焼けた肌』という表現がしっくりくる。

 胸は推定Dのおわん型、すらっと伸びた長い脚と、小さく引き締まったお尻。

 健康的なスポーツ少女を、思わせる。


 見た目の歳は、リーフリットと変わらない気がした。


 奴隷商らしき3人を拘束して、これからドウシタものかと考えていると、ダークエルフの少女が、目を覚ました。


 目を覚ました少女に、いきなり襲われ首を絞められる。

 俺は拘束を解いて、少女に当て身をくらわす。


(告:延髄に針を確認、至急、摘出を依頼)


「で、文殊、方法は?」


(引き寄せ魔法、アポーツで可能、神経を傷めないように細心の注意を)


 こういう時に、カリオンが居たらなと思う。

 

 俺は万能では無いと自覚している。

 剣では、ナイトハルトに及ばないし、魔法では、カリオンに一歩譲る。

 回復魔法では、リーングランデに負け、隠密性では、ミツルギの方が1枚も2枚も上だ。

 精霊魔法に至っては、俺は完全に門外漢だ。


 全てをそつなくこなす優秀さはあるが、どれも極めてはいないようだ。


 今は俺しか居ない、泣き言も言えないので、俺は言われた通りに、魔法制御を最大にして、細心も注意を払いアポーツをかける。


 手の中に、小さな針が出現した。 この針で操られていたようだ。

 彼女の左の二の腕に『隷属紋』を発見した。


「文殊、これって解除できるか?」


(了:魔力を50貰い、解除作業に移ります。)


 右手を彼女の二の腕に振れる。淡い光を放ち、隷属紋は解除された。


 気になる事があったので、俺はミツルギに念話で連絡を取った。


 簡単に事情を説明すると、ミツルギが位置情報を要求してきたので、位置情報を渡すと、直ぐに転移してやってきた。


「ダークエルフとは、珍しいな。中央大陸にしか居ないと思ったが」


「奴らにでも連れて来られたんだろうさ」


「そうだな」とミツルギは答えた。


「処で、これが何だか解るか?」


 俺は、針と押収した銃を見せて尋ねた。


 カァと目を見開き、俺の肩を掴んで


「チョット、こっちに来い」


 ミツルギは、人気の無い方向へ俺を引っ張ってゆく。


「ここから話す事は他言無用だ。つまり、機密扱いの案件だ」


 俺は、唾を飲み込んだ。


「わかった」


「おまえ『金の成る針』という言葉を聞いた事がないか?」


「初めて聞くな」


「おまえの持っている針がそうだ。

 今、王都の闇組織の間で、蔓延しつつある。

 早い話が『洗脳針』だ。

 誰が何の目的で造ったのか、皆目分からない」


「それって、不味くないか?」


「確かにな、これの厄介なのは、脳や延髄に打ち込まれる為、魔法制御の未熟な者が取り出そうとすると、脳や神経を傷めて後遺症が残るのだ」


「マジかぁ、俺、さっき、やった」


(告、問題なく成功です)Thanks!! 文殊。


「続けるぞ、もう一つ厄介なのは、外見からでは判断が付かないことだ。

 明らかな奇行に及ぶまで、判断できないという訳だ。

 ただ、裏で糸を引いていると思われる、組織の名前だけ判明している。

『世界友愛評議会』と云うそうだ」


「何だ、そのフザケタ名前は」


「同感だ、組織の本拠地不明、構成員不明、どこに支部があるのかも、不明。分かっているのは、その、ふざけた名前だけだ」


「そいつは、厄介だな」


「2つ忠告しておく。お前は、この件に関わるな。

 もう1つは、リーフリットを呼んでダークエルフの保護を頼め、余計な誤解を生まない為だ」


 それだけ言うと、俺から証拠品を奪い、3人の奴隷商らしき者たちを連れて、サッサと転移していった。


 俺は溜息をついて、リーフリットに連絡した。

 駆け付けたリーフリットに、まず浮気を疑われた。

 保護を頼んだ相手が、ダークエルフだったこともある。


 俺の必死の抗弁と3人の証言で、俺の冤罪は晴らされた。


「じゃあ、この娘の事は任せて。・・本当に浮気はしてないんでしょうね」


「こんな絶世の美女の奥さんが居て、あり得ないしょ」


「FUNいいわ、そういう事にしてあげる。・・じゃあね」


 リーフリットは、転移で桔梗宮ききょうきゅうに戻った。


「大変ス、ね」とジャン。


「判るか」


「ええ」


 男同士の妙な共感を得られた一幕だ。

 それからレベリングは再会され、1週間を待たずに目標を達成した。

 俺たちは、領都リーフリンクに帰還した。




 


 カシム・フォン・アウゼンシュタットは王都屋敷に帰宅途中だ。

 護衛のポズンは、シャーリーに話し掛ける。


「シャーリー、気付いているか?」


「ああ、分かってる」


「若君、少々、無粋なハエどもを始末してきます。

 若君には、そのまま帰宅していただけると、幸いです」とシャーリー。


「判った。任せよう」カシムは鷹揚に告げる。


 シャーリー、マチルダ、ゴステアの3人の魔族は、裏路地に姿を消した。


「若、領地経営はよろしいので?」


 護衛のポズン(魔族)が尋ねる。


「心配は要らぬ、家令のパウロは優秀だ。それに貴族派の援助も取り付けた。何も心配せずとも、領地は復興してくれるよ」


 カシムは自信に満ちて答える。

 何も自分がやらなくても、人を使いこなせば良いだけの話だ。



 5人の男たちは、馬車を襲うタイミングを計っていた。


「随分、舐めた真似してくれるね」


 背後から、女の声がする。

 振り返ると、女2人、男一人が背後を取っている。

 5人の男たちは、短剣を抜いて、襲い掛かる。

 男たちは、次々と倒されて地に伏してゆく。

 一人の男が、パラボラアンテナの付いた銃を取り出し、近くにいた女の首筋に、針を打ち込む。


 男は、狂ったように叫ぶ。


「おまえは俺の傀儡だぁ、奴らを殲滅しろ!!!」


 命令は下された、しかし、女は動かない。


「随分、面白いことしてくれたわ。

 ジックリとお話聞かせて貰おうかしら」


 女の手には、打ち込んだはずの針がある。

 魔族にとって、この程度精密な魔力制御など朝飯前だ。

 脳に打ち込まれた針はアポーツで簡単に取り出した。


 男は目の前に居るのが化け物であると、絶望感と共に理解した。   

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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