会長選出
その後、立候補者たちによる呼び掛けはより盛んになり、それらを取り囲む投票者たちの輪も日増しに大きくなっていった。
あちこちで会長選挙の議論が交わされ、時にそれは決闘にまで至る大事に発展した。それを見掛ける度に周囲で決闘委員会の設立に前向きな声が上がり、その都度立候補者たちは決闘委員会の是非を語り、投票者たちは疑問をぶつける。
「こんなに活発で先の読めない会長選挙は、長年この学院に勤めていますが、初めてです」
そう語るのはポーリン先生だ。それを聞いた俺の感想は、意外と年齢いってたんだな。と言う失礼なものだったが。
「このような活発な意見交換が、貴族平民関係なく、学生間で交わされていると知れば、王もお喜びになるでしょう。その最初の一歩を踏み出したブレイドくんには感謝するしかないですね」
褒められるのは嫌いじゃない。まあ、俺が口を出した事で大事に発展してしまった感は否めないが。
「ポーリン先生! 向こうで学生たちがケンカになりそうです!」
そんなポーリン先生を、二人の女学生が駆けて呼びにきた。どの学校でもそうだろうが、このネビュラ学院でも私闘は禁止されている。どうしても互いに譲れないものがある場合は、先生立ち会いの下、決闘と言う形式になるのがこの学院の特徴た。だからこそ譲れない会長選挙期間は決闘が多くなり、先生たちも休む暇もない。
「決闘委員会が設立されて、この状況が少しはマシになれば良いんですけど」
ポーリン先生の愚痴に、俺は空笑いを返すしかなかった。
そんな選挙期間が十日程続き、決戦の投票日。投票所となったホールには長蛇の列が作られ、粛々と投票箱に立候補者の名前の書かれた紙が入れられていった。投票箱は当日開票され、その日の内に会長が選出された。
「俺への数多くの投票ありがとうございました」
会長に選出されたのは、有効得票の31%を獲得した、青緑の髪に群青の瞳を持つ三年生のガトー・ブランさんだ。誰だそれは? って? 甘そうな名前だが、食いしん坊さんではなく、魔法実験室からの刺客だ。
彼が掲げたのは魔法の復権だ。ガトーさん曰く、現在のネビュラ学院は、魔法より武術や騎竜が持て囃されている傾向にあるそうだ。この是正の為に、ガトーさんは後期より魔法の実践の授業が多くなるように教師陣に働き掛けると言う。
気になるのは決闘祭と決闘委員会の事だが、ガトーさんは決闘祭でのブースト使用を二回までと制限し、決闘委員会を設立する事にも前向きで、今後決闘委員会を含め、学生会の役員や各委員会のトップなどを数日の内に決定して発布するそうだ。
で、俺は何故学生会の役員室に呼ばれているのだろう。俺の横にはカルロスも並び立っている。
「庶務……ですか?」
会長の椅子に座るガトーさんは、にこりと笑いながら俺たちに打診してきた。しかし庶務か。何をする役職なのだろうか?
「やります! やらせて下さい!」
俺が思案を巡らせている数瞬の内に、カルロスか返事をしていた。驚きである。
「おい! カルロス!?」
俺が驚きのまま声を掛けると、カルロスか俺の肩を組んで耳打ちしてくる。
「これはチャンスだブレイド。例え庶務みたいな下っ端だろうが、ネビュラ学院の学生会に従事したとなれば、今後エリートコース確定だぞ!」
打算で返事をしたようだ。俺はどうしたものか。
「他の役員はどうなってるんですか?」
俺の質問は想定内だったようで、ガトーさんは笑みを深める。
「副会長にはクリフに打診して了承を得ている。書記にイーリスさん。会計にペックくんだ」
「レインさんは除外したんですね」
「彼女は決闘委員会の委員長だ。それが彼女の望みだろうからな」
成程、まあ、それはそうなるか。ちなみにペックさんと言うのが食いしん坊さんだ。
「庶務になると言う事は、下っ端らしく、各委員会との折衝の下準備も仕事に入ってくるんですか?」
「察しがいいな。決闘委員会は新設の委員会だ。色々やり取りする事も多くなるだろう。君は設立に一枚噛んでいるんだ。やってくれるよな?」
断らせないつもりだな。
「俺は通いです。一般コースを受けたら、研究コースを受けずに帰るくらい遠いんですけど?」
「そうか、引き受けてくれるか。頼もしいな」
人の話を聞いてくれ。どうやら俺は役員室に入った段階で、退路を塞がれていたようだ。
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