エッグ
「やったなカルロス! まさか優勝するとは!」
「決闘祭で一年生が優勝するなんて快挙よ!」
「おめでとう、カルロス」
「君は我々一年生の誇りです!」
俺、マイヤー、アイン、ショーンが口々に褒めちぎるが、カルロスは照れたように苦笑いを浮かべるばかりだ。もっと堂々としていて良いと思うぞ。例えそこが救務室のベッドの上で、例え決勝レースの後に気絶していて、表彰式を辞退する事になっていたとしても。誇って良いんだぞ?
「まあ、優勝出来た九割九分はサンダーラッシュのお陰だからな」
照れてそう返事をするカルロスに、「分かってるじゃないか」と四人同意したらシュンとしてしまったが。
「いや、まあ、あのサンダーラッシュの猛スピードと電撃に耐えられるカルロスも凄いと思うよ?」
何とかカルロスを盛り立てようと、褒める所を探して口にする。
「確かに。僕たちでは途中で手を離してしまうのがせいぜいだっただろうな」
おっ? アイン分かってるじゃないか。
「まあ、俺は耐え抜いたかもしれないけど」
何に対する対抗心なのか、思わずそんな事を口にしてしまう。
「は? そんなの僕も耐えられるし」
アインも負けじと反論してきた。いや、四人中二人が「耐えられる」って言ったら、カルロスの凄さの評価が下がるだろ? 思わずアインを軽く睨んでしまったが、アインも対抗して睨み返してくる。
「何だよ?」
「そっちこそ何だよ?」
「はいはい、どれ程対抗心を燃やした所で、あんたたち二人は敗者で、カルロスが勝者である事は変わらないのよ?」
睨み合っていた俺とアインは、マイヤーの言葉にハッとなって恥じ入る。俺たちを見るショーンの視線が呆れたものになっていた。
「いや、でも、実際耐えられると思うぞ? サンダーラッシュの電撃を食らうと、身体が硬直するんだよ。だから俺なんて騎乗姿勢のまま固まってただけなんだ」
カルロス、そんな気を使わないで。余計に恥ずかしい。アインなんて顔が真っ赤だ。恐らく俺も同様に真っ赤になっているだろう。
「取り敢えず、俺は次のジョスト頑張ります」
俺の決意にアインは首肯してくれたが、
「あら? もう優勝したつもりなのかしら?」
とマイヤーが暗に「自分も出るんだけど?」と主張してきた。
「そりゃあアルジェントの火力は相当なものだけど」
それは二年生たちとやった六対百の決闘でのルナ・バーストの事を言っているのだろうが、あれ、夜にならないと撃てないんだよねえ。それを知っているのはこの学院ではリオナさんだけだ。
「ブレイドが出場するって知って、二年生の相当数が出場を辞退したらしいよ」
とショーン。そうなのか? まあ、勝手に出場を辞退してくれたならありがたい。
その後、カルロスのいる救務室を退室した俺たちは、昼食はどうするか? と言う話になり、学院の食堂で腹ごしらえをしても良かったが、折角なら、少しはお祭り気分を味わいたい。と言う事で、学院の外に出た。
学院前の原っぱは空間魔法で闘技場が設置され、その周りを囲うように多くの客でごった返しており、更にその周りを屋台が取り囲み、美味そうな匂いで人々を引き寄せていた。
「何食べる?」
俺が三人に尋ねると、三人は顔を見合わせしたり顔だ。
「王都ガラクシアで祭りで屋台ときたら、『卵』でしょ!」
とマイヤー。
「『卵』? 有名なのか?」
「タイガーチキンのゆで卵が有名なのよ!」
タイガーチキン。強いのか弱いのか良く分からない名前だな。
「大仰な名前だけど、大きさ的には普通の鶏より一回り大きいくらいの虎柄の鶏でね、肉も美味しいけど、卵が絶品なんだよ」
とはショーン。既に涎が垂れそうである。マイヤーやアインも同様だ。卵か。ウチじゃ風邪引いた時くらいしか食べないなあ。さっきまで肉が食べたかったが、俺も卵が食べたくなってきた。
「よし、それじゃそのタイガーチキン? の卵を食べよう!」
全員一致でタイガーチキンのゆで卵を食べる為、屋台に並ぶ。ただ茹でただけの卵を売るのだ。列は直ぐに捌けて俺たちはタイガーチキンの卵を一人二個ずつ手に入れた。卵は既に虎柄で、俺の拳より一回り大きい。茹でたてホカホカで熱いくらいだ。
俺たちは周りの客たち同様に原っぱに腰を下ろすと、卵を割って食べようとするが、これが硬い。いつもの鶏卵のように額で割ろうとしたが、頭が割れそうだ。皆、どうやって食べるのだろう? と観察すると、左右に持った卵同士をぶつけ合って割っていた。成程、この為に卵を二個買ったのか。俺も皆に倣って卵をぶつけ合って割る。と中から熱い湯気が噴き出してきた。
「おお!」
卵一つに何だか感動である。匂い的には普通の卵と変わらない。ペリペリと硬い殻を剥いていくと、卵の中まで虎柄だった。白身と黄身がマーブル状に層を作っている。
「おおお!」
更に感動して一口食べると、この白身と黄身が絶妙な割合で口に中に放り込まれ、噛めば噛む程濃厚な卵の味が口いっぱいに広がっていく。普通の卵だと黄身がもたっとして嚥下するのに唾液を持っていかれるが、これは白身と絶妙に混ざり合っているので、それがなくてどんどんと飲み込んでいける。
濃厚ながら食べ易く、気付けば俺は二つの卵をあっという間に食べ終わっていた。だがまだ食べ足りない。俺は更に四個の卵を買ってきて食べたが、それでもまだ食べ足りず、更に二個食べてやっと満足してひと心地着いたのだった。
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