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Blade & Dragon Dance 〜月天を焦がす銀剣竜舞〜  作者: 西順


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更なる危機

「助けて下さりありがとうございました」


 四人で助けてくれた上級生に礼をする。


「アーネスト・ザラーだ」


 俺たちを助けてくれたのは、腰まであるサラサラの藍色髪に、赤茶の瞳をした美男子だ。ネビュラ学院の赤い制服に黄色の差し色が入っているので、三年生なのだろう。


「君たち一年生だね? 今日はもう帰った方が良い」


 アーネストさんが忠告してくれる。


「どうも今日は森の様子がおかしい。トラップ・スパイダーだけでなく、他の上位の魔物も森の入り口付近で見掛けたと報告があった。森の奥で何かあったのかも知れない」


 と森の奥を眺めるアーネストさん。美男子だからだろうか? それだけで様になっている。


「アーネストさんはどうするんですか?」


 尋ねるマイヤーの目が、なんだか潤んでいる気がするのは気のせいだろうか?


「僕はもう少し森を調べてみるよ。まだ事態を理解出来ていない下級生がいるだろうからね」


 なんとも正義感に燃える美男子だ。一々様になっている。


「私たちにもお手伝いさせて下さい!」


 とマイヤー。え? いや、俺は素直に戻りたいんだが? カルロスもアインも困惑している。


「いや、危険だ。さっきも言ったが、君たちは直ぐに森から避難するんだ」


「でも、危険なのはアーネストさんも同じじゃないですか?」


 などと問答を繰り返すマイヤーとアーネストさん。なんだこの茶番みたいなやり取り。


 二人が茶番劇を演じている間に、森の奥が騒がしくなってきた。何事か? と俺たちが視線を森の奥に向けると、閃光弾が打ち上げられる。ネビュラ学院の魔法学で最初に習う魔法で、その用途は危険信号だ。森の奥で何かがあったのだ。胸に不安が渦巻く中、奥からネビュラ学院の学生や魔物狩りたちが走り寄せてくる。いや、何かから逃げてきている。


「ウォーウルフの群れだ! 早く逃げろ!」


 魔物狩りが俺たちに忠告して、そのまま駆け抜けていく。


「ウォーウルフだって!?」


 俺たちもその話を聞いて、直ぐ様踵を返して森から逃げ出すが、後方だけでなく戻る前方からも狼の吠え声が聴こえ足を止める。囲まれたか?


 軍狼ウォーウルフは、餌を求めて常に行軍する狼型の魔物で、一頭一頭が強い上に、五十を超える群れで行動する厄介な奴らだ。その凶悪さは、防衛力がなければ町一つなら簡単に滅ぼせる程である。


「ぐわあっ!?」


 先行して逃げ出した魔物狩りの悲鳴が聴こえた。これによって他の魔物狩りやネビュラ学院の学生たちも足を止めた。


「ど、どうする?」


 横のカルロスが俺に聞いてくるが、それは俺に聞く事なのか? 俺は上級生のアーネストさんに目線で指示を求める。首肯するアーネストさん。


「皆! 防御を固めつつ森の入り口を抜けるぞ! 閃光弾は上がった! 王都守備隊や竜騎士団が至急こちらに向かっている! 希望を捨てるな!」


 下級生だらけのネビュラ学院の学生を鼓舞するアーネストさん。それに首肯し、ネビュラ学院の学生たちだけでなく、魔物狩りたちも互いに背中を預けてウォーウルフの群れと向かい合う。



 薄暗い森の中、俺たちを囲む草むらが、ガサガサガサガサとそこかしこで物音を立てている。


「来るぞ!」


 アーネストさんがそう叫ぶと同時に、草むらからウォーウルフたちが飛び出してきた。数は十はいる。嵩は人より高く、体毛は灰色。鋭い爪と牙を剥き出しにして襲い来る。


「ファイア・アロー」


 アーネスト先輩はファイア・アローを全方位に展開しそれを放つ。これによって出鼻を挫かれるウォーウルフ。


「ぜやあっ!!」


 そこにマイヤーがハルバードを思いっきり横に振るい、ウォーウルフの一頭を吹き飛ばす。吹き飛ばされたウォーウルフは、しかしマイヤーの攻撃も致命傷にはならず、直ぐに立ち上がった。


「ハッ!」


 そこに俺はトドメとばかりに、木剣をウォーウルフの喉に突き刺す。


「ぐぎゅ」


 くぐもった声で一声呻いたウォーウルフは、それを最期に絶命した。


「グオオオッ!!」


 これで他のウォーウルフたちの怒りを買ったのだろう。ウォーウルフたちの視線が俺に集まる。


「ハッ! ファイア・スピアー!」


 そして俺は襲い来るウォーウルフの一頭の頭を叩き切り、別の一頭にファイア・スピアーを食らわせる。腹に穴の開いたウォーウルフの向こうから、更にウォーウルフが襲い来る。


 口中に炎を(たぎ)らせた一頭は、俺に向かって炎のブレスを吐き出す。


「ウインド・シールド」


 しかしウォーウルフの炎のブレスは俺に届く事はなかった。アーネストさんが唱えたウインド・シールドで防御されたからだ。


「全く、無茶をする」


 俺と背中合わせになるように位置取りをするアーネストさん。


「ありがとうございます」


 俺は礼を言いながらも、視線はウォーウルフに向けたまま。しかしウォーウルフたちも小賢しい。俺たち二人を相手にするのは厄介だと考えたのか、目標を俺たちから他の学生たちに変えた。


「ちっ!」


 俺は木剣を網状に変化させると、学生も魔物狩りも全てを包んでウォーウルフからの攻撃を阻止する。


「あ、ありがとう」


 学生の一人が尻餅を突きながら俺に礼を述べるが、


「尻餅突いてる場合か! 物理攻撃を防いだだけだ。ブレスが来るぞ!」


 俺の怒声に学生は「ひっ」と呻きながら、立ち上がれないのかその場でワタワタするだけだ。


「ちっ! アイス・スピアー!」


 俺は舌打ちしながら、足下の学生を庇うように位置取りし、炎のブレスを吐くウォーウルフに向かって、アイス・スピアーをぶつける。近距離で水蒸気爆発が起こり、熱蒸気を浴びるが、そんな事に構っていられない。


「ウォーター・カッター!」


 更にウォーター・カッターで持ってウォーウルフの首を落とす。俺の足下の学生はまだガタガタ震えている。他の学生も同じようなものだ。そんな中、


「せやッ!」


「ハッ!」


 魔物狩りに混じって、マイヤーとアインが気を吐く。長物であるハルバードと槍を生かして、それらを俺の木網の隙間から突いてウォーウルフを退ける。


「ファイア・スピアー。アイス・スピアー。ウインド・カッター」


 そんな中でも一段飛び抜けているのはアーネストさんだ。状況に応じて的確に魔法を使い分けてウォーウルフに当てていく。威力も高く、貫き、切り裂き、燃やし、凍らせる。


 しかしそれでも多勢に無勢。数に勝るウォーウルフの群れに、俺たちは押し込まれ始めていた。俺の木網もあと数度の攻撃で壊されるだろう。


 そうなれば俺たちはウォーウルフの群れに食い殺される。そんな絶望感に背筋が寒くなる。そして、バキッ! と言う音と共に脆く崩れ去る木網。心臓がギュッと縮み上がり、包囲していたウォーウルフたちが一斉に俺たちに襲い掛かってきた。


 ボオオッ!! それを防いだのは、上空からの高熱のブレスだった。俺たちが上を見上げると、五頭の竜が急降下して俺たちを守るように降り立つ。王都の竜騎士団だ。


 助かった。俺が疲弊仕切って倒れそうになるのを、アーネストさんに支えられたのだった。


ここまでお読み頂きありがとうございます。感想なんぞを頂きますと、作者が泣いて喜びます。

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