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銀色の魔法はやさしい世界でできている~このやさしい世界で最後の魔女と素敵な仲間たちの夢見る物語~  作者: 鮎咲亜沙
第二章 導きの世界会議

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02-06 信仰が生まれた日

 ラバンは神妙な顔でアリシアに告げる。

「今回の世界会議アリシア殿には必ず来て貰わなければならなかった、だからここへ来て欲しい理由の一つを意図的に隠していた、すまなかった」

 ラバンは周りの人達の目も構わずアリシアに頭を下げる。

「謝罪はいいです、何故隠していたんですか?」

「⋯⋯その理由ひとつで此処へは来てくれなくなる、そう思ったからだ」

 アリシアは内心イラつきながらも、冷静に冷静にと自分を抑える。

「ラバン王を責めんでやってくれ、全てはワシらグリムニール教会が悪いんじゃ」

 静かな声でキーリンが話しに割って入って来た。

「グリムニール教会が?」

 アリシアはキーリンに話しの矛先を変える。

「そうじゃ銀の魔女殿、今回の世界会議で其方の教団を作りたいと打診する事、それが理由じゃよ」

「⋯⋯私の教団?」

 アリシアには意味がわからない。

「そうじゃ、しかし銀の魔女殿はよく分かっておらんようじゃな、理解して貰うためにはこの世界の宗教がどう成り立っているのかそれを知ってもらいたい、良いかな」

「わかりました、説明して下さい」

 そしてキーリンは語る、この世界の宗教の事を。


 アリシア達が住むこの大地はグリムニール大陸と呼ばれている、それはこの世界の創造神グリムニール神にちなんでそう呼ばれる様になった。

 と、教会では教え広められてはいるが実際には、大陸の名が先だったのか神の名が先だったのか、もはや誰にも分からない記録も残せないほど太古の時代に既に、この大地の名を持つ神を崇める習慣が出来上がっていたという、それがグリムニール教の始まりだった。

 そんな時代に変化をもたらしたのは、今から約千年前に初めて現れた魔女の出現だった。

 その力は凄まじいもので、人々は彼女こそがグリムニール神なのだと信じた、しかし彼女は否定した自分は魔力を使えるただの女であると。

 やがて彼女は〝魔力使いの女〟魔女と呼ばれるようになる、これが魔女の始まりである。

 そして時の流れと共に、第二第三の魔女が現れる様になって来た。

 しかし、この時すでにグリムニール教会は存在しており、彼らにとっては魔女は目障りな存在だった。

 何故なら、自分達の崇拝するグリムニール神は現れてくれないのに⋯⋯と。

 そこで彼らはこんな事を言い出した「魔女は我らがグリムニール神が、この地に遣わした使徒である」と。

 魔女達にとってはいい迷惑である、しかしそれを信じる者や、信じずとも魔女そのものを崇拝する人達は増え始めつつあり、こうしてグリムニール神ではなく、その使徒である魔女そのものを信仰する魔女教が誕生した。

 その後グリムニール教会は、グリムニール神だけを称える存在から、その使徒たる魔女達のそれぞれの魔女教を含めて束ねる集団へと変化してゆくのだった。

 そして、それは現在においても続いている。


「なるほどわかりました、それで次は私の番だと⋯⋯確かに最初っから知っていれば、来なかったでしょうね」

 明らかに機嫌が悪くなってくるアリシアに周りは焦り始める、そこでラバンはアリシアに慎重に話しかけた。

「其方の師匠の森の魔女殿も嫌がっていたそうでな、おそらくこうなるであろうと予想はしていた」

「師も?⋯⋯それで結局師の教団ってどうなったんです?」

「森の魔女殿は我がエルフィード王国の救世主だったからな、当然〝森の魔女教団〟を作ろうという話は出て来た、しかし森の魔女殿は嫌がり認めなかった、その結果非公認の教団が乱立しかえって収拾がつかなくなり、その後森の魔女殿は渋々認めることになった」

「師でも止められなかったのですか⋯⋯」

 此処でアリシアは少し考える。

 自分は師の全てを受け継ぎ乗り越える事が目標である、アリシアの教団を作ることを認めること、または止める事、どちらが師の後継者として相応しいのかわからないが、アリシアの目的の一つである師の名を永遠に残す事の手段としては、森の魔女教団の存在は有益だと思った。

 こちらを認めるのに自分は嫌だと言うのは、筋が通らない気がする。

「私の教団を作る事は考えておきます、後それとは別に森の魔女教団に入信したいので手続きお願いします」

 この場の一同はどうしてそう言う結論になったか分からないが、アリシアの変化にとりあえずほっとした。

「わかった手配しておく」

「ありがとうございます、ところで師の教団ってどの位の規模なんですか?」

 ラバンは突然の話題の変化に戸惑うが、ありのままをアリシアに告げる。

「森の魔女教団は我がエルフィード王国に本部があり、我が国では一番の勢力と言っていいが、世界全体で見れば二番目位だな」

「二番目? 一番って誰なんですか?」

 アリシアにとって師は神にも等しい存在ではあるが、その評価を他の人達にまで押し付ける気はない、しかしそれでも師以上に崇拝される魔女には興味があった。

「ルーンファスト教団じゃよ」

 ラバンの代わりにキーリンが答える。

「文言の魔女ルーンファスト様ですか?」

「知っているのか?」

「それは、まあ有名人ですから⋯⋯そっか文言の魔女様じゃ仕方がないですね」

 アリシアはあっさりと、自分の師の敗北を受けいれた。

 文言の魔女ルーンファスト、歴史上彼女以上の功績を残した魔女は確かにあり得ない、何故なら彼女こそが、魔法文字(ルーン)を生み出した魔女だからである。

 文言の魔女が生まれたのは四百年ぐらい前らしい、それまでの魔女の魔法は本人の資質に大きく左右され、具体的な伝承の仕組みはなかったという。

 しかし魔法文字(ルーン)が作られた事によって状況が変わる、自身の魔法を魔法文字(ルーン)によって魔法式に変換して他者に習得させられるようになったという。

 さらにはそれまで大した魔力を持たない一般的な人々にも、〝魔力を使う方法〟魔法を〝魔女が創った技術〟魔術として簡単なものなら習得出来る様になり、魔術士や魔道士が生まれる事に繋がっていった。

 この時のアリシアはまだ知らないが、魔法文字(ルーン)を言葉として口頭で呪文詠唱して魔術を行う者を魔術士と呼び、魔法文字(ルーン)を文字として理解でき魔法陣を描く事で呪文詠唱せずに魔術を発動できるのが魔道士と区別されている。

 ほとんどの魔術に携わる人が魔法文字(ルーン)を話せるが、魔法文字(ルーン)は書けないという人はある程度いるので、魔術士よりも魔道士の方が格上とされている、しかし魔道士でも時には呪文詠唱で魔術を使ったり、魔術士でも魔道士以上に実戦では強いという人もそれなりには居るので、単純な強さとはあまり関係無い。

 なお魔術士や魔道士は魔術師と魔導師と呼ばれる事もあり、こちらは弟子を持ったもしくは育てられる程の力があると、認められた者達である。

「魔女教団に関してはわかりましたけど、何故そんなに急いで私の教団を作ろうとするんです?」

 ふとここでアリシアは疑問に思った事を聞いてみた。

「金の為じゃよ」

 周りが言いにくそうな空気の中、キーリンがあっさりと言った。

「⋯⋯お金儲けですか? その為に私達魔女を利用するんですか?」

 もしそれが本当ならアリシアにとって、いや全ての魔女達にとっての侮辱である。

 そのアリシアの質問にキーリンが答える。

「この子ミルファはな孤児だったんじゃよ、グリムニール教会で運営しておる孤児院で育てられた」

 その発言にアリシアは沈黙し、ミルファを見つめる。

「その孤児院の運営資金は国の税金が使われておるが十分ではない、多額の寄付金で支えられておる、それが現実なんじゃよ」

 キーリンは真っ直ぐに、アリシアの目を見つめながら話し続ける。

「いくら神に祈ろうが奇跡はいつも起きる訳じゃない、人を救うのは結局人で、その人を動かすのは金なんじゃよ()()()()()()()

 アリシアは自分が子供扱いされている事に気づいていたが、キーリンの目に浮かぶ悲しみや絶望を感じ何も言えなかった、この老人はこれまでどれほどのモノを見てきたのか。

「それで良いんですか、仮にも教会の頂点である教皇の貴方がそんな事言っても⋯⋯」

「表だっては言えんが、まあここでなら良いじゃろ」

 キーリンはそれまでの神妙な表情を和ませ、むしろ悪戯っぽい表情でアリシアに答える。

「それにな、金の力はすなわち神の力なんじゃよ」

 ああ、そういう事かとアリシアは納得してしまう、この世界のお金の単位が神の名(グリム)である意味を。


「とりあえず宗教関連のお話はわかりました、これで後残った問題はそのミルファさんの事だけですね、彼女は何なんですか?」

 そのアリシアの発言にミルファは萎縮する。

「銀の魔女殿と教団を繋ぐ、橋渡しの役目を担う巫女としてワシが連れてきた」

「先ほどの彼女の自己紹介はまるで、生贄か奴隷の様に聞こえたんですが?」

「アリシア、その言い方はちょっと⋯⋯」

 後ろからフィリスが口を挟む。

「ちょっとフィリスはだまってて⋯⋯あの子の人生がかかっているんだから」

 この時のアリシアには、ミルファは自分の為に人生を捧げようとしている様に思えた、そしてそれはそう的外れでもなかった。

 かつてアリシアは師に逆らい小鳥を飼った事があった、しかしその小鳥はその後すぐに死んでしまった、この時アリシアは命の儚さを学んだ、その為生き物を飼うという事に臆病になってしまったのだ。

 そんなアリシアにとってミルファを側に置き、その人生を捧げさせる事に何の価値も見出せず、強い拒否感が沸き上がるのだ。

「ふむ、ではミルファよ、この話断っても構わんがどうする?」

 キーリンがミルファに質問するが「構いません」と一言返すのみ。

 アリシアはミルファに問いただす。

「あなた本当にそれでいいの? もっと他にしたいことはないの? 周りの権力者に言わされているなら私が絶対許さないから正直に言って」

「ありがとうございます、お優しい魔女様、確かに教皇猊下に命じられましたが私はちっとも嫌ではありません、むしろ望んでいるのです、もし仮に私以外の聖女がこの役目を仰せつかっていて、その役目を奪えるのであれば、私はそうするでしょう」

 ここまで言われてしまっては、アリシアにはもう何も言えない。

「わかった、ひとまずミルファさんの事は私が預かる、でももし嫌になったら出て行って構わない、教会に戻り辛いなら何処か別の場所に行けるようにする、それでいい?」

 アリシアのその言葉を聞き、ミルファは輝かんばかりの笑顔で答える。

「はい、どうか不束者ですがよろしくお願いします、後ミルファと呼び捨てて下さい」

 そんなミルファの笑顔が、アリシアの心にのしかかる、諦めにも似た感情でアリシアはこう言った。

「ではミルファ、これからよろしく」

 この日アリシアに、専属の巫女が出来たのだった。


 アリシアが新たな出会いをしていたその頃、帝国首都より馬車で二日程離れた森で黒ずくめの者達が密談していた。

「パーチェ、準備はできたか?」

「僕にかかればこの程度の事は簡単さフリーダム、ところでリーベはまだかい?」

「あいつはまだの様だが⋯⋯お、来たようだな」

 二人の黒ずくめに、さらにもう一人の黒ずくめが加わる。

「貴様ら、吾輩の出迎えご苦労である」

「遅れて来てこの態度だよ」

「リーベ、首尾はどうだ?」

「吾輩に手抜かりがあるはずも無い、貴様らこそ終わったのか?」

「もちろんだ」

「よーしこれで始められるね僕達のパーティーが!」

「さあ始めるぞ俺達の悲願、アリスティア様に捧げる〝破滅〟への序曲を⋯⋯」

 今、帝国を襲う悪意の芽が産まれつつある事を誰も知らなかった⋯⋯

お読みいただき、ありがとうございます。

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