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銀色の魔法はやさしい世界でできている~このやさしい世界で最後の魔女と素敵な仲間たちの夢見る物語~  作者: 鮎咲亜沙
第四幕 光と影の協奏曲

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11-15 誕生祭二日目 その一 演劇祭の朝

 翌朝、アリシア達四人はゲストハウスの一室で目覚めた。

「みんなおはよう、どう? 感想は?」

 アリシアが朝一番に仲間たちに聞くのは、夜寝る時に使ったお香の効果である。

「おはようアリシア⋯⋯信じられないくらい頭がすっきりしている」

「まるで二度寝して寝坊した時の様な、頭のスッキリ感ね!」

「これは⋯⋯素晴らしい睡眠効果ですね」

「それは良かった」

 なぜアリシアが昨夜の睡眠にこんな特別なお香を使ったのか、それは昨日の最後にアリシアが言った転移門の事が原因だった。


 結局あの後、王達はあえて話し合う時間を取らずにそれぞれ考える事にしたのだ。

 そしてアリシア達も夜寝る為にこのゲストハウスの部屋へ来たのだが、しばらく反省会を行う事にしたのだが⋯⋯

 そうしばらくの予定だった、しかし思いのほか時間がかかり朝までそれほど時間が無くなってしまったのだ。

 そしてこれはまずいと、ルミナスが言いだした。

 もう日付は変わり今日は演劇祭だった、そして演劇や音楽というものを鑑賞するとどうしても眠くなるものらしい⋯⋯

 このままでは全員が寝落ちする、醜態をさらす恐れがあった。

 その為アリシアが使ったのが特殊なお香だった。

 その効果は睡眠を誘い、短くても質の高い睡眠を得る事が出来るというものだ。

「これは良い効果です、正直欲しい」

「ルミナス普段は頼らない方がいいよ、あくまでも非常手段としてたまに使うもので常用すれば体に悪い」

「確かに、効果がありすぎて怖いわね⋯⋯」

「普段通りの生活を保つことが大切ですね」

 とりあえずアリシアはいくつかみんなにこのお香を渡すが、滅多に使わない方がいいとは警告しておいた。

「とにかく今日は早く寝るようにしないと、その分を前借したような効果だからね、これは」

 そのお香を受け取りながらも極力使わないようにしようと思う三人だった。


 そもそもの原因であるアリシアが転移門を作る事を決心したのは、つい先月の事だった。

 アリシアは以前みんなとの雑談で転移門で世界を繋ぐことを提案した事があった、しかしその時は見送る事になったのだ。

 あまりにも世界に与える影響が大きすぎるからだ。

 それにアリシアが転移門を創り続けないといけない事も懸念されていた、人は便利な物を手放せずもっと欲しがるものだからだ。

 そしてそれをアリシアも自覚していた、だからそこまでして創りたいとは言い続けなかった、その時は。

 そんなアリシアの心変わりの切っ掛けはフィリスとルミナスの誕生祭だった。

 そのどちらにもアクエリア共和国の領主達は参加しなかったのだ。

 フィリスの時は共和国の⋯⋯特に北や東の都は距離が離れすぎているからだ、ほとんど大陸の端から端までと言ってもよい。

 ルミナスの時は十六歳でつつましやかに行う予定だったから、共和国はどこも参加しなかった。

 その二つの誕生祭に帝国が、そして王国が参加できたのはアリシアが転移魔法で協力したからだ。

 フィリスもルミナスもアリシアにとって大切な友達で一緒に居たかった、だからわずかな報酬でも引き受けたのだ。

 本来だったらフィリスの誕生祭は帝国からはルミナスだけが名代として参加し、皇帝のアナスタシアまでは来なかったに違いない。

 ルミナスの誕生祭は節目ではない十六歳の時だったから、そもそも王国も参加しない予定だった。

 それがアリシアが手出ししなかった場合の現実だった。

 結局アリシアは自分のやりたい事の為に好きにしただけなのだが、いずれの場合にも共和国が参加しなかったことはアリシアの中で大きな懸念になっていった。

 エルフィード王国がアリシアが居る事によって恩恵を得られることは、当たり前の事である。

 アリシアは自分が住む王国と、そういった取引をしているからだ。

 その事を知っていても他国はやがて不公平に感じる時が来るのではないか?

 そう思ったアリシアは仲間たちに相談した。

 その答えはアリシアの予想通りのものだった「他人の当たり前ほど羨ましいものは無い」それが仲間たちから受けた忠告だった。

 やがてアリシアの存在が争いの火種へと変わる日が来るかもしれない。

 その前にアリシアは自分の力に頼らずに、せめて世界の王達だけでも気楽に移動できる道を作るべきではないかと考え始めた。

 そしてその計画が始まった。

 魔の森と六つの国を繋ぐ転移門の創造を⋯⋯

 そしてその計画はアリシアにとっては可能な事だったのだ。

 アリシアは元々空間魔法の適性が高い、歴代の魔女は大抵自分を転移させるくらいなら出来る者がほとんどだったが、その魔法を魔法具化まで出来る者はごく限られていたのだった。

 かつてこの世界にも転移門はあったという。

 しかし争いになったり手入れもされなかったために、現代まで稼働している物はもう無いと言われている。

 再びこの世界に転移門を創る事は正しい事なのか間違っているのか? それはわからない。

 だから試して見ることにしたのだ、アリシア達は。

 この世界に良い結果になるという願いを込めて⋯⋯


「さあ! 昨日の事はいったん忘れましょう! それより今日の演劇祭を楽しまなくっちゃね!」

 ルミナスのテンションが高いのは、お香の効果だけではないだろう。

「そうだね⋯⋯今は楽しむか」

 アリシアは投げてしまった石がどんな事になるかわからないが、もう考えても仕方ないと開き直った。

 ――きっと何とかなるだろう⋯⋯みんなでやれば。

「今回は自分たちの劇では無いと思うと、楽しみですね」

 ミルファも演劇自体は気に入っており楽しみだったのだ、ただ自分が神々しく飾り立てられているのを見たり見られるのが居た堪れないだけで⋯⋯

「そうね、明日は兄様も出場する騎馬レースもあるし楽しみね」

「ちょっとフィリス! あくまでも主役は明日誕生日のミハエルなんだからね!」

「わかっているわよルミナス」

 ふとアリシアは思う、王族がやたらと祝い事を派手に行うのはこうやってみんなが勝手に楽しむためなんだと、そしてみんなが楽しみ仲良くなるいい切っ掛けなんだと。

 もちろん負の側面もあるに決まっている、でもきっと楽しむ人の方が多いはずだとアリシアは信じたかった。


 その後、手早く支度を整えたアリシア達は帝国劇場へと向かう。

 今日はミハエルの誕生祭記念公演初日ため、各国の王達は招待されていた。

 それにアリシア達も一緒に参加させてもらえる事になっていたのだ。

 今日の公演に王達が参加する事は政治的なパフォーマンスも含まれている、しかしアリシアにとっては関係ない気楽で楽しみな娯楽であった。

 王達の入場は一般のお客様への邪魔になるため裏口からこっそり入るのだとアリシアは予想していたのだが、はずれた。

 正解は朝早くに先に堂々と入場を済ませてしまう、といった方法だった。

 帝国の国民たちに見物されながら帝国劇場へと入場する王やアリシア達⋯⋯

 そんな時アリシアは周囲の民衆の中にナロンが居る事に気付いた。

 しかしナロンの様子がおかしい、何だかうなだれていた。

 何となくアリシアは気になり、ここに自分の幻を残してナロンの後ろへと転移した。

「ナロン、どうかしたの?」

「ひゃい! え⋯⋯魔女様!? えっ!? 何で?」

 驚くナロンにアリシアはトリックを説明する。

「あっちは魔法で創った幻⋯⋯遠くからあなたの姿が見えたけど、何だか落ち込んでいたようだったから気になった、何かあったの?」

 ナロンは自分の叫び声に周りが全く関心を持たない事から、これも何かの魔法の影響だろうなと考えながらアリシアに答える。

「実は⋯⋯」

 ナロンは重い口を開きながら、自分の現状をアリシアへと話すのであった。

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