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Blade & Dragon Dance 〜月天を焦がす銀剣竜舞〜  作者: 西順


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出立

 いつの間にか、頬を伝う風が熱から涼を含むものに変わっていた。日々研鑽で積み上げられていくものは微々たるものだったが、それは着実に俺の血肉となって身体の機微に変化をもたらしていた。


 父が真剣を中段で構え、こちらの様子を窺っている。こちらは二人、俺とリオナさんさんだ。


 木剣のリオナさんは父と同じく中段のスタンダードな構え。対して俺は木剣を目線まで持ち上げ、突きの構えである。


 一瞬リオナさんと目配せし、俺たちは父へと駆け出す。交差を繰り返しながら標的を定めさせず、父に接近したところで交差の後ろに回った俺は、死角になったリオナさんの後ろから飛び上がり、上空から父へ突きをお見舞いする。同時にリオナさんはジグザグだった動きから直角に父へと肉薄、胴へ木剣を薙ぐ。


 が、ガギギンと父はそれを上下の一振りで防いでしまう。それまでの俺たちならば、これで態勢を崩されお終いだが、この修行も二ヶ月、踏ん張りが利くようになってきた。


 リオナさんは直ぐに態勢を立て直し、連続突きへ、俺は空中で回転しながら態勢を立て直し、更に魔法で木剣を伸ばしてリオナさんの援護、あわよくば俺が一撃当てるつもりで、更に伸ばした木剣の先を八股に分けて攻撃する。


 流石の父も手数が多いと踏んで数歩後退した所で、俺は地面に着地。リオナさんは中段に構えを戻し追撃する。駆けていって追撃に加わる俺。上、下、横、斜め、突き、とリオナさんとは攻撃方向が被らないように、出来れば対称の位置から一撃を、と父に追い縋るが、俺たちより早い剣速でもって俺たちの剣を捌いていく父。その度に俺たちの木剣がゴリゴリ削られていくので、俺たちは常に木剣を生成しながらの戦いだ。


 更に父が剣速を上げ、初手とは逆に俺たちが追い詰められていく。このままではまた父に勝ちを与える事になる。と俺は一計を案じ、父に突きを繰り出す。父がそれを振り払うより早く、俺の木剣は網へと姿を変え、父を巻き取ろうと覆い被さるが、ズバッと父の剣が一回転して、俺の木網は破られてしまった。


「ふん、面白い事を考えるな」


 面白くても成功しなきゃ意味がない。俺とリオナさんは更に攻勢に出るが、さっきの木網が父を本気にさせたのか、俺たちの木剣をズバズバ切り裂いていく父。それによって木剣の生成に魔力をゴリゴリ持っていかれ、燃料切れを起こした俺たちは、徐々に攻撃の精細を欠いていき、


「どうした? もう終わりか?」


 地べたに這いつくばって父に剣を向けられる最後となった。



 母の修行も相変わらず厳しい。俺が生成していく木剣を、どんどん千切りにしていくのだ。そんなの夕飯の材料にならないと思うのだが、母はお構い無しにどんどん俺の木剣を千切りにしていく。俺はそれに負けじと魔力で木剣をどんどん強化していくのだが、母のナイフに勝てない。あのナイフ鉄じゃないのか? 伝説や神話に出てくるミスリルやオリハルコン、アダマンタイトで出来てるんじゃないのか? などと集中力を欠くと、ナイフがあっという間に柄元まで押し寄せているので、俺は慌てて木剣を生成する。


「出来た!」


 とそこにノエルの声が響き、修行が一時中断される。何事か? とノエルの方を見遣ると、落ち込むリオナさんの横でノエルが大喜びしている。その手の中では、クズ魔核が砕け散っていた。


 ノエルは人形遊びにも飽きてきたのか、慕うリオナさんの真似をして、クズ魔核を魔力だけで砕く修行をしていた。そして今日ついに、リオナさんより先にノエルの方がグズ魔核を破壊する事に成功してしまったのだ。


 愕然として部屋の隅に行って落ち込むリオナさん。それを励ますナオミさん。ノエルは嬉しそうに破壊したクズ魔核を俺たち家族に見せて回った後、リオナさんに自分のやり方を教授しにいった。せめて今はほっといてやれよ。と思ったが、意外とリオナさんは素直にノエルの話に聞き入っている。そして、


「で、出来た!」


 ノエルの話を聞いて再挑戦したリオナさんは、今まで出来なかったのが嘘のように、簡単にクズ魔核を破壊してみせたのだった。



 ガキンと金属同士がぶつかる音がして、母のナイフの刃が俺の木剣の上で止まる。


「はあ~、やっとかあ~」


 その日も夕暮れと言う時になって、俺はやっと母のナイフの侵攻を止める事に成功した。喜びよりも安堵の方が強く、俺はその場に膝を付いた。


「おめでとうお兄ちゃん!」


「おめでとうございますブレイド殿!」


 褒めてくれるのはこの二人だけで、母は、


「ギリギリ間に合ったわね」


 とこっちも安堵しているし、父はどこかに行っているのか姿が見えず、ナオミさんは食事の準備中だ。



「明日から学院ね」


 その日の夕食はちょっと豪勢なものだった。俺とリオナさんが明日からネビュラ学院に通う事になるので、父は山に入ってグレートボアを一人で仕留めてきたのだ。これをメインに野菜のゴロゴロ入ったシチューなど豪勢な食事を腹一杯食べ、ぐっすり眠った翌日。



「じゃあ行ってきます」


「行って参ります!」


 俺とリオナさんは、家族とナオミさんに見送られながら、朝日が顔を出す明け方、アルジェントとシエロに跨がり、王都へと飛び立ったのだった。


ここまでお読み頂きありがとうございます。感想なんぞを貰えると作者が泣いて喜びます。

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