対サンドラ
「えー、では、えー、始めて下さい」
訥々と試合進行するダン先生。俺は直ぐ様フローズン・アース・プリズンを展開する。対してサンドラさんは俺がフローズン・アース・プリズンを展開している間に、四つの魔法を展開していた。
岩魔法のロック・スピアーに風魔法のウインド・スピアー、氷魔法のアイス・スピアーに火魔法のファイア・スピアー。四つの魔法の槍が、こちらを見据えて待ち構えている。そしてどれもかなり大きい。
「いくわよ」
ニヤと笑みを浮かべるサンドラさんが手を俺に向けると、四つの槍が襲い来る。しかもそれぞれが別方向からだ。ロック・スピアーは正面から、ウインド・スピアーとアイス・スピアーは左右から、ファイア・スピアーは上からだ。
「くっ!」
俺では一度に二魔法が限界だ。俺は正面から襲い来るロック・スピアーに向かってアース・シールドを展開。上空から弧を描いて飛来するファイア・スピアーへ向かってこちらもファイア・スピアーで迎撃する。しかしそれが目一杯だった。
ドォンッッ!! と俺の後方、玉のある場所で破壊音が轟く。振り返ると、ガラガラと音を立てて崩れていくフローズン・アース・プリズン。
玉はどうなったのか!? と目を凝らして見ると、玉は何とか傷付かず宙に浮いたままだ。二魔法の槍ではフローズン・アース・プリズンを破壊するまでだったようだ。これは三つだったらお終いだな。
そう思ってサンドラさんの方を振り返ると、既に次槍を用意していた。サンドラさんの手の動きに合わせて、またも四方から向かってくる魔法の槍。
「フローズン・アース・プリズン!!」
俺は急いで檻を生成、それだけでは足りないと更にそれを囲うようにフローズン・アース・プリズンを生成するが、その途中で槍の直撃を食らう。
「ぐふっ!」
俺は直撃を受けなかったものの、衝撃で地面に投げ出される。振り返るとどうやら二撃目も何とか防げたようだ。しかしこれでほっとはしていられない。
「ロック・ウォール!!」
サンドラさんの攻撃を受ける前に、俺は防御力は落ちるが、生成に時間の掛からないロック・ウォールに防御魔法を変え、数をどんどん生成していく。十、二十、三十と生成して、変形させ、ロック・ウォールで防御陣地を築く。
流石にサンドラさんもこの数には手を焼いているようで、やっと俺は一息吐く事が出来た。さてこれからどうするかだな。
ドゴゴゴオオンン! ロック・ウォールの石壁を何枚も貫き、サンドラさんがこちらに近づいてきているのが分かる。数で全方向を覆っているが、それを全て破壊する必要はない。自分が通れるだけ破壊すれば良いのだ。しかしそれは敵、つまり俺に自身の進行方向と進行具合を知らせる事と同義である。
ドゴオオンン! 玉までまだ数枚のロック・ウォールを残した所で、サンドラさんと対面する。どこかでかち合うとは思っていたのだろう。サンドラさんの後方には、ウインド・スピアーとアイス・スピアーが控えていた。しかしそれは撃たせはしない。
「グリーン・バインド!」
俺の呪文に呼応して、地面の草たちがサンドラさん、そしてウインド・スピアーとアイス・スピアーに絡み付く。
「うおおおお!!」
といきなり会場から歓声が上がったので、何事か!? 玉がやられたのか!? と焦ったら、男性客が熱い視線をサンドラさんに向けていた。なんだ? とサンドラを見ると、俺のグリーン・バインドに縛られたサンドラさんが、何とも扇情的な格好になっていた。縛られた事で出る所引っ込む所が強調されて、特に大きな胸がヤバい。
「何をするんですか! 破廉恥な!」
顔を真っ赤にして抗議するサンドラさんだが、俺としてはここで身動き出来なくしないといけない。
「グリーン・バインド!」
俺は更にグリーン・バインドを唱えてサンドラさんを地に伏せさせる。
「うおおおお!!」
更に歓声が上がる。そんなつもりでやっている訳ではないのだが、サンドラさんの格好の扇情具合が上がった気がする。
「ブレイドくん……!」
「なんかすいません!」
別に悪い事をしている訳ではないのだが、俺は一言謝ってから、サンドラさんをその場に放置して、サンドラさんの玉に向かった。
「ちょっと!? これ、私このままなの!?」
当然と言うべきか、サンドラさんの玉は無防備に剥き出しになってはいなかった。強烈な風魔法で守られ、俺の魔法では一見対処出来そうにない。が、
「ウォーター・スピアー!」
右手にウォーター・スピアーを、
「ファイア・スピアー!」
左手にファイア・スピアーを生成し、それを同時に風の防御魔法に向かって撃ち込む。丁度風の防御魔法に当たる所でウォーター・スピアーとファイア・スピアーが交差しウォーター・スピアーの水が一瞬で蒸発した事により大爆発を起こす。
これによって風の防御魔法は吹き飛ばされて消滅。中の玉も爆発によって破壊されたのだった。
「えー、そこまで。えー、勝者、えー、ブレイド選手」
試合後、俺は大ブーイングを受けた。女性客は分かるが、男性客は喜んでいただろ!?
「ブレイドくんがあんなに破廉恥だとは思いませんでした」
試合後にサンドラさんにチクチク言われた。
「いや、あれは足止めであって、疚しい気持ちはありませんでしたから!」
「どうかしら?」
本当なんだって、誰か信じて! と心の中で叫ぶもみんな俺を汚いものを見るような目で見下すのだった。




