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第11話 転職なら西アルメニア

 約束どうり、俺は、王都の商業ギルドに来ている。


 領官の面接の為だ。


 俺には、ある懸念があった。

 リーフリットとの結婚。つまり、エルフ、亜人との結婚だ。


 人種から見れば、エルフは『この世の物とは思えない』程の美男美女だ。


 それでも、仲間となり、友となっても、恋人にしようかとか、

 エッチしようかとか思わない。


 本能の部分で、キチンとSTOPを掛けてくれるのだ。

 それはエルフ側も同じこと。


 異種族の結婚は、日本人の俺が考えるよりも、ハードルが高いのだ。

 異種間で性交渉すれば、ほぼ「獣淫」と同じ目で見られる。


 リーフリットを女主として、認めてもらえるか、心配だ。


 俺にとってリーフリットは、彼女が、前世日本人ということもあり

 エルフというよりも、『エルフにコスプレ』した『日本人』なのだ。


 

 


 俺は、集まった領官希望者を、全てホールに集め、こう宣言した。


「本日は、これだけの方々が、ここに集まって頂いたことに、感謝申し上げる」


 俺は、隣に立つリーフリットの腰に腕を回して。


「私とリーフリットは、ご覧の通り結婚している。

 もしこの中で、それを不快に思う者は、今すぐここから去って欲しい。

 異種族間の結婚が、タブー視されているのは承知している。

 私は妻との離婚を考えていないし、ご親切な忠告も聞く気はない。

『彼女を女主と認められない』のであれば、構わずここから立ち去って欲しい」


 俺は更にリーフを引き寄せ


「取り合えず10分待つ。私たちが席を立つ間に決めてくれ」


 そう言って、用意された面接会場に戻っていた。

 席に座って一息つくと、リーフリットは、掌で俺の後頭部を軽く叩く。


「ありがとう、ね♪」


 そう言って、俺の左腕に腕を絡めてきた。


「でも、心配ね。誰もいなくなったら・・どうしようか?」


「恐らく、大丈夫だと思うけど」


 俺は、リーフリットの頭を軽く撫でる。

 仕組まれた場合でなければ、

 全員が敵になる事も、味方になる事もあり得ない。


 最初は難色を示した仲間たちだって、最後は認めて祝福してくれたのだ。

 呆れられても、全員居なくなることは、無い、と踏んでいる。


 精々『エルフ好きの変態勇者』のレッテル位で済むと思う。


(告:妙な気の流れ、数名、排除しますか?)


「いや、いいよ、マーカーだけ、よろしく」


 怪しいだけで、いきなり排除は出来ない、

 それにここは、商業ギルドの施設内だ。

 証拠もなしに、いきなり拘束などしたら、こちらの沽券に関わる。


「そろそろ時間かな」


 そう言って、俺は席を立った。



 


 俺たちがホールに戻ってみると、予想以上に人が残っているのに驚いた。


「みなさん、ありがとう」


 俺は一礼して、笑顔で告げる。


「では、始めましょうか?」


 文殊の解析鑑定を駆使して、俺は面接を捌いてゆく。


「君は内政官より、戦士に向いている、衛兵はどうだろうか?」とか、


「君は衛兵よりも、建築関係に向いている、工部で内政官として、働いてみないか?」とか


「思いっきり、魔術師向きだ、魔術師部隊、考えてみないか?」とか


 まるで俺に、人を見る目がある様に見えるが、

 全てこれ、文殊様の鑑定の結果。

 みんな思いもしなかった才能に驚き、ドンドン採用が決まっていった。

 文殊、様、様である。


 そうこうしているうちに、例のマーカーの番となった。

 見た目は、年頃の若い女に見える、見た目も悪くない。

 俺は、ストレージから聖剣を取り出して、切っ先を女に向ける。

 不機嫌さを隠さずにこう告げる。


「お前さんが何者か、判っているつもりだ。

 上手く隠しているつもりだろうが、

 そんな反吐の出る気をまとっていれば、嫌でも判る」


 行き成りの事に面食らっている様だ。


「あのぅ、何を、一体・・・」


 行き成りで戸惑っている様だ。少し恐怖の色がみえる。

 俺は無視して続ける。


「エルフの里では、お仲間に世話になった。

 シェリーさんだったか、外で待つ3人にも伝えろ。

 お前さんたちは、不採用だ。

 俺は、基本的に相手が毒蛇でも、家族や仲間に危害が及ばない限り、

 手を出さない主義だ。

 正義感に狩られて行動するほど、暇じゃない。

 分かったなら、トットと失せろ。(魔族ども)」


 無礼極まりない俺の態度に、怒った様な態度で出て行った。

 その様子を見て、リーフリットは、


「大丈夫かしら、何か報復でもしてこない?」と心配そうだ。


「一応マーカーは、そのまま継続中だし、文殊様が監視してくれるから。動きがあれば、分かるだろう」


 そんな事もあったが、無事、面接も終わり、人材的には豊作だった。

 予定より少し多い205人を採用した。


 

 

 王宮より使いが来て、参内すると、ミューゼル宰相より

 執事のセドリックを紹介された。


 セドリックよりロードスターの方がよかったな、では無く。


 しかし、まだ若い、やっと20歳になったばかりに見える。


 この歳で、執事は早すぎるだろう、と思う。

 執事は、周りが思うほど、簡単な職業ではないからだ。


 しかし言われるまで、完全に忘れていた。

 執事もそうだけど、メイドも料理長も、まだ雇っていないことに。

 そんなことだろうと思ったと、ミューゼル宰相に笑われた。


 取り合えず、料理長とメイド長を含むメイド10人を紹介された。 


「みなさん、よろしくお願いします。

 私は、アキュフェース・フォン・ワント・ツー・アルメニア

 陛下より、伯爵の地位を賜っています。

 隣にいるのは、妻のリーフリット。

 亜人差別が無いのなら、私たちの力になってください」


「いいえ、御屋形様、その様な不埒な考えを持つ者など、この中には一人もおりません。

 世界をお救いくださった恩人に、仕える事を、誉れと思いこそすれ

 それを蔑む者など、この中には居りませんので、ご安心くださいませ。

 良き出会いの機会をお与えくださった神々に、感謝いたしますわ」


 メイド長のマーサさんが代表で、挨拶した。


 俺たちは笑顔で


「「よろしくお願いします。」」と、答えた。


 俺は、ある疑問をミューゼル宰相にぶつけた。


「失礼とは思うのですが、セドリックの執事は、少し早すぎませんか?」


「そんなことなら、心配には及ばんよ。

 幼少の折より父親に鍛えられておる。

 セドリックの父親は、この王宮の執事長だぞ。」


「大変、失礼いたしました。それなら、安心ですね。」と、俺が答えた。


 リーフリットは、肘で俺の脇腹を、コツコツとつつく。


「執事って、アレでしょう。

 お嬢様学校で、お金持ちのお嬢様に、燕尾服で付き従う。

 イケメンの男の人でしょう。」


 俺はその言葉に、頭を抱えた。


「お前、少女漫画に毒されてないか?

 そもそも、執事はそんな軽い職業じゃあ無い。

 あれは、ただの使用人だ。


 まず、領地経営を代行するのが『家令』


 『執事』は、屋敷の使用人が滞りなく仕事をしているか、監督する立場。

 主不在の際は、主に代わり、屋敷内のあらゆる決定権を持つ。

 来客の対応、主のスケジュール管理、主の身の回りの世話など。

 屋敷の規模によっては、家令も兼任するから。


 お前のピンとくる言い方だと

「家令」は「家老」、「執事」は「城代家老」と「秘書」を合わせた様な感じ。

 あくまで、俺の個人的な主観だけど」


「そういわれたら、いきなり偉く見えてきた」


 リーフリットの答えに俺は苦笑した。




 王都のスラムの一角、薄暗い部屋に男女4人が集まっていた。


「で、どうするよ、シェリーさん」男は不機嫌に問いかけた。


 勿論、シェリーは偽名だ。


 元々、勇者のエルフ趣味をついて、不信感を煽って孤立するように仕向けたかった。

 孤立できれば最高だが、不信感を植え付ければ、OKなのだ。


 何をするにも、勇者は、邪魔だ。


 身動き出来ないようになって欲しい。

 これは、そのための第1手のはずだった。


「少し舐めてたね。ああまで鼻が利くとは思わなかったさ」


「出鼻を挫かれて、次はどうするよ」


 シェリー(偽名)は思案顔だ。


「とにかく、正面から対峙するのは得策じゃあ無いね。

 対峙して解った。ありゃ化け物だ、連れのエルフも含めてね。

 正直、生きた心地がしなかったよ。

 あれと殺るなら、魔王様に盾突いた方がマシさ」


「そんなにか?お前がそう言うなら、そうなんだろう」


 別の男が応じる。


「俺たちの目的は、魔界へ帰ることだ」


 魔界の門を開くためには、大量の瘴気と人々の怨念の籠った、嘆きの声が必要だ。

 後は、月と星の天体の運行と位置。


「分ってるわよ。しかし、別の仲間が世界樹に手を出したみたいだね」


「マジかぁ~、ありゃ世界樹用の認識阻害の薬がないと、どうにもならないぜ」


「使って、失敗したんだろうさ」


「気持ちはわかる。あの木、忌々しい」感情の籠らない声で、別の女が喋る。


「何にしても、今は仲間がいる。

 仲間を集める為にも、どこぞのバカ貴族を使って、拠点づくりをしないかい」


「まぁバカ貴族は、お前さんの『魅了』で何とかなるか」


「で、アテは、あるのかい」


「アウゼンシュタットの若様なんて、どうだい?」


 数日後、王都のアウゼンシュタット邸を訪れた、

 4人は無事にカシムの従者に取り立てられた。




 

 俺たちは、執事のセドリックとメイド、料理長を伴って、

 平城宮(五稜郭)に位置する拠点に転移した。


 そこで、新たな事実が判明する。


 勿論、セドリックたちは問題ない。


 問題があるのは、今回、採用した領官や衛兵たち。

 元々、男爵の貴族屋敷だ、これで、間に合うと思っていたが

 結果は、全く足りていなかった。

 領官たちの仕事をする役所、衛兵の詰め所、領官たちの長屋の問題。


 翌日、中古物件を買い漁りに王都を奔走した。


 とにかく多少のトラブルがあったが、領地経営はスタートした。

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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この物語が、あなたのストレスを緩和する、清涼飲料と成ることを願って。

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