学園の外へ
対外試合が終わり夕方、俺はマリオ先生にガンド魔剣学園の外に呼び出された。それは入り口に門衛が立っているような、かなり豪華な邸宅であった。
「いやあ、良く来てくれたね、ブレイドくん」
迎えてくれたのはダンヒル卿だ。
「ここはダンヒル卿の邸宅ですか?」
邸宅の大きさに尻込みしていると、
「いや、違うよ。私の屋敷はそら、向こうだ」
とダンヒル卿。指差された先にある邸宅も、この邸宅に負けず劣らず大きい。貴族の邸宅と言うのは、皆こうなのだろうか?
「この屋敷に来て貰ったのは、この屋敷の主に、面通ししておこうと思ってな」
「面通しですか?」
「魔剤の件。本格的に動く事になったんだが、君にも手伝って貰う事になりそうだ」
そう言いながらダンヒル卿は、俺とマリオ先生を邸宅に招き入れた。邸宅内を案内しながら、ダンヒル卿は話を進める。
「何せ大教会での集会に呼ばれているのはブレイドくんだろう? 奴らに怪しまれず大教会に潜入出来るのは、君だけだ」
まあ、そうなるか。
「だが、相手は教会だ。国としては手出し出来ないのだよ」
「そうなんですか?」
そこら辺の事情は良く分からないな。他国だし。
「ああ。国教としてある程度の自治がウロ教には保証されている。だから今回の協力者に面通しと言う訳だ」
自治が認められているなんて、国の中の小さな国みたいだな。協力者って事らしいが、話からしたら、その小さな国の有力者っぽいな。そう思いながら邸宅内を歩いていると、ある扉の前で止まった。扉の前には守衛が立ち、その扉を守っていた。
「客人だ。開けてくれ」
ダンヒル卿の言葉に守衛は頷くと、扉を叩いて扉の奥の人物にお伺いを立てる。
「入れてくれ」
奥から男性老人の声が聞こえ、それでやっと守衛は扉を開いた。
中は執務室になっていた。執務机に客をもてなす為のローテーブルと長椅子がある。そして執務机に向かって、後ろに女性の護衛を付けた、白い装束を着た男性老人が仕事をこなしていた。
「ヴィレ大司教、ブレイド・パーシヴァルくんをお連れしました」
「おお! 君がパーシヴァル家の!」
老人は俺の顔を見ると立ち上がり、執務机からこちらにやって来て、握手を求めてきた。素直に握手を返すが、老人とは思えない結構な力で握り締めてきた。
「ささ、座ってくれたまえ。ガラク王国から遠路遥々良く来てくれたね」
「はあ」
ローテーブルに案内されて、長椅子に座ると、お茶と生菓子が出された。美味い。お茶も生菓子も高級品だ。
「いや、聖人シド・パーシヴァルの子孫とこうして話が出来るとは、感激だよ」
「聖人、ですか?」
「彼は剣聖だからね」
成程。それで聖人。その後もヴィレ大司教はシド・パーシヴァルや他の聖人の話に花を咲かせる。あれ? 俺、今日大教会で行われる集会の事でここに呼ばれたんだよね?
「ヴィレ大司教。世間話はそれくらいで、ブレイドくんもこの後予定が詰まっていますから」
と、見兼ねたダンヒル卿が、話を先に進めてくれた。
「ああ、そうだったな」
ダンヒル卿に話を中断されたヴィレ大司教は、少し名残惜しそうな顔をしながら、お茶を一口飲むと、俺に向き直った。
「今日、大教会で集会を行うのはデウニス司教だ。そこで例の聖水も配られるだろう。今回はそこに集まった者たちを、一網打尽にするつもりだ」
とヴィレ大司教は語るが、
「確か聞いた話では国は動けないとの事ですが?」
俺は疑問を呈する。
「ああ。今回は教会軍を動かす」
教会軍? 教会が軍を持っているのか? 何だか想像つかないな。
「クララ」
ヴィレ大司教が、後ろに控えていた女性を紹介してくれた。
「クララ・モルソーです。今回の作戦の指揮を執らせて頂きます」
赤髪に赤い瞳の女性は、俺に対して恭しく頭を下げてくれた。




