北の山へ
翌日、ウーヌム村の竜狩り組合所に、昨夜の流星墜落に関する情報が入っていないか、と顔を出すと、組合所は凄い人で溢れ返っていた。竜狩りではなく、村人たちだ。
「ブレイドくん!」
組合所に詰め寄せていた人々の対応に、てんやわんやしていたしていた所にやって来た俺たちは、お姉さんからしたら、救いの手に見えたのかも知れない。人々を掻き分けてこっちにやって来る。
「ブレイドくん、昨夜北の山に流星が落ちたのを知っていますか?」
「ええ。その情報がないかと組合所に来たんですけど」
「なら今すぐ北の山に向かって下さい。他の竜狩りにも、朝早くから調査に向かって貰っているのですが、誰一人返って来ず、何の情報もないのです」
俺たち六人は顔を見合わせた。やはりあの流星墜落は、凶兆だったのだろうか? 俺たちは直ぐ様竜に跨がると、北の山に向かって飛び立った。
北の山の山頂の更に上空を、二頭の人竜が何かから逃げように飛び回っていた。何をしているのか? と身体強化の魔法で視力を強化すると、黄金色の触手が、山頂から二頭の人竜に向かって何本も伸びてきて、人竜を絡め取ろうとしていた。
「た、助けてくれ!!」
人竜の一頭から助けを求める声が上がっているが、それは俺たちの姿に気付いたからではなく、心からの叫びであった。
助けを求める声を上げた人竜は、触手から逃げようと上へ上へと飛んでいく。が、黄金の触手に追い縋られ、絡め取られ、引き摺り込まれて山頂の向こうに消えていった。
一頭の人竜を犠牲にして、助かったもう一頭の人竜がこちらにやって来る。
「何が起こっているんですか!?」
俺たちの問いに、俺たちを無視して逃げ出そうとする人竜に対して、アインとその相棒のオクタミルが立ちはだかる。俺たちもその人竜を取り囲む。
周りを俺たちに取り囲まれた人竜は、観念したように口から声を絞り出した。
「メラニゲルだよ」
メラニゲルだって!? 馬鹿な!? メラニゲルは真っ黒な巨竜で、あんな黄金の触手なんて持ち合わせていない。
「もういいだろ!? お前たちも早くこの場から逃げないと、あいつに殺されるぞ!」
そう言ってその場から逃げ出す人竜を放っておいて、俺たちは北の山の山頂に目を向けた。
と、目が合ってしまった。黒い鱗に覆われた巨竜と。
「避けろ!!」
俺の叫びに、六頭の人竜は散り散りになって今いた場所から飛び退く。と、ゴオオオオオ!! 俺たちのいた場所を熱射のブレスが通り過ぎる。そして、その場から逃げ出していた先程の人竜を、燃やし尽くし、それだけでは飽き足らず、地上までも燃やしていた。
「グオオオオオッ!!」
咆哮する黒竜。その姿には見覚えがあった。巨体を覆う漆黒の鱗に、そしてアルジェントが傷付けた左目。あれは確かにメラニゲルだ。だが、俺の知っているメラニゲルと少し形が違う。
四つあった翼が更に二つ増えている。しかも増えた二つは黄金色だ。それに体中を巡るように、黄金のラインが幾筋もあの漆黒の身体を這っていた。
「グオオオオオッ!!」
もう一度咆哮したメラニゲルは、明らかに俺とアルジェントを見据えると、ニヤリと笑ってみせた。
来る! 本能がそう警鐘を鳴らすが、メラニゲルはクルッと後ろを振り返ると、ゆっくりと飛翔を開始したのだった。
「た、助かったの?」
とマイヤーが恐怖から自分の身体を抱えている。
「どうかな? あいつは俺たちを視認したから、今は見逃しても、絶対後で襲い掛かってくるはずだ」
俺の言葉に皆顔を曇らせる。一瞬見ただけだが、覆しようのない実力差を感じ取ったのだろう。
「カルロス! サンダーラッシュとウーヌム村の竜狩り組合所に、この事を報告しに行って,村人たちに避難を促してくれ! それが終わったら、直ぐに王都に向かって、竜騎士団を呼んできてくれ!」
カルロスは頷くと、直ぐにサンダーラッシュと共に、ウーヌム村の竜狩り組合所に飛んでいってくれた。
「私たちはどうするの!? あんな化け物勝てないわよ!?」
とマイヤーが不安そうに尋ねてくる。そうは言っても、あいつの位置は把握していないといけないだろう。しかしメラニゲルは何故俺たちを直ぐに始末せず、どこかに飛んでいったのか?
俺は更に考え巡らせる。今までなかった二枚の黄金の翼。あれはもしかして昨夜の流星墜落が原因なのでは? だとすると。
「アルジェント!」
俺はアルジェントにしっかり掴まると、更に上へ上へと上昇していく。移動するメラニゲルさえ小さく見える程に上昇すると、他のものが見えてくる。
北の山の山頂が陥没している。これは昨夜の流星墜落の影響だろう。そして、それ程大きくないが、陥没している場所が、他にも何ヶ所かある。
昨夜の流星は、地上に落ちる前にいつくかに崩壊していた。その崩壊した欠片の墜落場所だろう。そしてメラニゲルは、その墜落場所の一つに向かって移動していた。墜落場所に何かありそうだ。




