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Blade & Dragon Dance 〜月天を焦がす銀剣竜舞〜  作者: 西順


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討論会その2

「では、レイン候補の公約にある決闘委員会について議題を移したいと思います。レイン候補からその説明をお願いします」


 ホールの学生たちがレイン候補に注目する。レイン候補は深く深呼吸してから、口を開いた。


「この学院の決闘は不平等です。最上級生の四年生と最下級生の一年生では、個人差はあれど、その実力に天と地程の差があり、その中で決闘をさせられるのは、理不尽を受け入れろ言うに等しい。私はこれを是正する為に、決闘を管理する決闘委員会の設立を公約に掲げました」


 レイン候補が話し出して、既にイーリス候補がイライラしている。


「全ての決闘は決闘委員会の管理下によってのみ成立し、例え先生の立ち会いがあったとしても、委員会が許可しなかった決闘は私闘と看做(みな)します」


 レイン候補が話を進める程にホールはザワザワとしていく。皆、現状の決闘のシステムには思う所があるのだろう。


「決闘委員会は決闘者が本当に同意している場合のみ決闘を受理し、彼我(ひが)の戦力差を鑑みて、場合によっては代役や増員を認めます」


 更にザワつくホールの学生たち。ここでイーリス候補が口を開く。


「レインさん、貴女は決定的な事を話していらっしゃらないのではないかしら? その決闘委員会を運営する為に、学生たちを格付けすると言ったではないですか」


 イーリス候補のこの発言に、ホールの学生たちからは、「どういう事だ?」や「しっかり説明しろ」など声が飛び始めた。


「そうです。決闘をより公平なシステムにする為、私は全学生を格付けする事が必要だと思っています」


 冷静に応答するレイン候補に対して、イーリス候補は更にイライラを募らせて声を荒げる。


「皆さんも知っての通り、この王立ネビュラ魔剣学院は、貴族であれ平民であれ、実力さえあれば誰でも入学出来る稀有な学校です。それは『王立』と冠している通り、王自らがこの校風を是として、これを学院が遵守している証左です。なのに広く門戸を開いているこの学院に、格差を持ち込むなんて、それこそ不平等を生む考えだわ!」


 イーリス候補の発言に、ホールで拍手が起こるが、それは疎らなものだった。恐らく拍手したのは貴族の学生たちだろう。平民の学生たちは未だにじっとこちらを様子を窺っている。


「俺は、決闘委員会にも格付けにも賛成だ」


 そう口にしたのはクリフさんだ。


「確かに今の決闘には強者が弱者を搾取するような側面がある、と俺も思っていた。決闘委員会の設立や格付けを行えば、少なくともこの現状をひっくり返す事にはなるだろう」


 ふむ。クリフさんのこの発言に、ガイウスも、先程ガイウスと口論を交わした魔法実験室からの刺客も頷いている。同意見のようだ。


「が、決闘委員会を設立するつもりなら、トップは強者であるべきだ! なので俺が会長になった暁には決闘委員会を設立するとここに明言しよう!」


 クリフさんの自己アピールだった。だが学生たちの受けは良かったようで、ホールが沸いている。


「由緒ある学院を汚す事になるですよ?」


 イーリス候補は信じられないって顔だ。


「イーリスさん、別に俺たちは学院の門戸を閉ざそうって訳じゃない。貴女の周りではどうか知らないが、俺の周りにも確かに貴族優遇を口にする奴はいるし、力で弱者を黙らせる奴も知っている。この決闘委員会の設立は、そいつらを黙らせる嚆矢(こうし)になるだろう」


 魔法実験室からの刺客は諭すようにイーリス候補に語り掛ける。閉口するイーリス候補。イーリス候補も見て見ぬふりをしてきただけで、それがあるのは分かっているのだろう。


「でも、時期早尚じゃないかな?」


 そこで口を開いたのは、なんと学食二倍の食いしん坊さんだ。


「学院外の決闘では代役は良く使われているみたいだけど、決闘の代行者が貴族の飼い犬に成り下がっているって話もあるしね。新しい事だから、ここは慎重に事を運ぶ必要があると思う」


 意外と真っ当じゃないか食いしん坊さん。真っ当過ぎて他の立候補者たちが狼狽えているぞ。


「だからこそ設立する価値があるんじゃないか。一度設立してみなければ、その本当の価値も改善点も見えてこない」


 と魔法実験室からの刺客。それに対して食い下がる食いしん坊さん。レイン候補とイーリス候補の一騎打ちになるかと思っていたから、まさかこの二人の言い合いになるとは、討論会もやってみないと分からないものだ。


 本来なら、レイン候補もこの二人も、単なる泡沫候補として隅に追いやられていたはずだが、討論会の意外な効果が現れたな。ホールの学生たちも、この二人の口論に見入っている。ここを好機と見て取ったのか、他の立候補者たちが口を挟んでいく。


 だが、ここまでだ。俺はここで手を叩いて議論の終了を告げる。これを聞いて壇上は静まり返った。


「ええ、では、今回の討論会はここまでとさせて頂きます。ホールにお集まりの投票者の皆様、投票の参考にはなったでしょうか? 皆様の清き一票がこの学院の未来を変えます。何卒、自身の信ずる方に一票を投じて下さい。ではありがとうございました」


 俺と立候補者たちは拍手で送り出され、討論会は閉会となった。


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