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Blade & Dragon Dance 〜月天を焦がす銀剣竜舞〜  作者: 西順


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対トーマス・マテウス

「あ〜あ。勝てると思ったんだけどなあ」


 試合後、出場選手たちの為に用意された一角に戻ってきたマイヤーは、サファイアにポーションを与えて休ませた後、自身の二回戦の不出来に軽く頭を抱えていた。


「そうだな。俺も負けると思ったよ」


 俺もアルジェントにポーションを飲ませ、自分もポーションを飲んで回復した所でマイヤーの言に応える。


「でしょ!? ブレイド良く最後踏み留まったわよね!」


「アルジェントに言われた気がしたんだよ。こんな所で負ける気かって」


「ふ〜ん。アルジェントとの絆の勝利って訳ね」


「ああ。アルジェントじゃなきゃ負けてた」


「へえ、そう。そっかそっか」


 くそう、嬉しそうだなマイヤーのやつ。


「悪いが、次は完膚なきまでに叩きのめしてやるからな」


「あら? それはこっちの台詞よ。次は瞬殺してあげるわ!」


 売り言葉に買い言葉で相手に宣戦布告をした俺たちだったが、睨み合うと思わず「ふふっ」と笑いが込み上げてきてしまった。俺はマイヤーと固い握手を交わす。


「私に勝ったんだから優勝しなさい」


「……ああ」


 俺は一呼吸置いてそう答えた。このジョストにはエドワードさんやガイウスなども出場している。シージやデュエルのように一筋縄でいかない事は重々承知だが、自分に気合いを入れ直す事も考えて、そう答えておいた。マイヤーは俺の答えに満足したのか、ニッコリ笑うと、


「それじゃあここからは観客席で見させて貰うわ」


 そう言い残して出場選手の控え場から、サファイアを連れて出ていった。



 気合いを入れ直した俺に死角は無い。と言うべきなのか、次の三回戦を危なげなく勝利して準々決勝に進出した俺だが、ここで調子に乗ってはいけない。次からは正に猛者との戦いになってくるからだ。



 準々決勝の相手は三年生のトーマス・カラッジさんだ。淡い金茶のくせ髪に碧眼。顔にはそばかすがちらほら見える。右手に片手剣を持ち、もう片方の手ではジョストでは珍しく盾を構えている。


 何故こんな事が可能なのか。普通騎手は竜から振り落とされない為に、盾を持つ代わりに手網なり取っ手なりを掴んでいるものだが、トーマスさんには掴まるべき竜がいないのだ。それなのに浮いている。背中からコウモリのような翼を生やして。


 どう言う事かと言えば、トーマスさんの竜マテウスが、超小型の竜なのだ。まだまだ幼竜のアルジェントよりも格段に小さなその竜は、人が抱えられる程の小ささで、その竜がトーマスさんの背中に張り付き、翼を広げて火袋から炎を出してトーマスさんを宙空に浮かせている。それは正面から見るとさながら竜人間と言った具合だった。


 あれで出場して大丈夫なのか? 問題ないのか? と疑問符が頭を過ぎるが、既に準々決勝だ。ここまでにジョスト出場選手を三組倒してきているので、油断は出来ないだろう。


「始め!」


 ポーリン先生の開始宣言で試合が始まるなり、トーマスさんがこちらに突っ込んできた。かなり速い。あっという間にこちらに接近したかと思ったら、目の前で消える。


 フェイントだ。消えたと錯覚する程の速さで、盾のない俺の左に回り込んだトーマスさんは、俺に剣を振り下ろしてくる。スッとアルジェントが横移動してそれを躱し、木槍を取り回して突きを放つが、既にそこにトーマスさんはいなかった。


 速いな。スピードはサンダーラッシュ程ではないが、かなりの速さだ。それに小さくて小回りが利き、的が小さいので当て辛い。


 トーマスさんもそれを十分理解しているようで、右に左に上に下に、と正に縦横無尽に飛び回り、俺たちに的を絞らせない。攻撃しては飛び退くを繰り返す戦法で、俺は一方的に攻撃を受けるばかりだ。


 俺は槍では取り回しに時間が掛かると木槍を木剣に戻し対処するが、それでもトーマスさんの方が速く、正に人竜一体のその攻撃スタイルは、人竜としては一つの完成形のように思えた。まあ、トーマスさん以外真似出来ないが。


 しかしこのまま一方的にやられるのでは困る。トーマスさんが魔法を使ってこない事を考えると、あの攻撃スタイルを維持する為に身体強化に魔法を全振りしているようだ。ならば、


「ファイア・アロー!」


 俺は全方位に向かってファイア・アローを放つ。小回りを得意とするトーマスさんの位置特定と足止めをする為だ。狙い通り全方位に向けられたファイア・アローにより、それを振り払う為に俺の後方で炸裂音がする。


 そこか! と俺は振り向いて剣を振るうが、既にトーマスさんの姿はそこにはなかった。これでも遅いか。ならば、と俺はファイア・アローを放つ前の拳大の火球を俺とアルジェントの周りにばら撒く。マイヤーのトラップ・ボムを早速真似させて貰った。


 これには慎重になるトーマスさん。しかし躊躇いは一瞬だった。トーマスさんはばら撒かれた火球の隙間を縫うように、掻い潜るように、飛び回りこちらへ向かってくるが、しかし火球を避けるのに慎重になり過ぎたようで、フェイントが使えず、動きが単調になっている。これならば、と俺はもう一度木剣を木槍に変えると、俺に向かってくるトーマスさんに狙いを定め、接近したトーマスさんに槍を突き放つ。


 が、トーマスさんもこれは予想の範疇だったのだろう、盾でもってこれを受け流したトーマスさんは、更に俺に接近し、剣を振り下ろしてくる。だがそれはこちらも予想済みだ。


「ファイア・ランス!」


 木槍を持たない方の手から炎の槍が顕現し、木槍を受け流した事で隙が出来たトーマスさんの腹に突き刺さる。そして全身燃え上がるトーマスさんは、俺に一撃与えようと剣を振り上げた姿のままで、闘技場の底へと落ちていった。


「そこまで! ブレイド・アルジェント組の勝利!」


 ふう。強かった。何とか勝ちを拾えたと考えて置くべきだろう。


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