身代わり
「本当に大丈夫なの!?」
「くどい!」
俺たちは次の流星墜落現場に向かっていた。その道中、軽く吐血した俺を皆気遣ってくれるが、今はそれどころじゃない事ぐらい、分かっているはずだが。
「見えてきたぞ!」
マイヤーやリオナさん、ショーンと、竜に跨がりながら話をしている所に、アインが次の流星墜落現場に着いた事を知らせてくれた。
そこにいたのは、黄金の葉を備える巨大な樹人、トレントだった。トレントは普通は樹の形をした魔物で、他の木々に紛れて、こちらに攻撃してくるのが常になのだが、こいつは普通のトレントの二倍は大きく、しかも夏だと言うのに葉が黄金色の為に、周りから浮いていた。まあ、見付けやすかったから良いけど。
黄金のトレントは、俺たちが近付くと、枝腕を触手のように伸ばして攻撃してきた。その枝腕の先に黄金の葉がぶら下がり、黄金の葉は鋭い刃物のように辺りの木々を切断しながら、こちらに向かってくる。
皆が散開してそれを避けるのを尻目に、俺は黄金の葉の付いた枝腕を真っ向から受け止める。
と言っても、俺も生身で受け止める程馬鹿じゃない。襲い来る枝腕に対して、俺は黄金の剣を網状に展開して、枝腕を絡め取る。
この作戦は上手くいって、枝腕を見事に絡め取ったのだが、トレントはそこから更に黄金の葉を投げナイフのように飛ばしてきたのだ。
「くっ!」
俺はそれを多少傷を負いながら躱すと、トレントの枝腕を絡め取っていた黄金の網を、そのまま刃物に変えて切り落とした。
痛がりもしないトレントは、更に別の枝腕をこちらに伸ばしてくるが、もう攻撃パターンは読めている。
「アルジェント!」
俺はアルジェントにお願いして、トレントの枝腕の攻撃や、黄金の葉の攻撃を躱しながら、それらを黄金の剣でどんどんと切り裂いていった。結果、トレントを枝葉のまるでない禿げ頭にしてみせた。
が、トレントもそこまでされて怒らないはずがない。いや、実力差に逃げ出すかと思ったが、そんな事はなかった。
トレントが癇癪を起こしたようにその場で暴れ回ると、切り取られた枝の切り口から黄金枝腕がニョキニョキと生えてくる。そしてトレントの姿は、全身黄金色に変わってしまった。
そして投げナイフのように、全身の葉をこちらに飛ばしてくるトレント。近場からこれを全て避けるのは叶わないと、俺とアルジェントは、その場から離脱して、トレントと距離を置いた。すると、
「馬鹿か!?」
いきなりアインに怒鳴られた。
「作戦もなしに、あの黄金のトレントとやり合う馬鹿がいるか!」
「強くなってるし、いけると思ったんだよ」
「ブレイドのその黄金の剣は、身を削るものなんだぞ!」
「大仰だな。大丈夫だよ!」
と口にするのだが、誰も信じてくれていない様子だ。
「だからって、現状、あの黄金のトレントに通用する攻撃は、俺の持つ黄金の剣ぐらいなものだと思うが?」
それに対しては四人も認めざるを得ないようで、黙り込んでしまった。
「とにかく、攻撃は最小限で、我々があの黄金のトレントの注意を引き付けますから、ブレイド殿はその黄金の剣でトドメを刺して下さい!」
「……はい」
リオナさんにそう頼まれては、こちらとしても従うしかない。
俺の返事を聞いた四人は、竜に乗ってぐるぐるとトレントの周りを回り始めた。対してトレントも、枝腕を伸ばしたり、黄金の葉を飛ばしてきたりと攻撃してくるが、四人はそれを間一髪で躱していく。見事なものである。確かに、これを見せられては、俺は自分が先走っていた、と反省するしかない。
そしてぐるぐる回る四人の速度はどんどん上がっていき、それにトレントが追い付けなくなった所で、
「ブレイド殿!」
リオナさんの声を合図に、俺は長大に伸ばしたり剣を上段に振り上げると、一気にそれをトレント目掛けて振り下ろした。
黄金のトレントはこれによって一刀両断され、見事にパカリと左右に割れて息絶えた。そしてトレントを覆っていた黄金の物体が、トレントの死体から乖離し、宙空に直方体として浮かび上がる。
なんなんだろうなあ。と俺がこの不思議物体に触れようとした所で、後ろからマイヤーとリオナさんに押さえつけられてしまった。
「な!? 何するんだよ!?」
「一つでもヤバそうなアレを、まだ取り込む気!?」
とマイヤー。リオナさんの方を見遣ると、リオナさんも首を左右に振っている。
「だからってコイツを野放しにしてはおけないだろ!?」
俺の言い分は筋が通っていると思うんだが、二人は一向に俺を捕まえた手を離してくれない。
「だからって、何も一人で全部を背負い込む必要はない」
それはアインの声だった。見ればアインが黄金の直方体に触ろうとしている。
「アイン、本気か!? 激痛で死ぬかも知れないぞ!」
「やっぱりヤバいやつなんじゃないか」
そう言いながらアインは躊躇なく黄金の直方体に触った。




