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Blade & Dragon Dance 〜月天を焦がす銀剣竜舞〜  作者: 西順


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謁見

「ふむ、拝領する気はないのだな?」


 俺の目の前にはボロスの王様がいる。一国の王様をこんな至近距離で見たのは初めてだ。と言うのも、原因はミリアムを捕らえた事に端を発する。



「ミリアム様!?」


 俺がデウニス司教やゲラルドゥを拘束した控え室に、クララさん率いる教会軍が突入してきて、一番驚いていたのがミリアムの存在だった。


「これは、困った事になりました」


 俺の木網に拘束されているミリアムを見ながら、クララさんは頭を抱えていた。


 その日は「協力ご苦労様です」とガンド魔剣学園に帰された俺だったが、翌朝、なんと王城に呼び出された。


 謁見の間には先に呼び出されていたのか、手を拘束具で拘束されたミリアムがいた。その両脇に親であろう男女もいる。両親は貴族らしい服装をしていたが、顔は相当やつれていた。


 そして俺も玉座の前に膝をついて王の入室を待つ事に。王は直ぐにやって来て、跪礼(きれい)をする俺やミリアム親子に、(おもて)を上げるように促した。


 王様にそう言われて顔を上げて、俺は面倒な事になったのだとようやく理解した。王様の髪と瞳の色が、ミリアム母娘と同じ青紫だったからだ。


 王の横に立つ、恐らくは偉い人の言う話では、ミリアムは王妹の娘であるらしい。王妹は結婚を機に公爵となり、旧パーシヴァル領の領主となったそうだ。そんな王妹の元に生まれたのが奇跡の子、聖女ミリアムである。


 聖域のあるパーシヴァル領で、王家の傍系から聖女が生まれた事を、ボロス王国もウロ教も吉事として慶んだ。


 それが蓋を開けてみれば奇跡は魔導器によるインチキで、更には禁制品の魔剤に関わっていたとなると、ボロス王国としては大スキャンダルだろう。幸いミリアムは侍女に止められて、魔剤を口にしていなかったようだが、王としては見逃す事は出来ない。


「もう一度聞くが、かの地を拝領する気はないのだな?」


 王自らがそう尋ねてくる。


「申し訳ありませんが、辞退させて頂きます。俺はたまたまここにやって来ただけですから」


 平民からいきなり貴族に、しかもいわくありげの土地を治めよ、と言われても荷が重過ぎる。


「……分かった。では沙汰を申し渡す」


 ミリアムの両親はお家取り潰しの上、王城に軟禁。旧パーシヴァル領は相応しい者が現れるまで王家直轄領となった。気になるミリアムは、


「その罪、例え子供であっても見逃せるものではない。よってミリアムは国外追放とする」


 厳しい判決である。ノエルと同い年くらいの少女に、親元を離れて暮らせと言うのは、あまりに酷だが、それだけの事をしでかしたと言う事なのだろう。


 それにしても国外追放か。ミリアムは一体どの国に行かされるのだろう。…………? あれえ? 何で謁見の間にいる全員が俺の方を見ているのかな? え? 国外追放って俺の所に行くって事なの? ウチ平民ですが? 住んでるの山奥ですが?



「それで断り切れずに彼女(ミリアム)を連れてきた、と?」


「……はい」


 帰国途中に立ち寄ったアイボリー領の領主館。クラーク伯爵は俺を見て呆れている。そしてその目が、長テーブルのある食堂で夕食を食べているミリアムに向けられる。給仕をしているのは、大教会でもミリアムの脇に控えていた、ゼラさんと言う侍女だ。流石にボロス王も子供を一人で国外追放にはしなかった。


「しかしボロス王も大胆な事をするな。ほんの二十年前まで戦争をしていた国に、国外追放で姪を送り出すとは」


 とクラーク伯爵。本当に、何を考えているのやら。王侯貴族の考える事は俺には良く分からん。


「しかしこれは、国王様にきちんと説明しないといけないな」


 ですよねえ。はあ、また王様と謁見するのか。胃が痛い。



 そして王都ガラクシアにある王城の謁見の間。ボロス王からの書状に目を通したガラク王は凄く嫌そうな顔を隠そうともしない。


「はあ。事情は理解した。此度の事、ご苦労であった。その子に関しては、ボロス王の言う通り、ランデルの元で生活させるのが良かろう」


 マジでか!? てっきり王家が「こちらで引き取ろう」とでも言ってくるものだと思っていた。ウチ平民だよ? 山の奥だよ? 必死に目で訴えたが、聞き入れてくれる事はなかった。



「で、子供と侍女を連れて帰ってきた、と?」


「……はい」


 めっちゃ目が怒っている。


「馬鹿なのかお前は! 何故自分から面倒事に首を突っ込むんだ!」


「自分からは突っ込んでないよ! 向こうからやってくるんだよ!」


「……はあ」


 嘆息する父を母が慰めている。


「仕方ないわよ。貴方の息子ですもの」


 どうやら父も巻き込まれ体質だったようだ。


「ミリアム、だったか?」


「は、はい」


 緊張してか声が上擦るミリアム。


「この家で暮らすからには、特別扱いはしないからな」


「は、はい! よろしくお願いします!」


 平民の父に頭を下げているのは、父がパーシヴァルの血を引いているからだろうか。そんなド緊張しているミリアムの元に、ノエルがやって来て手を差し出す。


「私ノエル! よろしくねミリアム!」


 満面の笑みのノエルに、ミリアムは少し気後れしながらも、差し出された手を握り返すのだった。握手をして更に笑みを深めるノエル。ノエルからしたら、初めての同年代の友達かも知れないな。ウーヌム村には同年代はいるが、やはりここは村から離れているからな。


「ミリアム、こっちよ!」


 そう言ってノエルはミリアムの手を離さず、強引に自室に引き連れていくのだった。慌ててゼラさんがその後を追う。


「はあ、また家を増築しないとな」


 ノエルとミリアムを見送りながら、父はそう愚痴っていた。


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