対外試合その2
俺の前に正対するリオナさんがいる。俺とリオナさんは対外試合を順調に勝ち上がり、マリオ先生が取り仕切る試合の最終試合に残った。これに勝ち抜けば、ラウド先生が取り仕切る試合の勝者との試合になる。
「始め!」
マリオ先生の開始宣言で、木剣を構える俺とリオナさん。奇しくも両者上段の構えだ。木剣を顔の横に持ってくると、地上と水平に木剣を構える。最初から一撃で仕留める気満々だ。
ジリジリと距離を詰めると剣が届く距離で足を止める。呼吸を読み合い、視線を読み合い、挙動を読み合う。
リオナさんとはもう何度となく仕合をしてきたが、公の場で試合をするのは初めてだな。まるで初めて相対する相手との戦いに臨むようで、心臓がバクバク言っている。呼吸を深く、吸って、吐いて、止めて、突く!
リオナさんと同時に、顔面目掛けて突きを繰り出す。それを首を反らして躱す俺とリオナさん。突きは一度に留まらず、二度、三度、四度、五度と連続突き。それを俺たちは足運びと腰の捻り、上半身の反りで避け、避けながら突きを繰り出す。
五回の突きを全て撃ち終えると、俺とリオナさんは一旦後退して距離を取る。体勢と呼吸を整える為だ。
「はあ……、はあ……」
「はあ……、はあ……」
たった五回の撃ち合いで息が上がる。それだけ一撃一撃に集中している証拠だろう。構えは上段のまま崩さず、息が整ったら、また距離を詰めて今度は打ち合う。
顔の横から斜めに木剣を振り下ろす。リオナさんも同じだ。両者の木剣がぶつかり合い、乾いた、それでいて重い音が耳に響く。
密着したままの押し合い。これには俺に少しだけ分があり、ジリジリとリオナさんを押し込んでいく。しかしリオナさんがこのまますんなりやられる訳ない。
スッと力を抜いたリオナさんにスカされ、俺は前方に転びそうになった。それを一歩前に踏み出した事で踏み留まるが、その前足をリオナさんに蹴飛ばされて俺はすっ転んでしまう。
転んで上を見れば、木剣を突いてこようとしているリオナさんが目に入った。俺は慌てて横回転してそれを回避する。それに追撃してくるリオナさん。
二度三度と突きを繰り出してくるリオナさんだが、攻撃に集中し過ぎで足下が隙だらけだ。俺はお返しとばかりに、突きを躱しながらリオナさんの足を払う。
見事にすっ転んだリオナさんに対して、俺は素早く立ち上がると、突きを繰り出すが、相手もさるもの、こちらに合わせて突きを繰り出してきた。
俺は間一髪で首を反らしてそれを躱すと、跳躍してリオナさんから距離を取る。その間に素早く立ち上がるリオナさん。が、立ったばかりのリオナさんに構える隙は与えない。
俺はリオナさんと一気に距離を詰めると、連撃を繰り出す。頭、胴、足、小手、と剣の軌道を絞らせず、フェイントを織り交ぜながら、どんどんと打ち込んでいく。
しかし流石はリオナさんと言うべきか、それら全てを体勢を崩しながら、後退しながら木剣で受け流していく。
「はッ!」
更には木剣を切り上げ反撃までしてくる。それに対して俺は一旦距離を置いて呼吸を整える。
追撃が来るかと思ったが、リオナさんも俺の連撃を受け止めるのに体力を消費したらしく、呼吸を整えていた。
呼吸を整えながら考えを巡らす。これ以上戦いが長引けば、ぐだぐだになってマリオ先生が間に入って、両者納得のいかない決着を言い渡されるかも知れない。それはリオナさんも考えていたようだ。目が合って互いに頷く。次の攻防で決着を付ける。
俺は更に集中力を増していく。周りの雑音はまるで聴こえなくなり、シンとした世界に俺とリオナさんだけが存在していた。
「はッ!」
気合一閃。リオナさんは一気に距離を詰め、木剣を振るう。それが俺にはゆっくりと見えた。集中力の成せる技だろうか。ゆっくり上段から首肩を狙って振り下ろされるリオナさんの木剣を、俺は身体を半身にして紙一重で躱すと、後はリオナさんの胴に木剣を振り抜くだけだった。俺の一撃が決まり、その場に蹲るリオナさん。
「そこまで!」
マリオ先生の宣言で試合が決した。俺はすかさずリオナさんに手を差し伸べる。
「大丈夫ですか?」
「やられました。最後の動きは見事過ぎですよ」
俺の手を持って立ち上がるリオナさん。それでも身体へのダメージはかなりのものらしく、木剣を杖代わりにしている。俺はリオナさんの肩を担ぐと、ラウド先生の取り仕切る試合に目を向ける。
試合はクリフさんとマッシュだった。互いに凄い連撃の打ち合いだ。頭、胴、小手、足、と互いに避け、躱し、受け止め、弾き返し、返す刀で反撃する。
マッシュとはなんだかんだで戦わずにここまできたが、クリフさんと同等の戦いが出来るのか、と感心していた。
と、突っ込んでくるクリフさんの攻撃を、マッシュは後退してスカすと、素早く前に出て上段から木剣を振り下ろす。それが見事にクリフさんの肩に決まり、それで決着となった。
最後の試合はマッシュとの対戦だ。




