下っ端の仕事
それからの日々は目まぐるしい忙しさだった。庶務として学生会には毎日顔を出さねばならず、カルロスと分担して各委員会を回り、そこで話し合われた議事録を学生会に持って帰ったり、決闘委員会の設立の為に、学生会や教師陣、決闘委員会の委員長に選出されたレインさんとで集まり、日が暮れるまで議論が交わされた。
お陰で俺は毎日夜になってからの帰宅となり、このままでは修練の時間が取れない、かと言って学生会を抜ける事も出来ないと判断した俺は、友人を巻き込む事にした。
「マイヤー・タッカートです」
「アイン・アイボリーです」
「ショーン・ボタニックです」
かくして三名の庶務が学生会に加わり、俺は決闘委員会の設立にのみ専念する事が出来るようになった。
冬休みまで間もないので、決闘委員会の本格始動は冬休み明けの後期からと決まったが、それまでにやらなければならない事がある。『格付け』だ。
これには難儀した。まず学院に通う貴族の多数が所属する、『サロン』の人間がそれとなく色々言ってきたからだ。どうやら彼らは選民意識が強いらしく、自分たちが格付けで平民より下に置かれるのを凄く嫌った。
次に魔法実験室や各武術の流派、それに竜乗りたちが探りを入れてきた。自分たちが格付けでどれくらいの位置にあるかは、重要な事らしい。
なので俺とクリフさんで片っ端から決闘に持ち込んだ。結局の所、書類上でどれだけ自分を大きく見せた所で、実際決闘になった時に力不足で笑い者になるのは本人たちなのだ。それなのに恐らく本人たちは決闘委員会を恨むだろう。なのでその芽を早い段階で摘み取り、格付けに関しては門外不出として、決闘委員会と学生会の人間以外閲覧不可と決められた。
この決闘は意外な効果をもたらした。格付けを確定するのに有効に働いたのだ。なので俺やクリフさんが格付けの基準値となり、俺たちより強い者と弱い者に分けられた。
段階は一先ず五段階に分けられ、上から赤、橙、黄、緑、青。俺やクリフさんは上から二番目の橙に位置付けられ、エドワード会長やアーネストさんは俺たちの上の赤。アインは同格の橙で、マイヤーは一段下の黄。決闘祭で戦わなかったカルロスやショーンは、一先ず一番下の青に位置付けられた。
格付けは決闘祭の順位や授業内容、実際の決闘の内容などで随時上下していく。が、当然これも一般の学生には伏せられる。決闘委員会の者が格付けなどを外部に漏らした場合、即刻決闘委員会を脱会する事になった。こうして門外不出の格付けがなんとか完成したのである。
「はあ〜、終わった〜」
冬休み。学生会業務を終わらせ、後期の始業式を待つだけとなった俺は、家の暖炉の前を占領すると、火を熾し爆ぜる薪に向かって手を翳す。暖かい。
「ふん、だらだらするんじゃない。外に出て雪掻きしてこい」
「ええ? 学生会の仕事頑張ったのに、ヒドくない?」
父の苦言に文句を付けるが、睨まれたのですごすごと俺は暖炉から離れ、玄関脇に立て掛けられていたスコップを持って外に出た。
外は雪が降り積もり、凍える寒さだ。俺は「よし!」と気合いを入れると、玄関前に降り積もった雪を掻き出していく。
「ブレイド殿! 雪掻きお手伝いします!」
雪掻きを始めて直ぐに、リオナさんが雪掻きの手伝いを申し出てくれた。ありがたい。そしてリオナさんはこんな真冬に突入しても実家には帰らないようだ。ナオミさんも追従して我が家に残り、家事の色々を手伝ってくれている。
玄関周りの雪掻きが終わったら、そこから竜舎に向けて道を作っていき、竜舎周りの雪掻きを終えると、屋根に登り雪下ろしをしていく。雪の中の作業は大変で、全て終わるとくたくたになった。
「ブレイド殿! この後、剣の修練に付き合って貰えませんか?」
え? マジで? しかし雪掻きを手伝って貰った手前断る事も出来ず、曇天の寒空の下、玄関前の雪掻きをして地面が剥き出しになった場所で、俺はリオナさんと木剣を打ち合った。
打ち合って直ぐに気付いた。リオナさんが成長している事に。俺だって学生会業務にかまけて修練をサボっていた訳じゃない。決闘もしていたので、実力が下がった訳でもなかっただろうに、リオナさんに押し込まれる場面が多々あった。
ヤバいなこれは。冬休みの間みっちり鍛え直さないと、周りから置いてきぼりを食らってしまいそうだ。




