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Blade & Dragon Dance 〜月天を焦がす銀剣竜舞〜  作者: 西順


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青息吐息

「はあ~」


 クリフさんが学生会役員室で嘆息している。それも仕方ない事だろう。戦争があった事で、後期のネビュラ学院のスケジュールは、かなり緊縮となり、中でも決闘祭が開催中止となったのには、多くの学生たちが涙を飲んだ。


 来賓を呼んで盛大に行われるはずの卒業式も、緊縮で学生たちだけの出席となり、寂しいものだった。


「だけど、戦争も勝利で終わったし、来期からはまたいつもの学生生活に戻りますって」


「よし、ブレイド! 決闘だ!」


「やりませんよ!」


「ええ~」


 駄々を捏ねられても困る。俺はクリフさんを無視して、後期最後の学生会の仕事をこなしていった。



 夏休みだ。山の森にはそこら中に薬草が生えて、薬草採りとして繁忙期になる。しかし、今年はかなり楽が出来ている。庶務の四人が、合宿と称して俺の家に泊まり込んでいるからだ。


「うお、地味に腰にくる」


「きつい」


 四人は噴き出す汗を拭きながら、一所懸命薬草採りを手伝ってくれているが、


「それはただの雑草だよ」


 とノエルに指摘されている。


「え? 何が違うんだ?」


「ほら、こっちの葉っぱは丸いけど、こっちは先が尖ってるでしょ?」


「んん??」


 良く分かっていないようだ。結局四人が採ってきた薬草の半分が、薬草に良く似た雑草だった。



「はあ~、もう疲れた」


 慣れない薬草採りなんてしたからだろう、昼前に家に帰ってきたと言うのに、四人は既にぐったりしていた。


 まあ、それも仕方ないだろう。四人が来る事になって、我が家はさらなる増築が求められ、どうせならば、とやって来た四人をこき使って家の拡張をしたからだ。薬草採りはその翌日の事である。


「さあ、お昼ご飯よ」


 母がナオミさんやゼラさん、ミリアムと一緒に台所から持って来たのは、芋である。


「また芋か。はあ~」


 嘆息するショーン。家に来てからほぼ芋食だからな。お貴族様には辛いらしい。マイヤーやアインも辟易した顔をしている。カルロスは平民だからだろうか、食事に文句を述べる事はなかった。


「嫌だったら食べなくても良いぞ」


 との父の発言に、


「いえ、そんな、頂きます」


 と手を伸ばすが、あまり食が進んでいないのは一目瞭然だ。


「そんなに肉を食べたいなら、森で捕まえてきたらどうだ?」


 との俺の提案に、「それだ!」と目を丸くしていた。午後は狩りになりそうだ。



 俺、リオナさん、カルロス、マイヤー、アインの五人は、山森の奥に狩りに出掛けた。今日狙うのはアルミラージで良いだろう。ちなみにショーンは母の手伝いである。


「ショーンも来れば良かったのに」


「ショーンの目的は魔法の実力アップだからな」


 と俺はマイヤーに答える。


「まあまあ、ショーンの分も狩れば良いだろう?」


「大きいのを狩ろう」


「いや、大きいのだと冷やすのに時間が掛かって、今日中に食べれないぞ」


 カルロスやアインは大物狙いのようだが、大物は血抜きをして内蔵を取って、更に獣自体の体温で肉が傷まないように、冷水に晒しておかなければならないのだ。ネビュラ学院南の森の交換所では、こう言った雑事を交換所の所員がやってくれていたが、ここでは俺たちが自らやらなければならない。


「結構大変なんだな」


 俺の話を聞いて愚痴るカルロス。


「鳥や兎程度なら、血抜きと内蔵処理だけで、その日の内に食べれるから、狙いはそっちだな」


「分かった」


 と狙いを定めた矢先だった。


「そうも言っていられなくなりましたよ」


 そう口を開いたリオナさんが見詰める先には、体高が俺たちの身長の二倍はあろうかと言う、巨大な体躯の猪がいた。魔猪(まちょ)グレートボアだ。


 グレートボアは既にこちらを視界に捉えていて、足で地面を掻いている。


「来るぞ!」


 俺が言葉を発したのと同時に、こちらへ突進してくるグレートボア。木を薙ぎ倒し、直進してくるグレートボアの突進を、俺たちは横に飛んで回避する。


 猪は走り出すと急には止まらない、と思っている人もいるかも知れないが、そんな事はない。グレートボアは急停止するとこちらに向き直り、また走り出してきた。


「ブレイド殿!」


「はい!」


 俺は木網を広げてグレートボアを絡め取るが、それでもグレートボアの突進は止まらない。俺に急接近するするグレートボアだったが、スボッ! と俺が木網と同時に魔法で用意しておいた落とし穴にハマってくれた。


「リオナさん!」


 リオナさんは落とし穴の中で暴れるグレートボアの首目掛けて、木剣から変化させた木槍を深く突き刺した。しばらく落とし穴の中で暴れ回ったグレートボアだったが、ついに息絶えた。


「おお!」


 拍手するカルロス、マイヤー、アイン。


「喜んでないでこっちを手伝ってくれ」


 俺とリオナさんがグレートボアから魔核を取り出すと、後ろ足を縛って、血抜きの為に木の上に持ち上げるのを三人に手伝わせる。


「これ一頭いれば肉は十分だな」


 ギシギシ言いながら、なんとか木の枝に五人掛かりで括り付けた、グレートボアの血が抜けていくのを待っていると、何やら獣の臭いが漂う。


「ブルああああ!!」


 グレートボア三頭に囲まれていた。


「しばらく肉祭りだな」


「まずはここを切り抜けるのが先でしょ!?」


 とマイヤーに窘められてしまった。



「お兄ちゃんたち凄〜い!」


「凄いです」


「まあな」


 家の前で小山のようになっている何頭ものグレートボアを見て、ノエルやミリアムが歓喜の声を上げている。


 三頭のグレートボアは何とか仕留められたのだが、俺のマジックバッグに二頭しか入らず、家とこの場を何往復もしなければならなかった。


 何往復もしなければならなかったのは、この場に戻ってくる度に、仕留められたグレートボアやら他の魔物が増えていたからだ。どうやら血の臭いに誘われて、グレートボアやら他の魔物が集まってきたようだ。


 俺ん家に帰ってきた頃には、四人はヘロヘロになっていた。陽も暮れそうになっていたので、いくらかの魔物はあの場に放棄してきた。それでも冬が越せそうな量の肉が手に入ったが。


「はあ~」


 疲れ果てて全員嘆息するしかなかった。


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