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Blade & Dragon Dance 〜月天を焦がす銀剣竜舞〜  作者: 西順


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対スノーマン?

 結局二十騎集まった竜狩りは半分が、メラニゲルを恐れてスノーマン討伐に出なかった。十騎の竜狩りに加え、俺とリオナさんの計十二騎で北の山に向かう。


 北の山は分厚い曇天に覆われ、既に吹雪き始めていた。雪を伴った暴風が行く手を阻む。山肌に人型やら獣型のスノーマンの姿が見えるのだが、吹雪で近付く事が出来ない。仕方なく俺たちは北の山の麓に降り立ち、そこから登っていく選択をしなければならなかった。


「凄い風と雪ですね!」


 アルジェントに乗りながら山を登る俺に、シエロに乗ったままのリオナさんが話し掛けてくるのだが、風雪が強く横を行く俺に対して、叫ぶように話し掛けてこざる得ない。


「ええ! それに! ファイア・アロー!」


 登って行けば行く程、スノーマンが押し寄せてくる。この吹雪の中だというのに、スノーマンはその影響をまるで受けていないようで、走ってこちらに寄ってくるのだ。


「シエロ!」


「アルジェント!」


 シエロが疾風のブレスを吹いて獣型のスノーマンを切り刻み、アルジェントが身体に取り付こうとしてくる人型のスノーマンをその尾でもって弾き飛ばす。他の竜狩りたちも同様で、襲い来るスノーマンたちを竜と魔法で続々と撃破していく。


 しかし数が多い。千体いると言うのもあながち誇張ではなさそうだ。どんどん山上からこちらにやってくる。それに種類も多い。オーソドックスな人型を始め、獣型も犬型、猫型、熊に猪、鹿など、山に住む獣を網羅しているのではないか? と言う程だ。更には鳥型なんて言う珍しいのまでいやがる。こんな事態は近くで住んでいる俺も始めての事だ。


 俺たちは吹雪の中、はぐれないように固まって移動するが、山頂を目指す訳にもいかない。山頂にはメラニゲルがいるかも知れないからだ。こんな吹雪の中で出会えば、生きては帰れないだろう。


 スノーマンは単体では強い魔物ではない。所詮雪の塊だからだ。だから普通スノーマンは人間を見ても襲って来たりしない。ましてや竜に乗っている竜狩りを襲って来るのは異常事態だ。


「何でしょうか? スノーマンたちからは切羽詰まったものを感じます!」


 リオナさんの意見に同意だ。スノーマンたちは山上から何だか逃げてきている風に感じる。そしてそれは俺たちより上位の存在のように思える。だからこそスノーマンたちは俺たちに恐怖を覚える事なく、襲い掛かってくるのではないか。そう思えてならない。



「ファイア・アロー!」


 数十の火の矢がスノーマンたちに向かって飛んでいき、着弾と同時に高熱で水蒸気爆発を起こす。これで何十度目か。相当数のスノーマンを討伐したはずだ。事実スノーマンの数は最初に比べて目に見えて減少している。なのに吹雪は一向に収まる気配を見せず、それどころか更に風雪を強めている気がした。


「ガアアアアアアッッ!!」


 そこに突如として咆哮が轟き渡る。木々を揺らし、積もった雪を落とす。心の底から凍えるような咆哮だ。スノーマンたちはこの咆哮に恐れをなして霧散していった。成程、この咆哮の主が俺たちより強者なのだろう。そしてこの咆哮に呼応するように吹雪がその勢いを増した。


 直ぐ側にいるはずの、リオナさんや竜狩りたちの姿さえ見えなくなる程の猛吹雪。そこにドシンドシンと言う震動が近付いてくる。恐らく巨大な何かの足音だろう。が、しかし認めたくない。この震動の大きさからして、それはアルジェントより圧倒的に巨大な何かであると推測出来るからだ。


「ガアアアアアアアッッ!!」


 二度目の咆哮は俺たちの直ぐ側で轟いた。


「避けろ!!」


 背筋が凍るその気配に、俺は周りにいるはずの竜狩りたちに危険を報せようと、吠えていた。同時にアルジェントが踵を返して、その場から飛び退いて山を下りようとした所に、俺たちがさっきまでいた場所に、牙が突き立てられる。


 巨大な顎はアルジェントごと俺を飲み込む程に大きなもので、吹雪で視界が閉ざされている中、その一撃にゾッとした。


「ブレイド殿!?」


 リオナさんが心配して叫んでいる。


「大丈夫だ! それより逃げてくれ!」


 これ程視界が不明瞭では、敵が何であれ俺たちには戦いようがない。俺はリオナさんや他の竜狩りたちが無事である事を願いつつ、アルジェントにしがみついて山を駆け下りていく。



「はあ……、はあ……、はあ……」


 麓まで下りると、吹雪はある程度マシになったものの、いまだ風雪は強く、周りを見渡すと、竜狩りの姿は半分になっていた。そしてその中にリオナさんとシエロの姿が見当たらない。まさかあの得体の知れない怪物に食われてしまったのだろうか?


 そう不安に思いながら北の山を見上げていると、ダッダッダッダッと何かが駆けてくる足音が聴こえてくる。そちらに視線を向けると、シエロとリオナさんだ。ホッとしたのも束の間、


「逃げて下さい!!」


 叫ぶリオナさんの向こうに、巨大な白い影が浮かんで見える。その影が大きな口を開いてリオナさんとシエロを飲み込もうとしていた。


「アルジェント!」


 俺はアルジェントに素早く魔核を飲ませると、チープ・バーストを白い影に向かって吐き出させた。空気を焦がす破裂音と共に高熱のブレスが白い影に吸い込まれるように向かっていく。


 アルジェントのチープ・バーストを受けて巨体の頭が爆発四散する。やったか!? と一瞬喜びそうになるが、四散した白い影の頭は、周りの雪を吸収してその姿を再生させていく。


「すみません! 引き連れてきてしまいました!」


 謝っているが、俺からしたら生きていてくれただけで上々だ。


「反省は後にしよう! ここより先には家が点在している! 逃げられないぞ!」


 俺の言葉に、リオナさんや竜狩りたちが気を引き締めて首肯する。


「ガアアアアアアッ!!」


 吠える白い影の姿は、正しく竜のものだった。言わばスノードラゴンと言った所か。その事に震える。身体が雪で出来ている事から、こいつもスノーマンの一種だろう事が窺えるが、スノーマンとは、死霊の一種だ。死んだ魔物の魔核が、何らかの要因で再活性化して雪の身体を得たものだ。


 つまりこいつを殺したヤバイ奴があの北の山にいるのだろう。十中八九メラニゲルだろうが。何とも面倒なものを生み出してくれたものだ。しかし今はそんな事を考えている場合ではない。


「ブレスを!」


 全員に指示してブレスをスノードラゴンにぶつけるが、スノードラゴンはそれらを気にする事なくこちらに向かってくる。当たった所は爆発を起こして四散していくのだが、それよりもスノードラゴンの再生力が上回っている。壊れたそばから再生していく。


「こんな奴どうやって倒せって言うんだ!?」


 竜狩りの一人が悲鳴のように叫ぶが、それでも俺たちがやらなきゃいけないのだ。


「ガアアアアアアッ!!」


 スノードラゴンの牙が眼前に迫っていた。アルジェントはそれを横に跳躍して躱すが、そこを狙ったようにスノードラゴンの尾が振り回され、俺たちは吹き飛ばされた。


「ぐべっ」


 雪原に放り出される俺とアルジェント。吹雪のせいで空を飛べないのが辛い。そんな俺たちを狙い、スノードラゴンが追撃してくる。大きな口を開けて、今にも俺たちを飲み込もうとする所に、リオナさんとシエロが割り込んだ。


 リオナさんとシエロが殺される。と思った。が、同時にこれをアルジェントが見逃すだろうか? と言う思考が割り込んだ。アルジェントはこんな逆境で決して諦めないやつだ。俺の手は自然と動いていた。腰バッグから魔核の入った袋を宙に放り投げると、アルジェントは待ってましたとばかりにそれに食らいつく。


 時間勝負だった。リオナさんとシエロがスノードラゴンに食べられたのと、アルジェントがいつもの数倍の威力のチープ・バーストを放ったのは。


 運が良かった。アルジェントのチープ・バーストがいつもの数倍の幅があった事で、運良くスノードラゴンの体内の魔核の端を砕く事に成功したのだ。


 途端にスノードラゴンは全身を瓦解させて雪の塊と変わり、それに伴い吹雪は収まっていった。


「リオナさん!」


 その中で俺はアルジェントと一緒になって、スノードラゴンだった雪塊を掻き分けていた。何とかリオナさんとシエロを雪塊の中から探し当てたが、両者ピクリとも動かない。


「嘘……だろ?」


 俺が恐る恐るリオナさんに触ると、


「がはっ!」


 息を吹き返すリオナさん。その下でシエロももぞもぞと動き出した。


「……心配させないで下さいよリオナさん」


「……泣いてるんですか?」


「泣いてません」


 空は雲が霧散を始め、その隙間から陽光が幾条も降り注いでいた。


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