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Blade & Dragon Dance 〜月天を焦がす銀剣竜舞〜  作者: 西順


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対ヴィクトリウス

「どうだ? 俺と一仕合やらないか?」


 褐色の少年はひとしきりマッシュ・アジールをからかい終わると、俺に向き直った。ガンド魔剣学園の紺の制服とは違う、白くゆったりした服装から、今回の対外試合に招待された外国の学生だと分かる。


「良いんですか? 王族が平民に負けたなんて噂が立ったら、お国に帰れなくなりますよ?」


 俺がそう語ると、余程面白かったのか、褐色の少年ヴィクトリウス・ラードーンは腹を抱えて笑い出した。彼、こう見えて南国ラードーン王国の王子である。


 ヴォーパル一刀流は、伝統と格式のある流派た。だから王族を相手する事だってある。気持ちはガラクを出る前に固めてきている。大丈夫だ。俺はやれる。


「良いね、その不遜な態度。俺の国なら言った瞬間斬首だぜ?」


 それはきっと嘘じゃないんだろう。ヴィクトリウス王子の後ろに控える、王子と同じく褐色に緑髪、灰瞳の少年は俺に冷ややかな視線を投げ掛けている。


「ダグラス、そう気色ばむなよ」


 難しい顔をしているダグラス・モートンを鎮めるヴィクトリウス王子。


「しかし、王子……」


「不敬罪、なんて言うなよ。そんなもの犬にでも食わせてしまえ。ここは異国で、俺たちは強くなる為にここまで来たんだ。その為なら、負ける事だって不敬な輩との応対だって厭わんさ」


 格好いい事言う王子である。どうやら不敬な輩とは俺の事らしいが。だがこれがダグラスには効いたらしく。ダグラスは「分かりました」と一歩下がった。


「さて、ダグラスの気が変わらない内に仕合といこうか」


 ヴィクトリウス王子は俺に正対すると、腰に差していた木剣を片手で中段に構えた。ヴォーパル一刀流にしては珍しい片手持ちか。


「ふう……」


 対して俺は息を吐いて精神を整えると、両手で木剣を握り、中段に構える。



 最初は呼吸の読み合いだ。呼吸や微かな動作から次の一手を読まれないように、なるべく身体をブレさせず、鼻からゆっくり吸って口からゆっくり出す。


 初めの内は周りの景色や雑音が気になっていたのが、だんだんと王子と俺だけの世界に没入していく。先程の素振りと言い、今日は調子が良さそうだ。


 先手は俺が取らせて貰う。俺は「フッ」と短く息を吐くと、一歩踏み出しながら木剣を少し上げて、ヴィクトリウス王子の手首を狙って振り下ろす。


 しかしこれは王子に一歩後退して躱され、更に攻撃後の隙を狙ってこちらに突いてくるヴィクトリウス王子。が、この攻撃は読みやすい。俺は右に一歩避けると、振り下ろした木剣を再び振り上げ、今度はヴィクトリウス王子の頭を狙う。


「くっ」


 王子はこれを半身になって躱すが、体勢を整えるきれず、こちらに打ち返す事が出来ない。その隙を逃さず、俺は更に二撃、三撃と打ち込んでいく。


 王子はこれを体勢を崩しながらも木剣で受け止めるが、元より片手対両手である。膂力に差が出て、俺に後退させられていくヴィクトリウス王子。王子もこのままではいけないと感じたのだろう。両手に握り直すと、俺の一撃を受け止めた。


「ほう?」


 正直このまま押し切れると思っていたが、王子は本気でこの対外試合に取り組んでいるのだろう。仕合において不利になりがちな片手を辞めて、実利の両手を選んてきた。その後も二撃、三撃と木剣を打ち込むが、ヴィクトリウス王子は後退せずに受け止める。


 ここは仕切り直した方が良さそうだ、と一歩後退する俺に、追い縋るヴィクトリウス王子。王子は俺の胴を狙って木剣を薙いできた。


 それを木剣で受け止めると、今度は王子の連撃が始まる。頭、胴、手首、脚と素早い連撃が俺を襲うが、俺はそれを後退して躱し、受け止め、弾き返し、叩き落とす。


「くっ」


 脚を狙った攻撃が叩き落とされたヴィクトリウス王子だったが、木剣を手から離すまでには至らず、俺の次の攻撃に備えて、後退すると木剣を中段に構えた。


 が、直後王子は俺の姿を見失っていた。目の前にいるはずの俺の姿は見えず、目で練武場中を探すヴィクトリウス王子。ハッとして上を見たがもう遅い。


 ヴィクトリウス王子が後退したのと同時に、俺は上に飛び上がると、王子の木剣を降下の勢いそのままに切断してみせた。手元から木剣が切られたヴィクトリウス王子は、俺に喉元に木剣を突き付けられ、嘆息した後、


「まいった」


 と負けを認めたのだった。



「やるな。本当に負けるとは思わなかったぞ」


「俺も、王子の本気を見せて貰いました」


「嫌味か?」


「違いますよ」


 そんなやり取りをしながら、俺はヴィクトリウス王子と握手を交わす。


「あ〜、ブレイドくん、だったかな?」


 王子と握手を交わす俺に、また別の人間が声を掛けてきた。今回の招待国であるボロス王国側の先生だ。水色髪に同色の瞳をした、名前は確かマリオ・トールズ先生。


「ランデル・パーシヴァルと言う名に覚えはあるかな?」


 マリオ先生は俺にそう尋ねてきた。


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