対メラニゲルその1
「散れ!!!!」
背筋をゾワリと特大の悪寒が走り、俺は声を上げていた。まだメラニゲルとはそれなりの距離がある。ブレスを放出してくるのも、もう少し後だろうと予想していた。が、それは簡単に覆された。
ズピイイッ!! メラニゲルの潰れたはずの左目が光ったかと思ったら、そこから光線が迸り、俺たちが散り散りになって逃げ出した場所を、超高温の光で爆発四散させる。後に残ったのは、グツグツと地面が熱を上げる、降り立てば確実に燃えて失くなるような死の大地だ。
その光景を竜に跨がりながら眺める俺たち三騎は、まだメラニゲルと一戦交える前だと言うのに、誰も彼も恐怖で顔が引き攣っていた。
「来ます!」
死の大地と化した地上に見惚れている所に、リオナさんの声が響く。慌ててメラニゲルの方を見れば、黄金に輝く六枚の翼と、後ろ足の巨大な四つの火袋で、巨体とは思えない高速度でこちらに接近してきていた。
メラニゲルと俺たちとの距離が、最初の半分くらいになった所で、メラニゲルの口が開く。ブレスだ。俺たちはメラニゲルに的を絞らせないように、空中を縦横無尽に飛び回るが、メラニゲルに取ってそれは些細な事だった。
頭全部が口なんじゃないか? と言う程の大口を開いたメラニゲルは、広角に熱射のブレスを吐き出した。俺たちは何か危険を察知して、寸前で上空高くに逃げたが、俺たちのいた場所は、扇状に広範囲が焼け野原となっていた。
左目からの光線が、遠距離狭範囲の死の魔眼なら、ブレスは中距離広範囲を焼き尽くす、焦熱のブレスだ。
その魔眼とブレスの脅威の威力に、呆気に取られているうちに、俺たち三騎はメラニゲルの接近を許していた。
「グワアアアアッッ!!」
咆哮するメラニゲルの声にハッとして、声の方を見上げると、メラニゲルが俺のすぐ近くまで来て、右手を振り上げていた。
「くっ! アルジェント!」
振り下ろされるメラニゲルの右手を、間一髪で躱す俺とアルジェント。躱し際に黄金の槍で一撃与えてその場から飛び退く。ありがたい事にメラニゲルの右手に、傷を負わす事には成功した。が、しかしその傷は、直ぐ様メラニゲルの巨体を覆う黄金によって塞がれてしまった。これは、倒せるのか?
「グワアアアアッッ!!」
更にメラニゲルは俺だけを狙って攻撃を繰り返してくる。右手を振るい、左手を振るい、牙で噛み砕こうと大口を開け、尾を振り回し、それらを繰り返して攻撃してくる。そのどれもが一撃必殺の威力で、躱すだけで神経が擦り減らされる。
「ブレイド殿!」
「ブレイド!」
見兼ねたリオナさんとアインが助けに入ってくれた。リオナさんが不可視の剣でメラニゲルを切りまくる。アインが五又の槍でメラニゲルを突きまくる。
俺の攻撃より威力の高いリオナさんとアインの攻撃は、流石に良く効くようで、二人を無視出来なくなるメラニゲルだったが、
「グワアアアアッッ!!」
メラニゲルが一声吠えると、背中から黄金の触手が無数に出てきて、二騎が絡め取られてしまった。
「リオナさん! アイン!」
二騎を絡め取るうちに、身体を覆う黄金で傷を治癒するメラニゲル。その度にメラニゲルの黒鱗がどんどん黄金に差し替えられていく。
「グワアアアアッッ!!」
絡め取った二騎の締め付けを強めていくメラニゲル。俺は二騎を助け出そうと黄金の槍を枝分かれさせて、メラニゲルの触手を断ち切りに向かわせるが、切っても切っても背中からどんどん触手が伸びてきて、全てを切り落とす事が出来ない。更には俺自身メラニゲルから攻撃を受け続けていて、二騎救出にのみ集中していられなかった。
どうする!? このままではメラニゲルの触手に、二騎が握り潰されてしまう。メラニゲルの攻撃を避けながら、一度に触手を切り落とす方法を考え続けるが、まるで思い付かない。そのうちにメラニゲルは俺を攻撃するスピードをどんどん上げていき、避けるのに精一杯になって、二騎に助力する隙もなくなってしまった。
と、その時だった。黄金の何かがこちらに飛んできたのは。思わず避けたそれを見遣ると、それは竜程もあろうとても巨大な黄金の斧であった。
黄金の大斧は回転しながらメラニゲルの背部へと飛んでいくと、メラニゲルの触手をたった一撃でバッサリと刈り取ってみせたのだ。そしてそのまま黄金の大斧は、回転しながら持ち主の元へと戻っていった。
「なに手こずってるのよ!」
その黄金の大斧の持ち主とは、先程まで気絶していたマイヤーだった。




