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銀色の魔法はやさしい世界でできている~このやさしい世界で最後の魔女と素敵な仲間たちの夢見る物語~  作者: 鮎咲亜沙
第四章 魔の森へようこそ

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04-14 好奇心に導かれ

 冒険者選抜試験を終えてアリシアは、これまでの事を振り返る。

 去年の夏に師を亡くし、その半年後に森を出てフィリス達と出会った。

 今年の五月の初めに帝国で行われた世界会議で、ルミナスやミルファ達と出会った。

 その後、みんなでアクエリア共和国へ立ち寄り観光を楽しんだ後、フィリス達を魔の森へ招待したのだ。

 友人達を自宅へ招くという事がどれだけ楽しい事だったのか、アリシアは今まで知らなかった。

 六月に入ってからはずっと冒険者ギルドの開設に掛かりっきりだったが、一人ではなく皆で何かを成し遂げる事があんなに楽しい事だとは思わなかった。

 そして長かった冒険者の試験も終わり、季節は七月を迎えたのであった。


 ここはエルフィード城の会議室で、アリシアとフィリスとアレクとガーランドの四人で、ギルド支部設立の今後の予定について話し合うべく集まっていた。

「先日の試験に集まった冒険者の皆さんはみんな優秀で良かったです、あの中からなら誰でもいいと思いました」

「そう言っていただいて安心しました、いずれ各ギルド支部長が集まってどの冒険者を引き抜くのか協議する事になるでしょう」

 大きな仕事を乗り越えてガーランドもホッとしている。

「どうやら上手くいっているようなので何よりだ」

 アレクもアリシアにギルド設立を進めた手前、これだけ穏便に話が進んでいる事に一安心である。

「ところで銀の魔女様が特に興味を持った、来て欲しいと思う冒険者はいましたか?」

 メンバーの選出会議はどんなに早くても一月後位にはなる、もしアリシアの気に入った冒険者がいたのなら推薦するのも可能だろう。

「う~ん、あの最後の陸竜と戦った、あの二人は欲しいかな」

 あの時の八人のSランクチーム全員はいい動きだったが、とりわけ最後に残った二人は別格だった。

 おそらくすごく強い信頼関係があったのだろう、互いの隙を庇いあいつつ絶妙なコンビネーションで格上の陸竜と渡り合っていたのだ。

 まるでフィリスとルミナスのコンビの様に、信じあっているようだった。

「あの二人ですか、確かに特に良い動きでしたね、それに二人ともこのエルフィード王国の出身者ですし都合が良いかもしれません、推してみます」

「それでお願いいたします」


 それから四人は地図を広げて話し合う、何処にギルド支部を立てるかを。

 今回ベースキャンプを仮設した場所は安全面のみで選んだ場所だった、だから利便性に関しては全く考慮していなかったのだ。

「消去法になるが、このあたり一択だな」

 アレクが地図を指さすのは、魔の森の南南西二十キロメートルほどの地点だった。

「どうしてそこなんですか?」

 アリシアの疑問にアレクは答える。

「魔の森の周りは平原で北と東は少し離れてローグ山脈がありその間には何もない。 西には穀倉地帯が広がっていて南にはかなり離れて海があり、その海沿いにはエルフィード王国とアクエリア共和国とを繋ぐ、大きな海道があるからだ」

 ちなみに魔の森から見てここエルメニアの城下町は、おおよそ南西に馬車で三日ほどの距離だ。

「海道側で利便性も良いし、いいんじゃないかな」

 フィリスも同意見のようだ。

「もう少し森の近くの方が便利で良くないですか?」

「魔の森からある程度離れていないと危険です、森のすぐ近くには馬車置き場でも別に作って、いざという時には放棄して撤退する、そんなところが良いでしょう」

 ガーランドのその意見にアレクも同意する、しかしこの時アリシアに疑問が浮かんだ。

「ところでアレク様、私の森のギルド支部がここになるのは問題ないの?」

「魔の森の周囲全ては、王家の直轄地になっているから問題ない」

「王家の直轄地という事は、お隣の貴族って居ないのか⋯⋯」

「居ないというか百五十年以上前に排除した、その⋯⋯森の魔女様は貴族嫌いだったんでな」

 晩年の師しか知らないアリシアにも、容易に想像が出来た。

「なるほど⋯⋯それではギルド建設のこの予定地は、王家の管理という事ですねアレク様?」

 だがその事に、ガーランドはやや難色を示す。

「ギルドの都合的には魔素溜まりに付随するギルド支部が、他の領地にあるというのは収入や税金の関係で面倒事の原因かと」

「木が生えてる所からが〝魔の森〟と定義すると色々融通がきかない事もある、だから森の周囲五十キロほどまでは魔女と王家の共同管理という事になっている、なんならここまでを魔の森の一部という事にしても別に構わんだろう」

「それなら問題にはならないでしょう」

「なら決まりだな、ここのギルド支部予定地の所から魔の森の間も含めてアリシア殿の領地としよう、その代わりこのギルド支部の隣に魔の森の外交用の窓口になる拠点を作って欲しい」

「拠点? そこに私に住めということ?」

「いや単なる役所だ、運営する人員はこちらで用意するが差し当たって経理の担当だけは、早めに決めておいた方がいい」

「経理って?」

「これから先は大きな金が動くが、アリシア殿にそんな雑務を押し付けるのは得策ではないだろう?」

「そうですね」

 アリシアは素直に同意する。

「その人物にはアリシア殿の顧問会計士も兼任して貰えば、今後の取引が速くて助かるがどうする? 自分のお金はアリシア殿が自分で管理するか?」

「⋯⋯いや面倒なので、やってくれる人がいるなら嬉しいです」

 仮にも王家が連れて来る人だし信用できるだろうと、アリシアは安易に考えていた。


 会議も一段落した時だった。

「こんな所に村があったんですね」

 アリシアが気づいたその村は、魔の森南西約三十キロといった所にあった。

「ソルシエール村ね」

 フィリスが名前を教えてくれた。

「ソルシエール?」

「魔女という意味の言葉だ、元々は別の名の村だったんだが何せこの国の最も有名だった魔女の住処の一番近くの村だったから、いつの間にかそんな名が定着してしまってな」

 アレクが解説してくれる。

「ちょっと行ってみたいな」

 それはアリシアにとってちょっとした好奇心だった、敬愛する師の一番近くの村がどんな所だったか、魔女と寄り添って生きている人々を見てみたいというのは。

「今後は何かとこの辺りに行く事が増えるし、いつでも転移できるように一度行ってみる?」

 そんなフィリスの提案にアリシアは同意する。

「じゃあ明日にでもみんなで行ってみようか」

 その日の会議はそんな所で終わった。


 そして夜更けに通魔鏡によって皆の予定の都合がついたため、明日そのソルシエール村を見物に行く事になったのだった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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