祝勝会
「ブレイド、アーンド、カルロス! 優勝おめでとう!」
祝勝会である。ウチの家族が泊まっている宿で、一階のフロアを使って俺とカルロスの優勝を祝って、それぞれの家族が大集合した。
俺と俺の家族、カルロスとカルロスの家族、マイヤーにマイヤーの家族、ショーンにショーンの家族、リオナさんにリオナさんの家族にナオミさん、アインの家族は昨日来て今日帰ってしまったそうだが、このように大勢で、誰が誰の関係者かもう良く分からない。今、乾杯の音頭をとったのはマイヤーである。
「いやあ、でもカルロスに続いてブレイドまで優勝しちゃうなんてね! 私らの世代、最強じゃない?」
マイヤーは我が事のように俺とカルロスの優勝を喜んでくれている。
「まあ、どちらも竜が優秀だっただけとも取れるけどね」
ショーン、一言多いよ。俺もカルロスもその事は重々承知だから、今くらい喜ばせてくれ。そしてアイン、ブスッとした顔でずっとこちらを見ているけど、口にしてくれないと分からないんだが。
「カルロスとサンダーラッシュの優勝は分かるけど、ブレイドとアルジェントの優勝はどうなんだ?」
アインが口を開いたと思ったらこれだ。
「アインも竜にブーストを掛けるのは抵抗あるタイプか?」
俺の発言に難しそうな顔をするアイン。
「アインって、そもそもブーストに抵抗あるよね」
とはマイヤー。言われてみれば、俺との対戦の時もブーストは使わないようにしようと、アインの方から提案してきたんだった。
「ブーストに何かあるのか?」
俺の質問にアインは首を横に向ける。
「別に、ただブーストの使い過ぎは身体に後遺症を残す事があるから、使用注意ってだけだよ」
含みがある回答だ。何だかもやもやする。俺たちが一人不機嫌なアインに困っていると、親同士で話していた父が声を掛けてきた。
「アインだったか? 家名は何だったかな?」
「? アイボリーですけど?」
「もしかして、父親の名はクラークか?」
「え? はい。そうですけど?」
それを聞いて父と母、それにショーンの親やリオナさんの親が顔を見合わせる。どうやら知り合いであるらしい。
「何か知ってるの父さん?」
俺が父に尋ねると、父は周りの大人たちと顔を見合わせた後、最後に、話して良いか? とアインを見遣る。
「別に、構いません。隠している訳じゃありませんから」
ブスッとしたままのアインの許諾を得た父が口を開く。
「アインの父親であるクラークは、学院で俺と同期でな。今のお前たちみたいな仲だった」
へえ、父さんにもそんな仲の人がいたんだ。
「ランデル先輩とクラーク先輩は、私たちの世代ではその勇名を知らない者はいないような凄い人で、良く決闘祭の決勝を二人で戦っていたよ」
とはリオナさんの父親であるバンシャン伯爵。父にそんな時代があったとは。今はしがない薬草採りだけど。
「ふん、で、お前たちが生まれる少し前の話だ。このガラク王国は、東の隣国ボロス王国と戦争をしていた」
それは学院の授業で習ったな。ボロス王国とはガラク王国建国以来、度々戦争をしている間柄のようだ。
「アインの父クラークが治めているアイボリー領は、ボロス王国と国境を接していてな。先の戦争の時も最前線だった。そしてクラークは自国と自領、そして何よりそこに暮らす人々を護る為に戦い続けた。日々ボロボロになっていく身体を、ブーストで無理矢理動かしてな」
そうだったのか。それできっとブーストの使い過ぎで、後遺症の残る身体になってしまったんだな。そうとは知らずに、俺はこの決闘祭でかなり無茶なブーストの使い方をしてきてしまった。まあ、誰に謝る事でもないが、反省はしなければならないかも知れない。
パンッとそこで一つ拍手が鳴らされる。見れば鳴らしたのは母だ。
「はいはい、暗い昔話はここまで。これは祝勝会なのよ? パァーっと騒がなきゃ! アインくんも、クラークの事で含む所はあるだろうけど、今だけは息子と友人をだしに、騒ぎましょう!」
母の言葉に、また祝勝会は賑わいを取り戻していったのだった。アインもブスッとした顔はそのままだったが、俺に文句を言うのを止め、テーブルに所狭しと置かれている食事に手を付け始めていた。と言うかそもそもアインはあんな顔だった気もしてきた。




