快癒
「ブレイド~! 皆~!」
黄金迷宮を前に、呆然と立ち尽くす俺たちの元に、王都から竜騎士団を連れてきたカルロスが帰って来た。
「どうなっているんだ!? メラニゲルはどこにいる!?」
竜騎士団長をしているゴードンさんが俺に尋ねてくる。そう言われてもな。メラニゲルはこの目の前のダンジョンです。と言って信じてもらえるだろうか?
「ショーン」
「あん?」
「任せた」
「は? え? 任せたって、何を?」
「カルロスや竜騎士団の皆さんに、何が起こったのか説明してやってくれ」
「説明してやってくれって、何で僕なんだよ。ブレイドは? 皆は?」
「疲れたから帰る」
「はあ!?」
ショーンに後説明の全てを押し付けて、俺とリオナさん、アイン、マイヤーは竜に股がる。
「ゴードンさん! ショーンの話を聞いて、分からなかった部分が出たら、我が家を訪ねてきて下さい! じゃあ、俺たちは疲れたので帰ります!」
ショーン、カルロス、ゴードンさんら竜騎士団が何か言っているが、はっきり言って俺たちはそれどころではない。メラニゲルとの戦いの反動で、血を吐いてぶっ倒れそうなのだ。直ぐにも我が家に戻って、母のポーションに癒されたい。
俺たちはカルロスとショーン、竜騎士団をダンジョン前に置き去りにして、我が家へとさっさと飛んで帰って行ったのだった。
目を覚ますと、木組みの天井が目に入る。見慣れたその光景は、ここが自室であると俺に自覚させた。
そう言えば、帰って来た日は家に着いた途端に、疲れと身体の激痛で気絶してしまったんだった。父がここまで運んでくれたのだろうか?
上半身を起き上がらせると、身体がすっきりしている。痛みやだるさ、重さはまるで感じなかった。流石は母のポーション。凄い効き目だ。と思っていると、ベッド脇に何か重さを感じる。見れば俺のベッドに俯せになって、ミリアムが眠っていた。
ミリアム? そう言えばミリアムは回復魔法が使えたんだった。もしかして俺たちの治療にあたってくれたのだろうか? 俺がそんな事を考えていると、ミリアムも目を覚ました。
「あ! ブレイド様! 目を覚まされたのですね!」
破顔するミリアム。余程心配していたのか、俺の身体のあちこちを触って体調を確認してくる。
「どうですか? 痛い所や違和感なんかはありませんか?」
「いや、感じないな。俺個人の感想としては、万全な感じだ」
俺の言葉にホッとするミリアム。その心配具合から、俺の状態か余程悪かったのが窺い知れた。
「他の皆は?」
「皆さん、二日前には目を覚まされて、元気にお食事や運動をこなされています」
「二日前にはって!? 俺は何日ぐらい眠っていたんだ!?」
「アインさん、マイヤーさん、リオナさんは丸二日、ブレイド様は丸四日眠り続けていました」
そんなにか。そりゃあ心配するのも当然だな。と俺は寝ていた時間を自覚したら、ぐうう、と腹が鳴き始めてしまった。
「ふふ、今食事をお持ちしますね」
「いや、自分で食べに行くよ」
「大丈夫ですか?」
心配そうなミリアムに、俺が「大丈夫大丈夫」と言ってベッドから立ち上がると、恐らく支えてくれているつもりなのだろう。ミリアムは俺の脇に抱き付くと、俺に合わせて歩き始めた。
「おはよう」
リビングに顔を出すと、俺の元気な姿に、皆がホッとしていた。俺は余程悪かったようだ。
「心配掛けたみたいだな」
「本当だよー! ミリアムちゃんなんて付きっきりで看病してたんだからね?」
とはノエル。
「やっぱり、ミリアムが回復魔法を使ってくれてたのか。ありがとう」
皆の前でミリアムにお礼を言う。ミリアムは、「当然の事をしただけで」と恥ずかしそうに謙遜していたが。
「ミリアムちゃんは凄いのよ。私のポーションよりもミリアムちゃんの魔法の回復能力の方が高いの」
と母が我が事のように自慢している。へえ、そんなに凄い回復魔法の使い手だったのか。俺がダイニングの椅子に座ると、母が蒸かした芋と水を出してくれた。
そして俺が蒸かし芋を食べようとすると、目の前の席に竜騎士の鎧を着込んだゴードンさんと、前ネビュラ学院学生会会長のエドワードさんが座る。エドワードさん、竜騎士団に入ったんだな。竜好きだからなあ。
「さて、病み上がりで悪いが、何が起こったのか、君の口から聞かせて貰えるかな?」
とゴードンさんによる事情聴取が始まった。エドワードさんは書記らしく、紙にペンで俺の話した内容を書き写していく。




