対メラニゲルその2
「グワアアアアッッ!!」
背中の触手を切られたメラニゲルが吠える。吠える度に表皮の黒鱗が黄金に変わっていく。
メラニゲルが回復に時間を使っている間に、皆の状態を確認する。リオナさんとシエロを見る。大丈夫そうだ。アインとオクタミルを見る。大丈夫そうだ。マイヤーとサファイアを見る。元気だ。
「いくぞ! 皆!」
「ええ!」
「おお!」
「任せなさい!」
俺の掛け声に応えて、三騎が動き出す。メラニゲルを中心に、各騎、円を描くように空を駆ける。攻撃は一撃離脱を繰り返し、メラニゲルに的を絞らせないようにしていた。
その中でもマイヤーの活躍は目を見張るものだった。マイヤーの黄金の武器は、メイスを基本に、いくつかの形状に変化する代物だった。剣、斧、槍、大鎌、勿論ハルバードにも変化し、大きさも自在のようだったが、あまり大き過ぎても取り回しに苦労するようだった。
巨大な斧や大鎌を振り回している素振りから、大きさで重量は変化しないようだ。その威力は絶大で、俺やリオナさんやアインと巧く連携して、メラニゲルの肉をガンガン削いていく。俺たちの攻撃のメインは、間違いなくマイヤーになっていた。
しかしそれでも倒せないのがメラニゲルだ。俺たちの攻撃で、鱗を剥がされ、肉を削がれ、骨を断たれても、あっという間に黄金がそれを覆い、傷を塞いてしまう。そして徐々にメラニゲルは全身を黄金へと変えると共に、パワーアップしていくのだった。
スピードが徐々に速くなり、パワーが徐々に強くなり、ディフェンスがどんどん硬くなっていく。骨を断てた攻撃が、肉を削ぐのがやっとになり、そして鱗さえ通らなくなっていき、最終的には、俺たちの中で一番威力の高かったマイヤーの攻撃さえ、効かなくなってしまった。
「グワアアアアッッ!!」
頭の先から尻尾の先まで、全身黄金に変わったメラニゲルが吠える。そしてこの場の誰よりも素早く動き、誰よりも強い力で暴れ回るのだ。
リオナさんとシエロはその尾によって地面に叩き付けられ、アインとオクタミルは右手の一振りで、マイヤーとサファイアは左手の一振りで、墜落させられてしまった。残る俺とアルジェントに、その凶悪な牙が迫る。
が、ここまで時間を掛け過ぎたようだなメラニゲル。もう、日が沈んでいるぜ。
「アルジェント!」
俺の掛け声に呼応するように、アルジェントは俺たちに迫るメラニゲルに向かって、その口を広げる。背中越しでも分かる程、アルジェントの口中は煌々と月色に輝いていた。
「アルジェント! ルナ・バースト!」
月色の光が、眼前まで迫っていたメラニゲルに向かって放出される。メラニゲルは最初ルナ・バーストに耐えたものの、その威力に耐えきる事が出来ず、その巨体を後方へと吹き飛ばされたのだ。
「……やった!」
ドシン! と仰向けになって地面に叩き付けられるメラニゲルに、俺は勝利を確信した。しかし、それは直ぐに覆された。
辺りが爆煙に包まれる中、メラニゲルがむくりと起き上がる。その黄金の鱗には、傷一つ付いてはいなかった。ルナ・バーストの威力に、吹き飛ばされはしたものの、アルジェントのルナ・バーストは、メラニゲルにかすり傷さえ負わせられなかったのだ。
絶望が俺の頭を過る。俺はどこかでアルジェントのルナ・バーストならメラニゲルに勝てると思っていた。だがそれは間違いだったのだ。そして、俺が呆けている間隙を突いて、俺とアルジェントはメラニゲルの接近を許してしまった。
時の流れがゆっくりと流れるような感覚だった。メラニゲルの右手が大きく振り上げられ、こちらへとゆっくり振り下ろされようとしていた。
逃げようにもスピードはメラニゲルの方が上だ。逃げられない。俺はせめてアルジェントだけでも助けようと、黄金の武器でアルジェントをぐるぐる巻きにしていた。竜と騎手は運命共同体だと言うのに。
最後に馬鹿な事をしたな。と自重した次の瞬間、俺は戦場の遥か上空にいた。見下ろせばメラニゲルが小さく見える程の上空だ。何が起こったんだ!?




