対サンダースタッグ
「何だこれ!?」
アインにしては珍しく、素っ頓狂な声を上げた。
「どうかしたのか?」
俺の声に応えるでもなく、アインは方位磁石を見続けているので、俺たちもその方位磁石を覗く。と針がぐるぐると回って一方向を指し示していなかった。
俺たちは慌てて自分の方位磁石を取り出すが、どれもアインのものと同じようにぐるぐる回るばかりだ。
「どうなってるの!?」
マイヤーが声を荒げるが、気持ちは俺たちも一緒だ。
「分からない。南の森の中に方位磁石が利かなくなる場所があるなんて、聞いた事がない」
とショーン。確かに。しかしそうなると、
「魔物の仕業か」
俺の呟きに呼応するように、冷たい風が森を吹き抜けた。
「皆構えろ。何かいるぞ」
五人で背中をカバーしつつ、周囲を警戒していると、バリッと肌が粟立つ感覚がする。
「散れ!」
俺の言葉に五人がその場から四散すると、俺たちがいた場所に特大の雷撃が落とされた。驚く俺たちを嘲笑うかのように、更に二度、三度と雷撃が襲い掛かってくる。
「この攻撃! サンダースタッグか!」
周囲を警戒すると、木々の向こうから、俺たちを狙う影が見付かった。大きな二本角に電雷を纏わせた、巨大な鹿だ。それも何頭もいて、いつの間にか四方を囲まれていた。方位磁石が狂わされたのもこいつらの電雷のせいだったようだ。
「どうする?」
とカルロス。
「やるしかないだろう」
サンダースタッグを倒すなり追い払うなりしなければ、方位磁石が狂ったままで、森を抜け出せないのだ。倒す以外の選択肢がない。
俺たちは目配せすると、俺とアイン、カルロスとマイヤーとショーンの二手に別れ、的を絞らせないようにして、サンダースタッグに突撃していく。
サンダースタッグもそれに臆する事なく、雷撃で攻撃してくる。俺たちはそれをブーストで身体強化して最小限の動きで躱すと、サンダースタッグに急接近する。俺たちの接近を許したサンダースタッグは、電雷を纏った角で攻撃してこようと突進してきたので、それを直前で身を翻して躱し、ザンッと木剣と槍で首を切り落とした。まずは一頭。
と息を吐く暇も与えず、次なるサンダースタッグが電撃を放ってくる。それを斜め前方に飛んて避けると、俺とアインはそのサンダースタッグに接近していく。
すると前脚を踏み鳴らすサンダースタッグ。その踏み鳴らされた前脚をから地面を伝って雷撃が放電され、俺たちは痺れて動けなくなってしまう。
それを見て嘲るように嘶くサンダースタッグ。
「フ、ファイア・スピアー!」
アインが火の槍を撃ち出すが、サンダースタッグの電雷に防がれてしまった。なら俺のファイア・スピアーを食らいな。
「ファイア・スピアー!」
先日のダン先生の授業で強化された俺のファイア・スピアーは、まず最初に後部を爆発させて、それを推進力に猛スピードでサンダースタッグに迫り、サンダースタッグを貫いた。
「……助かった」
いやアイン、顔が滅茶苦茶悔しそうですけど? しかしサンダースタッグから受けた電撃のせいで、まだ身体が痺れて思うように動かせない。
何とかカルロスたちの方を振り向くと、あっちも俺たちと同じような事になっていた。
「くっ、ファイア・スピアー!」
俺は改良版のファイア・スピアーを、カルロスたちに迫るサンダースタッグに放つ。すると奴もこれぐらい防げると考えたのか、まんまと貫かれたのだった。
これを見て他のサンダースタッグが逃げ出すかと思ったのだが、さにあらず。奴らは標的を俺と見定めて雷撃で攻撃してきたのだ。
俺はそれを上手く動かない体をゴロゴロ転がしながら、避けていき、そしてファイア・スピアーをどんどん放っていく。はっきり言って狙いなんてまるで定まらない。それでもゴロゴロ転がりながらファイア・スピアーを放ち続ける。俺が止まったのは、どこからも雷撃が来なくなってからだった。
「うへえ、気持ち悪い」
結局倒したサンダースタッグの数は十二頭に上った。それ以上いたのかは知らない。方位磁石が正常に戻ったので問題ないだろう。俺はゴロゴロ回転し過ぎて平衡感覚が使い物にならなくなったので、しばらくその場で休息を取る必要になったのだった。




