表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Blade & Dragon Dance 〜月天を焦がす銀剣竜舞〜  作者: 西順


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/128

魔法の授業にて

 春の長雨が雪を融かし、世界が白から緑に変化していくこの頃。学院の授業で俺たち一年生は魔法実験室に来ていた。後期になって魔法実験室に来る回数が増えた。ガトー会長の公約にあった通り、魔法の授業が増えたからだ。


「えー、……ですから、えー、……であり、えー……」


 魔法の授業を進めるダン先生だったが、相変わらず何言ってるんだか聞き取れない。


「先生、良く聞こえません!」


 そしてそんなダン先生に苦言を呈するショーンが、我がクラスの名物になっていた。


「えー、つまり、えー、魔法はイメージ、えー、想像力が大事と言う事です」


 大雑把にまとめたな。だがその通りで、魔法は想像力を触媒にして、魔力がこの世界に顕現したものだと言われている。言ってしまえば想像力さえ確かならば、呪文を唱えると言う行為も必要ない。では何故皆呪文を唱えるのか。


 それは格好いいから。ではなく。魔法のイメージを固着させる為だ。人間は考える生き物である。では考える時どのように考えるか。言葉で考えるのだ。『赤』と想像する時、赤い色と同時に赤と言う単語を想像するのが人間だ。


 実際には赤にも血のような真っ赤やら、ピンクに近い赤やオレンジに近い赤、紫に近い赤など、色々あるわけだが、今羅列したように、そう言ったイメージを想起させるのもまた言葉による部分が少なくない。なので学院には図書館が併設されており、様々な書物が所狭しと本棚に並べられている。


 しかしイメージを想起させるのは、何も言葉だけによるものではなく、実際に目で見て、または体感する事で、より強く映像として脳内に固着させる事が可能である。なので今日は呪文を唱えずに魔法を行使する授業だ。多分。


 説明を終えたダン先生が指を立てると、俺たちの前に、背丈より頭一つ高い土壁が現れる。ダン先生が無詠唱でアース・ウォールを顕現させたのだ。


「えー、戦場では、えー、呪文を唱える、えー、行為自体が、えー、憚られる、えー、場面と言うのが、えー、往々にして存在します。えー、なので、えー、呪文を唱えなくても、えー、強い魔法が行使出来るように、えー、なりましょう」


 はっきりしゃべられても、「えー」が多くて、何言ってるんだが分からないんだよなあ。取り敢えず無詠唱で魔法を行使すれば良いのか? と、一年生たちは周りの他の学生たちの様子を窺ってわたわたしている。そして何故か視線が徐々に俺に集中してくる。う~む、何か俺悪目立ちしている気がするんだよなあ。


 そう思いながらも俺は一歩前に出ると、無詠唱でファイア・アローを放った。一本の火の矢が土壁へと飛んでいき、当たって弾けて土壁を少し焦がしながら少し削る。これが正答なのか分からず、ちらりとダン先生の方を見ると、うんうんと頷いているので、これで合っているらしい。


 こうなってくると、学生たちは我先に無詠唱で魔法を行使し始めるが、流石は名門に合格した学生たちである。無詠唱でもバンバン魔法を放っていく。一通り学生たちが魔法を放ち終わった所で、またダン先生が口を開く。


「えー、皆さん、えー、無詠唱でも魔法が、えー、使えるようなので、えー、今度は、えー、威力を上げましょう」


 ダン先生はそう言うと、自ら作り出した土壁へ向かって片手を翳し、ファイア・アローを放った。無詠唱で放たれたファイア・アローは、俺たちのへなちょこアローとは違い、土壁を貫通してみせる。「おお……」と一年生たちの口から低い唸り声が洩れる。


「えー、では皆さん、えー、頑張って下さい」


 先生にそう言われ、皆それぞれ無詠唱でファイア・アローやらウォーター・アローやら、アロー系を放っていくが、やはり土壁を削るのがやっとで、貫通や破壊するには至らない。それはそうだろう。魔法の威力は無詠唱の場合、詠唱した時と比べ、半分に軽減される。とショーンやカルロスが言っていた。人によっては更に威力が低くなるらしい。


 今回の授業はその軽減される無詠唱魔法の威力を、出来るだけ詠唱魔法と同レベルまで引き上げる授業であるらしい。その為には確固としたイメージが必要だ。


 ファイア・アローは基本的な魔法だ。俺のイメージとしては、木で出来た矢を火に置換して矢を放っている。最初の頃はただ火の矢を飛ばすだけでも難しく、弓を使って飛ばしていたなあ。それが段々と弓を使わなくても放てるようになって、火の矢の数も増えていって……。と、感傷に浸っている場合じゃなかった。


 つまり、弓を使わずに、弓で引いて放つようにファイア・アローを放てるようになったのと同様に、今回のファイア・アローも熟練度が必要って事か? う~む、何か違う気がするような、合っているような。


 俺は皆が魔法の威力を上げようと、魔法を放っているのを見ながら、思案を巡らせていた。魔法はどれも土壁に当たると炸裂している。これは威力を上げる効果があるので当然だ。そもそも魔法には何故か爆ぜる効果が付随しているのだ。魔力自体が持つ性質らしく、魔核を持たない人間などが、体内に魔力を保持し続けられない理由の一つと考えられている。


 ふむ。爆ぜる、か。ハッ! 俺は今閃いてしまった! この発想を大事にして、イメージに落とし込む。魔法そのものに爆ぜる性質があるのなら、最初に爆ぜさせれば良いのではないか?


 俺は眼前の土壁に向けて手を翳すと、火の矢を想像する。そして違うのはここから。火の矢はまず最初に後部の矢羽(やばね)矢筈(やはず)の部分を破裂させる。それを推進力に変えると、猛進して土壁にぶち当たり、今までより大きく爆発を起こした。やはり、俺の考えは正しかった。これはいけるんじゃないか?


「ほう? えー、私とは違いますけど、えー、中々面白い解決法だと思いますよ」


 ダン先生が褒めてくれた。ふむ。だが、ダン先生とはやり方が、イメージが違っていたようだ。と言う事はダン先生のファイア・アローのやり方を吸収すれば、俺のファイア・アローはもっと威力が上がると言う事か。


 しかしイメージと言うのは中々他人に伝え辛いものだ。何かキッカケがないだろうか? ハッ! 先生がファイア・アローで貫通させた土壁にヒントがあるんじゃ? 俺は急いで土壁を凝視したが、俺の新ファイア・アローでボロボロになっていた。俺のバカ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ