表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Blade & Dragon Dance 〜月天を焦がす銀剣竜舞〜  作者: 西順


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/128

薬草採りの息子

 まずマッシュの所に行って軽く事情を話し、マリオ先生と取り次いで貰った。ボロスの学生寮にはいくつか談話室がある。その一室でマリオ先生は誰かと話をしていた。


「おお! ブレイドくん! どうしたんだい?」


 マリオ先生は席を立ってこちらに歩み寄ってくれたが、話し中に立ち入るのは無礼だろう。


「いえ、お話し中なら後で時間を取って貰えれば……」


 俺が談話室の外で待っていようとすると、


「はは、丁度君の事を話していたんだよ」


 俺の事を?


「ダンヒル卿。彼がランデル・パーシヴァル殿のご子息であらせられる、ブレイド・パーシヴァルくんですよ」


 またパーシヴァル云々(うんぬん)って話か。ダンヒル卿と呼ばれた茶色の立派な口髭を生やしたおじさんはそう聞くと席を立ち上がって俺に一礼してくれた。連れて俺も一礼してしまう。


「君がランデル様のお子さんか。確かに若い頃のランデル様に良く似ている」


 どうやらダンヒル卿は、俺の父の若い頃を知っているようだ。


「ランデルくん、この方は元老院に籍を置く、ダンヒル・マクサン卿だ」


 元老院。確かボロス王国の最高意志決定機関だったな。ガラクで言えば貴族院に当たる。ガラクのように貴族院と平民院の二院制ではなく、元老院だけの一院制らしいけど。中央のお偉いさんが俺に何用?


「ブレイドくん」


 警戒する俺の気持ちを(ほぐ)すように、笑顔を見せるダンヒル卿。連れて俺も笑顔になるが、きっと引き攣っている事だろう。


「マリオからランデル様が薬草採りなんて、底辺の仕事をさせられていると聞いた。本当かい?」


「はあ」


「なんて事だ!! 古くより名家として国を下支えしてきたパーシヴァル家に何と言う仕打ちだ!」


 またこれか。


「ブレイドくん、君や君の家族さえ良ければ、ボロス王国の一角に拝領出来るように取り図ろう」


 はい!?


「ウチを、貴族として取り図ろうって事ですか!?」


「そう言っているつもりだが?」


 何か話がどんどんデカくなっていくなあ。家柄だけで何の功績も上げていない我が家を、貴族の末席に加えたい、ねえ。それだけパーシヴァルの名は影響力があるって事か。だが。


「お断りさせて頂きます」


 俺の毅然とした態度に、ダンヒル卿もマリオ先生もマッシュも、声を殺して驚いている。


「何故だ!? 貴族に成れるんだぞ!?」


 そう言われてもな。十六年平民として暮らしてきて、特に平民だからと差別された事もなければ、貴族の生活が羨ましいな、と思った事もないしな。


「取り敢えず、そう言う事は国を通して、父に正式に申し入れて下さい」


 押し黙るダンヒル卿。恐らく俺の言質を取って、ここから父を崩そうとでも考えていたのだろう。そうはさせない。


「そうか。だが、これは我がボロス王国の意向であると受け取っておいてくれ」


 ダンヒル卿一人の先走りじゃないと? 本当かどうか俺には判断出来ないな。


「そう言えばブレイドくん、私に何か話したい事があってここまで来たんじゃないのかい?」


 貴族やら拝領云々の話が一段落した所で、マリオ先生が話し掛けてきた。


「そうでした。これなんですけど」


 俺は腰バッグから(くだん)の聖水が入った小瓶を取り出して見せる。


「聖水がどうかしたのか?」


 どうやらこの小瓶は聖水用のもので間違いないようだ。


「これ、中身が魔剤なんです」


「何だって!?」


 三人の驚きは相当なものだった。



 俺はマリオ先生とダンヒル卿に事のあらましを話した。マッシュは談話室に誰も入ってこないようにドアの前で見張りだ。


「魔剤か。本当なんだね?」


「薬草採りと錬金術師の息子ですから、間違いありません」


「そう言えば奥方のスィード様は優秀な魔法使いであり、錬金術師だったな」


 父母の勇名を異国で聞く事になるとは、変な気持ちだ。


「他に何か言っていなかったかい?」


「大教会で集会があるので待っていると。指定日時は対外試合最終日の午後。俺がパーシヴァルだと知っていたので、対外試合に参加していた誰かから情報を手に入れたのかと」


「分かった。その日に大教会で集会を行う派閥がどこか調べておこう」


「派閥、ですか?」


 俺は首を傾げる。俺の疑問にダンヒル卿が答えてくれた。


「ウロ教にも色々派閥があるんだ。ウロ教だからと言って一枚岩ではないのだろよ。今回こんな事をしでかしたのは、マール司教派か、はたまたデウニス司教派だろう。この二人は大司教の座を狙っていて、派閥の権力を増強するのに躍起になっているからな」


 どこもかしこも権力闘争か。貴族も教会も大変だな。俺は証拠である魔剤の入った小瓶をダンヒル卿に渡すと、後を任せて談話室を退室した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ