デュエル
俺が演武を終えた後も、どんどんと〈武術・演武〉は進行していき、夕方前には全ての演武が終わった。結果は集団演武では、あの槍の集団演武を見せた組が一位で、個人演武では登校初日に見掛けた、変幻自在のスピード型の剣を振るうあの人が一位になっていた。
ちなみに何故か俺は六位だった。拍手も疎らであまり見応えはなかったと思うが、審査していた先生方には刺さったようだ。判断基準が分からん。
そして〈武術・演武〉が終わると、観客がどっと増えてくる。同じ場所で行われる、次の〈武術・実戦〉を見る為だ。そんな中、試合場中央に進み出てきたラウド先生が大声を張り上げる。
「これより、〈武術・実戦〉、『デュエル』を執り行う!!」
元々大きなラウド先生の声が、拡声の魔法で更に大きくなって耳をつんざく。頭がぐわんぐわんする。今度は人垣に飲み込まれて身動き取れない、なんて馬鹿な事を繰り返さない為に、俺たちは最前列に陣取ったのだが、それが裏目に出てしまった。
〈武術・実戦〉は『決闘』と呼ばれ、決闘の名を持つだけあって注目の花形競技であり、一番参加人数の多い競技だ。俺の知り合いでもリオナさんを初め、マイヤー、アインそして俺が出場する。そして人数も多いので進行もサクサク進んで行く。
「次、リオナ・バンシャン! オンドーレ・ジャール!」
リオナさんがラウド先生に名前を呼ばれ、試合場中央に進み出てくる。相手は俺と同じ黒髪を腰まで伸ばした三年生の剣士の男だ。
「始め!」
ラウド先生の号令の元、試合が開始される。するとキャーと観客たちの一角から黄色い声援が飛んでくる。どうやらリオナさんの対戦相手は中々の人気者であるらしい。
「リオナさん頑張って!」
「リオナさんなら勝てますよ!」
「落ち着いて相手を見て下さい!」
俺たちからも負けじと声援を飛ばす。チラリと目線だけをこちらにやったリオナさんは、一度頷くと直ぐに対戦相手の方に目線を戻した。
リオナさんは木剣を、相手は真剣を中段に構えている。ジリジリと間合いを詰めていく両者。デュエルはシージと違い、基本は魔法使用を禁じているが、ブーストのような身体強化魔法と、武器の特性強化魔法は使用許可が下りている。そこら辺が戦いの鍵になってきそうだ。
先に動いたのはリオナさんだ。一気に間合いを詰め、突きに行く、と見せ掛けて、突きの姿勢で急停止するフェイント。相手が一歩後退してその突きを払おうとするが、そこにリオナさんの木剣は無く、空を切って体勢を崩した相手に、リオナさんは改めて一歩足を踏み出し、木剣で突きを打ち込む。
「ぐへっ!」
男は胸にリオナさんの突きを食らって、たたらを踏んで後退し、尻もちをついた。
「そこまで! リオナ・バンシャンの勝利!」
サクサク進行させる為、また大怪我を未然に防ぐ為だろう、まだ明らかに余力を残す対戦相手を切り捨て、ラウド先生はリオナさんの勝利を宣言した。
「ああ〜」と明らかに気落ちした声が黄色い声援のした方から聞こえてきて、負けた選手はそちらへとぼとぼと帰っていった。
「ここにいたのですね」
勝利したリオナさんがこちらにやって来る。勝利の余韻が残るのか、頬が上気している。
「一回戦突破おめでとうございます」
俺がそう言うと、リオナさんは破顔して、本当に嬉しそうな笑顔をみせる。
「ありがとうございます。去年も前期、後期と出場したんですが、いつも一回戦敗けだったので、こうして勝利を収める事が出来たのも、ブレイド殿のお陰です」
いや、俺はそんな手助けにはなっていないと思う。どちらかと言えば父の鍛え方が良かったからだろうし、リオナさんに素質があったからだろう。そう言った気持ちを全部引っくるめて、
「ありがとうございます」
と返事をしておいた。
デュエルはどんどんと進んでいく。ラウド先生も一回戦は早めに決着を付けたいのだろう、俺から見たらちょっと形勢が相手に傾いたくらいで、勝敗を決めているように見える。
これはちょっとの隙も見せられないなあ、と気を引き締める中、マイヤーが呼ばれ、危なげなく勝利を収め、アインが呼ばれ、難なく勝利する。知り合いが順当に二回戦進出を決めていくと、何だかこっちにプレッシャーが掛かってくる。とドキドキしながら自分の出番を待っていると、ラウド先生に俺の名前を呼ばれた。
緊張してドキドキする心臓を、深呼吸して落ち着かせると、試合場に進み出る。
「はっはっはっ、久しぶりだな」
対戦相手である知らない顔の二年生が話し掛けてきた。いや、一度会ってる気もするなあ。そもそも二年生からはずいぶんと恨みも買ってるしなあ。
「誰?」
「ぐっ、お前に登校初日に剣を折られた……」
「ああ!」
あの始業式で絡んできた奴か。
「試合始め!」
「えっ!? ちょ!?」
二年生が何か言うより早く、さっさと進行したいラウド先生が試合開始を宣言する。
「とにかく、貴様が家宝の剣を折ってくれた所為で、俺がお父様からどれだけ叱られたと思っているんだ!」
それは知らないけど、自業自得だよね?
「この恨み、百倍にして返してやる!」
そう言って剣を中段に構える二年生。俺も相手に倣って木剣を中段に構えた。すると先手必勝とばかりに、一気に剣を振り上げ距離を詰めてくる二年生。何も成長してないな。
俺は振り下ろされる二年生の剣を半身になって躱すと、サクッと二年生の新調された剣を根元から切ってみせた。
「ああ……なんて事を……」
二年生はまたもや剣が折られたショックで、膝をついたのだった。
「そこまで! ブレイドの勝利!」
ラウド先生の勝利宣言が会場に響いた。




