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Blade & Dragon Dance 〜月天を焦がす銀剣竜舞〜  作者: 西順


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シージ

「やあやあブレイドくん、冷やかしに来たよ」


 エドワード会長が俺たちが設置した即売所にやって来た。何度目だろうか。来てくれるのはありがたいが、毎度一緒にお偉いさんを引き連れてくるので胃にくる。


「彼が一年生で一番腕の立つブレイドくんです。次期ネビュラ学院学生会会長に最も近い男ですよ」


 更にこんな嘘をばら蒔くものだから、お偉いさんたちも目の色変えて俺に挨拶してくれる。俺、ただの平民なんで、そんな凄いもんじゃないんで。でもポーションドリンク買ってくれてありがとうございます。


「試飲の感じでは感触良いのに、買ってくれるのは、一本か二本なんだよなあ」


「そりゃ、会長が案内しているのは、領主以上、中には外国の要人もいるだろうから、買って帰って自分の領地で作らせるんだろ」


 とカルロスが当然だろ? と言った顔で語るが、こっちは大ショックだ。そうか、そうだよな。子供が作れるような物なんだから、領主レベルになれば作り放題だよな。


「アーネストさんが言ってたけど、アイデア込みでも一万キルクルスは安かったかもなあ」


 カルロスはそう愚痴るが、今さら値段は変えられない。まあ、今回は色々と勉強になったと思って、後期の決闘祭で修正した物の販売かなあ。後期の研究発表に出るか分からないけど。


「いやあ、ブレイドくんは凄いんですよ、何と言っても騎竜ですね。竜との一心同体の攻防は、まるで舞いのようで、見る者を魅了する華麗さですね」


 などと、俺がカルロスとこそこそ会話をしている間も、会長は俺を褒め殺してくる。周りの野次馬も合わせて俺に視線が集中して、なんだか居たたまれない。それが引き連れるお偉いさんが変わる度に行われるのだ。笑顔が顔に張り付いたようで、辛い。


 会長も何で何度もここにやって来るのか。他にも注目の研究発表はあるんじゃないか? 隣のテーブルで『王都周辺の植生』を発表している一団が、こっちに気を使って空気になってるし。


「会長って、もしかして友達いない?」


 俺が思わず口にした言葉に、その場の空気が凍る。


「ブレイドくん?」


「はい! 何でしょう!?」


 会長は笑顔のはずなのに、なんだか背筋を冷たいものが流れる。


「もうすぐ〈魔法・実戦〉の時間じゃないですか?」


「あ、ああ、はい。あれ? 会長も出るんですよね?」


〈魔法・実戦〉が始まるらしいので、俺は即売所を後にしようするが、会長も実戦には全部出場するはずだ。会長こそこんな所に居ていいんだろうか?


「僕は来賓の相手があるので後で行きます。心配ありません。僕はシードですから」


「ああ、そうですか」


「それと……」


 まだあるのか?


「僕にも友達はいます」


 気にしてたんだ。



 学院前の原っぱに出ると、寒空の下、人垣が十重(とえ)に出来ている。昨日雪が降ったと言うのに、ここだけ熱気が凄い。


 俺はその人垣を掻き分け、何とか最前列に出ようとするが、たどり着かない。その内に会場中央に人影が一つがススッと進み出てくる。黒いローブを目深に被ったあの鷲鼻は、ダン先生だ。


「えー、これより、えー、〈魔法・実戦〉えー、『シージ』を始めます」


 拡声の魔法で会場に響くダン先生の開始宣言に、沸き上がる会場。更に観客が動きまくるせいで俺は揉みくちゃだ。周りの人間の体が当たりまくって痛い。



 中々最前列に出れないまま、変な格好に固まってしまった。俺がそんな事になっていても、〈魔法・実戦〉は進行していく。


 会場中央のダン先生に選手二人が呼ばれ、選手は会場の端と端に移動する。そして『(スフィア)』と呼ばれる光球を宙に出す二選手。


〈魔法・実戦〉では、この玉を守りながら相手の玉を破壊したら勝ちである。それこそが〈魔法・実戦〉。別名『攻城戦(シージ)』だ。


「えー、始め」


 ダン先生の合図で開始される試合。沸き立つ会場。更に揉みくちゃにされる俺。俺から見て右の選手が先手必勝とばかりに三本のファイア・スピアーで相手の玉を狙うが、左の選手によるロック・ウォールによって防がれてしまう。


 更に左の選手は試合場全体に無数のロック・ウォールを出現させ、試合場を死角だらけにする事で、相手の攻撃を通らせないようにさせる。が、これでは自身の攻撃魔法も通らなくなってしまうのでは?


 だが俺の考えは杞憂だった。右の選手が攻めあぐねている間に、数十本のファイア・アローを上に射ち出す左の選手。ファイア・アローを山なりに飛ばす事でロック・ウォールを避けて攻撃出来る。更に数十本の火の矢による面攻撃。試合場を立体的に使った、良い戦略である。


 試合はこの上空からのファイア・アローによって右の選手の玉が割られて決着。左の選手が次戦に進んだ。


 その後も試合はどんどん進んでいき、そして、


「えー、ブレイド選手」


 ついに俺の名前が呼ばれた。けど俺、まだ周りに揉みくちゃにされたままで、試合場にたどり着けていないんだけど。


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