パーシヴァル
かつてこの大陸を統一した王国があった。伝説に名を残すその王国の名を、『レグルス王国』と言う。
この偉大な王国を一代で築いた偉大な王を、アルスル・パンドレイク大王と言い、現在世界に散らばる数ある国々が、その祖をアルスル大王としており、数千年も昔の伝説の人物だと言うのに、未だ人気の衰えない偉大な人物だ。
大王には十二人の優秀な忠臣がいた。その十二人の内の一人、アルスル大王と人気を二分すると言われているのが、剣聖シド・パーシヴァル。全ての剣の祖である。
「ランデル、パーシヴァル……ですか?」
マリオ先生が言っている事が飲み込めず、俺は首を傾げてしまった。
「ああ。君の剣が余りにも彼と似ていたのでね。何か所縁があるのではないかと思ったんだが」
さて、この場合なんと返答するのが正しいのだろう。逡巡する俺を、マリオ先生は期待と不安の籠った眼差しを向けている。
「パーシヴァルは知りませんけど、ランデルは俺の父ですよ」
俺の発言に練武場がざわついた。主に紺の制服を着るボロスの学生が。
「パーシヴァル……じゃない? ランデルが!?」
マリオ先生は怒りの表情をしたかと思うと、ぐりんとラウド先生の方を振り返った。
「どう言う事だ!? ガラク王国は戦争の功労者に他の土地も与えず、お家取り潰しなんて事をさせたのか!?」
う〜む。話から推測するに、俺の親はパーシヴァルと言う貴族であったようだ。だが先のボロス王国との戦争で、貴族の地位を剥奪されたらしい。
「本当に君の父親はあのランデル・パーシヴァルなのか?」
狼狽えながらラウド先生が俺に尋ねてくる。そう言われてもな。
「知りませんよ。俺の父は田舎の薬草採りで、俺自身そう接してきましたから」
「田舎で薬草採りだって!?」
俺の言葉を聞いて目をひん剥くマリオ先生。
「信じられない。なんて事をさせているんだガラク王国は! ラウド先生、これはボロス王国として正式に抗議させて貰いますよ!」
ええ!? そんな大仰な。
「そこまでしなくても。第一なんでボロス王国が父の事で他国に抗議するんですか?」
状況が掴めず、理解が追い付かない。俺は説明を求める。
「そうか、それさえもガラクでは伝えられていないのだな」
マリオ先生の話では、パーシヴァル領はガラクとボロスの丁度中間に位置し、そこには両国にとって聖域と呼ばれる場所がある為、度々戦争の火種となってきたそうだ。
先の戦争では、このパーシヴァル領の奪還がボロス王国の第一目標であったらしい。成程、じゃあボロス王国が攻めてきたから、俺ん家はお家取り潰しになったんじゃないの?
が、そもそもパーシヴァル家はボロス王家の臣下であったらしい。それが諸々あって聖域と共にガラクに取り込まれた。ボロス王国としては、パーシヴァル家も取り戻したかったようだ。
それが成らなかった上に、ガラクでは余所に領地を与えられるでもなく、お家取り潰しの憂き目にあっていた。となれば怒る気持ちも少し分かる。が、
「多分、父はそこら辺あまり気にしていないと思いますよ」
「何故だ!?」
「何故、と言われても息子の俺から見て、父が薬草採りの生活に対して、不満を口にしたのを見た事がありませんから」
驚き過ぎて口あんぐりのマリオ先生だが、実際そうなのだから俺にはこれ以上何とも言えん。
「そう……なのか」
マリオ先生はそう絞り出すように口にすると、元いた場所に戻っていった。
「驚きだな。まさか伝説のパーシヴァルの血統に会えるとは」
横で話を聞いていたヴィクトリウス王子が、からかうように話し掛けてきた。
「やめて下さいよ。伝説のパーシヴァルと家名が同じだからって、血が繋がっているとは限らないじゃないですか」
「いや、そうとも言い切れないよ」
口を挟んてきたのはマッシュ・アジールだ。
「パーシヴァル家がボロス王国建国より古い血筋である事は、国立図書館に所蔵されている古い文献から分かっている。もしかしたら本当にあのシド・パーシヴァルと血が繋がっているかも知れないよ?」
そんな事いきなり言われてもなあ。貴方は伝説の人物の子孫です。とか俺の想像の範疇を超えている。だったらどうしろって言うんだ? 俺の生活は変わるのか? いや、変わらないだろうなあ。
「それに……」
そう言ってマッシュは、俺の耳元に顔を近付けて囁く。
「伝説ではアルスル大王の妹君がシド・パーシヴァルに嫁いでいる。つまり君はアルスル大王の傍系の子孫とも言えるんだ。ボロスやガラクだけでなく、あらゆる国々が、今後君と言う存在を無視出来なくなるだろうね」
そしてニコッと笑うマッシュ。ここで更に俺を悩ませる情報をぶっ込んでくるなんて、仕合を断ったの、根に持ってるのかな。




